アルベール・カミュ ― 生きることへの愛
アルベール・カミュ ― 生きることへの愛/三野 博司
2024年9月20日/240ページ
目次:アルジェリアの青春―「節度なく愛する権利」 不条理の時代―「世界の優しい無関心」 反抗の時代―「われ反抗す、ゆえにわれらあり」 再生へ向けて―「孤独と読むか、連帯と読むか」 愛の時代―「私の夢見る作品」
宗教やイデオロギーなど人間にとっての超越的価値に依存することなく、生の意味を探し求めたとされる作家、アルベール・カミュの生涯について、彼のエッセイや小説を詳細に紹介することにより描き出します。
(略)二つの主題、「死を宣告された男」と「不条理」が、17歳のときの 結核体験 から生まれたことが明らかである。(16ページ)
たしかに、彼の著作『シーシュポスの神話』においても、我々は死に向かって走らされている、と表現しています。
結核という、当時としては「死」から逃れられない重荷を背負った彼にとっては、いやでも人生の主題として考えずにはいられなかったのでしょう。
有名なジャン・ポール・サルトルとの論争については。
「私の本は歴史を否定しているのではなく、歴史を絶対とみなす態度 を批判しているのだ」(137ページ)
歴史が語られることの正しさや不正確さはさておき、人間性の追求が「歴史を拒絶」することになったのでしょうか。
また『シーシュポスの神話』においても、世界の表面をすべて指でなぞっても、この世界を知ったことにはならない、と表現しています。
カミュは時代の趨勢に流されない 明晰な目 をもっていた。(216ページ)
同じく『シーシュポスの神話』からですが、友人がこの世界について原子や電子まで細かく説明することに対し、それは詩に至りついてしまっている、と表現しています。
筆者のいう「人間の次元」に立つとはこういうことではないでしょうか。