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【社労士監修】有給休暇が残ってるけど退職したい!もめずに消化してやめる方法

最終更新日:2021年11月04日

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辞める前にきちんと有給休暇(有休)を消化したい! と考えている人は多いでしょう。しかし、言い出しにくい雰囲気だったり、辞める前にたくさん有休を使ってしまってもいいのか? と疑問を感じている人も多いはずです。

この記事では、有休はきちんと消化していいのか? どうやったら揉めずに有休を消化できるのか? といった疑問にお答えしていきます!

退職時に有休消化は可能!

有休休暇は、退職時に残っているなら消化していく権利があります。しかし、会社の雰囲気などを理由に半数以上の人が有給休暇を消化しきれずに辞めている状況にあるのです。

しかし、有給休暇は労働者の権利です! 会社側は有休を消化させる義務があるのです。

残っている有休があるならばしっかりと消化していくようにしましょう。ただし、業務内容の引継ぎなどがある場合は、業務がすべて完了した最終出勤のあとにまとめて取るようにするといった配慮が必要になってきます。

また、会社には、時季変更権という権利があります。時季変更権とは、事業の正常な運営が妨げられる場合は、会社が有給休暇の取得日を変更することができる権利のことです。

この権利を盾にして、「有休を取得させない」と会社が言ってくることもあるでしょう。実は、退職目前の労働者が退職日までの有休を使い残している場合には、会社は時季変更権を行使できないのです。

例えば、7月31日で退職する社員が、有休の使い残しが7月末分まで残っているので7月いっぱいは有休を取得すると主張したとしましょう。この時に、会社が時季変更権を使い、7月の有休をそれ以降にずらさせようとしたとします。しかし7月31日に退職することが決まっている以上、8月以降には会社に籍がなく有休取得ができないので、ずらす余地が存在しない、とされます。

退職近くに有休の申請があった場合、会社が時季変更権を行使して、「その先」に変更することは不可能。有休をずらすと、社員の有休の権利を奪うことになるので、会社側は時季変更権を行使することはできません。

なお、そもそも会社の時季変更権の要件「事業の正常な運営を妨げる」というのは、単に「今忙しいから」といった程度では認められません。
会社側として適切な人員配置や代替要員の確保の努力といった配慮を尽くしていることが必要です。そうでないと、会社がぎりぎりの人数で勤務体制を組んでいたら、実際に有休が取得できなくなってしまうからです。

このような点も、会社に有休消化を申し入れるさいには、頭に入れておいた方が良いでしょう。

有休消化したい…って言いにくい。揉めない伝え方はある?

上司と話をする女性

有休消化は、労働者の権利です。しかし、上司や職場に問題がある場合や業務が忙しい場合は、言い出しにくいこともあるでしょう。揉めない伝え方としては以下のようなものがあります。

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退職交渉の際に有休を消化することを伝えておく

退職するときは、直属の上司に退職をする旨を伝えて、退職日などを決定していきます。このときに「有休があと〇日残っています。消化したいのでこの日数も考慮していただけますか?」と伝えておいてください。

そうすれば、有休分も含めて、余裕を持ったスケジュールで退職日を決めてもらえます。また、最初に有休のことを言っておくことで、有休申請もやりやすくなります。

引継ぎなどの業務をきちんとしていることをアピールする

引継ぎが完了していない状況で休もうとすると、自分の都合ばかり考えている人という印象を会社側に与えてしまいます。また、右も左も分からない新人を残して休むのは、気が咎めてしまうはず。

ですから、引き継ぎやマニュアル作成といった必要な業務を終わらせてしまうことが大切です。その上で、「引き継ぎが一段落ついたので有休を取らせてください」と伝えるようにしましょう。

あるいは「引き継ぎやマニュアル作成を○日までに終わらせますので、それから、退職日まで有休消化させてください。」といった業務の計画を上司に話して了解を得ておくことです。

どうしても引き継ぎしたくない、引き継ぎができない、といったときはどうしたらいいのかなどは、こちらの記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

会社に遠慮はいらない。もらえるものはもらって辞めよう!

退職の時に有休をすべて消化しきることに遠慮を感じてしまう人もいるでしょう。退職によって、少なからず仲間に迷惑をかけるのに、さらに、有給休暇を取得してもいいのかと罪悪感を持つこともあるはず。

しかし、有休は労働者の当然の権利です。有休期間中は休んでいても給与が発生するので、有休消化をせずに辞めるのは、もらうべき給与を辞退するようなものなのです。

有休を取得することは決して悪いことではありませんし、転職活動やステップアップのために勉強をしたいと考えている人も多いはず。罪悪感を持たずにきちんと有休取得しましょう。

ただ、どうしても有休をとってから退職することに罪悪感を感じてしまう方も少なくないのが現実です。こちらの記事で罪悪感について詳しく解説していますので、ぜひあわせて読んでみてください。

残りの有休が消化しきれない! どうすればいい?

退職交渉のときに伝えていても、計画通り引継ぎができず休みにくい雰囲気になることはあるでしょう。うまく有休が消化できないなら以下のような対策を取ってみてください。

退職日を先に伸ばす

退職日は決めてしまったら絶対に動かしてはならない! といった種類のものではありません。もしも、繁忙期や引継ぎの関係で有休が取得しにくいならば、「退職日を少し伸ばすので有休を消化させてください」とお願いしてみるようにしましょう。

有休を取るはずだった日に出勤しなくてはならないデメリットもありますが、有休をすべて消化できます。

有休の買い取りをお願いする

転職先の関係などで退職日を伸ばせないならば、有休の買い取り交渉をしてみましょう!

