先日読んだ『ライティングの哲学』で大いに推奨されていた「アウトライナー」、さっそく使い始めました。
ただし、この本ではアウトライナーの詳しい使い方までは説明されていないので、実際に使い始めるにあたっては、こちらの記事がとても参考になりました。ご教示感謝申し上げます。
pouhon.net
使ってみてしみじみと思いましたが、どうしてこんなに便利なものを今まで使っていなかったのだろうと。あらためて己の不明を恥じています。先日もこのブログで書きましたが、なにか文章を書こうとする時には、真っ白な髪やディスプレイを前にしてあれこれ考えていても埒が明かないもので、とにかく頭に浮かんだことを書き出してみるのが大切です。書き出してみることができれば、その文に触発されるように次々と文が紡ぎ出されてくる……これは、形式や形態の違いはあれ、日頃から文章を書いている方にはなかば自明の「真理」ではないかと思われます。
考えてみれば、頭の中で「考え」を保持しておけるキャパシティって、そんなにないですよね。11桁の電話番号(独立した11個の情報)だって覚えられないくらいなのに。だったら、どんどん書き出して、目の前に一覧として並べるようにすればいいのだと上掲の本に教わりました。これまでも長い文章を書くときにはポストイットなどに項目を書き出すくらいのことはしていましたけど、それをもっと簡便に行えるツールが、もうずいぶん前から世の中に存在していたのです。なんてことだ。
ちょうど今日、通勤電車の中で読んだ記事でも、『独学大全』の読書猿氏がこう書かれています。「頭の中だけで考えずに、まず頭に浮かぶものを全部書き出すことに専念する。そうして一旦自分の外に出したものを読み返す」と。氏は書き言葉を人類が獲得した「外部足場」と形容されていますが、すばらしい比喩です。作ろうとしているもの(文章)の外部に足場を設けるからこそ、内部を作り込み、外装を施すこともできる。
アウトライナーはとりあえず、「WorkFlowy」を使ってみました。とりあえずメールアドレスだけ登録すれば、無料で使い始めることができます。表記はすべて英語ですが、これくらいなら「中学二年生レベル」の私でもだいじょうぶ。データはすべてリアルタイムでクラウドに保存されるので、複数のパソコンやスマホとも連携できます。私はスマートフォンにもアプリを入れたので、これからは通勤など移動中にもメモ的に使えるようになりました。
これまでもスマホのメモアプリは使っていましたが、これはひとつのアプリで閉じた世界なので、けっきょく使いこなせませんでした。このブログなど、なにかテーマを思いついたら「はてなブログ」の下書き画面に直接メモするような形で書いていたのです。でもこのアウトライナー「WorkFlowy」はそれらに比べて操作性が抜群です。文字や項目やアイテムの入れ替え・挿入・削除がとても感覚的にできるのです。
エクスポートも簡単です。ほとんど文章を仕上げてしまってから、Wordなどのワープロソフト、あるいはブログの編集画面に移して、体裁だけ整えればよいのです(改行や文字の装飾をするとか、リンクを張り込むとか、図を載せるとか)。実はこのエントリも、はじめてアウトライナーを使って書いてみたのですが、まだ慣れていないので、最終段階ではなく途中でエクスポートして、ブログの編集画面で加筆しています。でもゆくゆくはアウトライナー上でほぼ書き終えてしまえるようにしたいです。
文章を書き始める瞬間が白紙なのは、アウトライナーだろうがWordやブログの編集画面だろうが同じ(当たり前)です。でもアウトライナーでは、とにかくどんどんメモ感覚で書き出して行くことができ、後でいくらでも入れ替えや編集が可能というこの「前提」が、どれだけ書くことをラクにしてくれることか。これは使ってみてはじめて実感できました。もうWordなどの真っ白な新規作成画面には怖くて戻れません。
しかし……、こんな便利なツールがなかった時代の作家・文筆家・ライターさんたちは、すごかったのだなと改めて思います。執筆にあたって紙などのカードを使って情報を入れ替えたり、独自のノートを使って似たようなことをやっていた方はいると思います。また作家の大江健三郎氏が原稿用紙を何度も推敲し、切り貼りを重ねている映像を見た覚えもあります。それでも、アウトライナーのようにほとんどストレスなく文章を「揉む」ことは難しかったのではないかと。それを頭の中だけでやっていたのだとすれば、現代に生きる私たちはやや知的に脆弱になっているのかもしれませんけど。
ともあれ、しばらく使ってみようと思います。仕事の書類やブログの原稿だけでなく、日々の仕事のメモやToDoリストなどにも使えそうですね。