有休の買い取りは、原則として法律では禁止されていますが、退職時の有休買い取りだけは例外的に認められているのです。ただし、会社側が未消化の有休を絶対に買い取らなくてはならないという法律は存在しません

ですので、就業規則などを盾に、買い取り拒否される可能性もあります。

上司より上の立場の人や労働基準監督署に相談する

悪質な会社や問題のある上司等の場合、故意に有休の取得を拒むこともあります! 「普通は全部消化しようとはしないよ?」「あつかましい! 無責任だ!」などと言って、有休を残したままで退職させようとすることもあるのです。

このような場合は、上司よりも上の立場にある人に相談するようにしましょう。有休取得を拒まれたときに「上に直接相談してもよろしいでしょうか?」と伝えるだけで、上司が動いてくれるケースもあります。

もしも、上司よりも上の立場の人がいない場合や会社が一丸となって有休消化を拒む場合は「有休取得の妨害は法律違反です。労働基準監督署に相談してもよろしいですか?」と尋ねてみてください。あるいは、都道府県の総合労働相談コーナーに直接相談されても良いでしょう。

有休消化の注意点や勘違いしがちなポイント

有休消化にはいくつかの注意点も存在します。多くの人が誤解しがちなポイントを確認していきましょう!

有休消化中もボーナスは受け取れる!

有休消化中であってもボーナスはもらえます! 就業規則などに定められている支給条件を満たしていれば支給されるのです。

たとえば、退職予定日が7月21日で、ボーナスの支給日が7月10日だったとしましょう。この場合、7月9日から有休消化に入っていて、実質的な最終出勤日が7月8日だったとしてもボーナスが支給されることになります。

会社からの一方的な有休買い取りは認められない

会社から「残りの有休を買い取るので退職日当日まできちんと出勤しなさい!」と指示されることがあります。しかし、有休の買い取りは双方が合意していないと不可能です。

労働者には、有休を使って出勤しない権利があるのです。出勤しない権利を会社が一方的に奪うことはできません

ただし、「引継ぎ要員がなかなか見つからず助けてほしい」といったやむを得ない事情があるならば、自分が無理しないで済む範囲内で協力してあげることが円満退職につながることもあります。

有休消化中でも転職は可能

「有休消化中に、新しい会社で働いてはいけない」 と誤解されている人が多くいます。しかし、有休中に新しい職場で働くことは原則的に可能です。二重就労のことを心配される方も多いですが、二重就労の禁止規定は本来の業務に専念させるために存在しています。元の会社で業務を行うわけではないので、二重就労の禁止規定に抵触しません!

ただし、元の職場と新しい職場に了承を得ておくことは必須です。また、会社によっては有休消化中でも他の職場に籍があるのはNGとしている場合もあるので確認するようにしておきましょう。すなわち、就業規則で兼職や副業を禁止している会社も多いので、就業規則をよく読んで会社と話し合うのが無難です。

就業規則はしっかりと読んでおく

有休取得に関しては、会社ごとに独自のルールが決められていることもあります。たとえば、「有休取得は一か月前に申請すること」や「有休の買い取り金額は××円」といった細かい取り決めが就業規則に記載されていることもあるのです。

もめないためには、就業規則の有休の項目をきちんと読んでおくのも大切だといえるでしょう。
とはいえ、前述の通り有休取得は労働基準法で労働者に認められた権利です。有休買い取りも特別な場合以外は禁止されています。就業規則でこれを妨げるような定めはできません。

就業規則の定めに疑問があれば、会社に趣旨をよく聞いてみるとか、場合によっては都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談された方が良いでしょう。

おわりに:有休はきちんと消化して辞めよう!

「有休をすべて使い切って辞めるのは厚かましい?」「 職場に迷惑になる?」と悩んでいる人も多いでしょう。しかし、有休は労働者の権利ですし、有休をきちんと取得させることは会社側の義務でもあります。

退職交渉の段階で有休消化の意思を伝えて、きちんと使いきるようにしてください。また、有休中であってもボーナスがもらえることや転職ができることも覚えておきましょう。

ただし、遠慮は不要といっても、会社側の都合も意識してあげるのが円満退職のカギです。買い取りなどを打診されたら差し支えのない限り検討してあげても良いでしょう。

社労士からのアドバイス

そもそも年次有給休暇は、労働者の心身のリフレッシュを図り、自己啓発の機会を持つことを可能とする趣旨で定められたものです。

会社は労働者に法定の有休を付与し、労働者は有休について、取得時季を決める権利を持っています。

周囲への気兼ねなどで、有休を消化できないのでは、心身のリフレッシュも図れず、前向きの学びの機会も失われます。生産性の低下を招きかねません。我国の生産性が欧米先進諸国より低いのは、有休の有効活用がはかれていないのも一因でしょう。

会社の上司や同僚と話し合って、皆で計画的に有休を取得する風土を醸成すべきです。お互い様なのです。そうすれば、退職前になって、使い残しの有休をどうするかと悩むこともなくなるでしょう。

監修者プロフィール

社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー玉上 信明 (たまがみ のぶあき)

三井住友信託銀行にて年金信託・法務・コンプライアンスなどを担当。
2015年10月65歳定年退職後、社会保険労務士開業。執筆・セミナーを中心に活動。
人事労務問題を中心に、企業法務全般や時事問題にも取り組んでいます。

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