2024-01-01から1年間の記事一覧 - インタプリタかなくぎ流

インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

2024-01-01から1年間の記事一覧

サレ・エ・ペペ

外国人留学生が日本語で演劇を行うという授業を担当していて、文化祭で披露する講演のために『世界三大料理』という脚本を作ったことがあります。擬人化されたフランス料理、中華料理、トルコ料理という「旧来の」世界三大料理に対して、その一角を崩して「…

滷味包

台湾の留学生が物陰から手招きして「センセ、ええもんありまっせ」と“滷味包”をくれました。だしパックみたいな紙袋に甘草とか八角とか肉桂とか茴香なんかが入っている、“滷味”つまり台湾風のおでんの素みたいなものです。スーハーすると懐かしい台湾のかほ…

さみしいネコ

帯の惹句に「定年バイブル」とあるのを見て購入した、早川良一郎氏の『さみしいネコ』。これもまた、偶然立ち寄った書店で本のほうから「呼ばれた」一冊でした。60歳で定年退職したあとの暮らしを綴ったエッセイ集で、その肩肘張らないたたずまいがとても心…

うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真

書店で偶然見つけて、この本を買いました。幡野広志氏の『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』です。写真といえば、スマートフォン登場以前に小さなカメラを持っていたことはありますが、それが趣味といえるほど傾倒してはいませんでしたし、スマート…

肉食の哲学

「中国人は肉と魚を区別しないんだって?」と、職場の英語教師に聞かれました。なんでも中国人留学生との英語の授業で食生活や食習慣に関するフリーディスカッションをしていたときにそういう話になったのだそうです。一瞬、そんなことはないはずだけどな………

はじめての胃もたれ

ふらっと立ち寄った書店で偶然手にとり、ページをぱらぱらとめくっていたら、断続的に目に飛び込んでくる言葉や文章が次々と心に響きました。こういうのを「本に呼ばれる」というのでしょうか。手にとったのは白央篤司氏の『はじめての胃もたれ』でした。こ…

復活した一元屋さんに行ってきた

ちょうど一年前、東京は麹町にあった和菓子店「一元屋」さんが閉店してしまいました。私はこちらの甘さ控えめな「きんつば」が大好きで、お店近くの半蔵門で定期的に長く仕事をしてきたので、折に触れては購入していました。それが突然の閉店で、その喪失感…

おかあさんといっしょの魔法

不覚にもちょっと涙してしまいました。NHK+(プラス)の動画『放送65年 おかあさんといっしょの魔法』を見ていたときのことです。この動画は11月6日まで配信されているようですが、おすすめです。 https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024103018650?t=754NHK…

アテンション・エコノミー恐るべし

ChatGPTなど生成AIの登場で、それまでインターネット検索におけるほとんど唯一の巨人だったGoogleが大ショックを受けたと言われています。何かを調べようと思った際、生成AIに聞いてもネット検索と同じような結果が得られるようになったからです。それでここ…

「仲間の学生の教育に貢献できない生徒」について

今年も秋を迎えて、職場の学校ではこれから入学試験が断続的に行われていきます。私も入試業務を一部担当しているので、これからちょっと忙しくなります。ただこの入試というのが毎年本当に悩ましい。筆記試験や面接だけでその学生の資質を判断するのがとて…

文字を書く体力

今朝の新聞に載っていた、小学校の教員で育児雑誌の編集者をされている岡崎勝氏のコラムが興味深いものでした。子どもの「文字を書く力」が低下しているというお話です。パソコンやタブレットなどの普及に伴って、生活全体から文字を書くという習慣が失われ…

ポイント10倍デー

昨晩、退勤時にいつも立ち寄っているスーパーへ行ったら、異様な人混みでした。店内のいたるところに「10倍」の文字が貼られています。恒例のポイント10倍デーだったのです。このスーパーには会員カードがあって、レジでの精算時に提示すると購入額100円につ…

純文学を読む体力

先週末、今年のノーベル文学賞が韓国のハン・ガン氏におくられるというニュースに接したあと、同僚が職場の図書館からさっそく氏の代表作とされる『菜食主義者』の日本語版(きむ ふな氏翻訳)を借りてきました。この連休はちょっと忙しいから、よかったら先…

話しかけないヘアサロン

よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』の最新第23巻で、美容師をしているケンジの母上がこんなことを言っていました。「おしゃべりが好きで美容師の仕事をやってきたようなものですからね」。 ▲よしながふみ『きのう何食べた?』第23巻102ページ美容師…

クリスプスとチップス

オンライン英会話でイギリスのチューターさんが、パブに行くとビールを1パイント頼んだあと、いっしょに“a packet of crisps or peanuts”も買うと言っていました。この“crisps”が一瞬分からなかったのですが、そうか、ポテトチップスのことをイギリス英語で…

さよならサブスク

語学学習アプリのDuolingo、これまで私は有料版の「SUPER」に課金していましたが、先日期限が切れたところでサブスクから降りました。Duolingoはいろいろな工夫があってとても楽しいアプリです。私は8年以上通勤時のルーティンとして使ってきましたが、最近…

迷い猫の広告

街角で、迷い猫や迷い犬を探している旨の広告を見かけることがあります。私もかつて猫や犬を飼っていたことがあるので、いなくなってしまったときの気持ち、やむにやまれずこうした広告を張り出す気持ちなどは痛いほどよく分かります。……が、けさ自宅近くで…

きのう何食べた? 23

ほぼ半年から1年弱ほどの間隔で新刊が出る、よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』の最新第23巻を読みました。ネタバレは控えますが、この巻には主人公のシロさんとケンジのこれまでが集大成されたような展開があって、もしかしてこれで大団円なのか…

フジテックのCM

エレベーターやエスカレーターを作っているフジテックという会社があります。現在この会社の「365日を、点検日に。」というテレビCMが放映されていて、こんなナレーションが入っています。 どんな時も、どんな時も、どんな時も。ずっとずっと見守っていたい…

アップルストロープ

Airbnbで見つけたイングランド農村の民家に泊まったとき、朝食の食卓に “Appelstroop(アップルストロープ)” というリンゴのシロップが置いてありました。こちらの民泊はイングランド人とオランダ人のカップルが経営されていて、このリンゴのシロップはオラ…

Twitter(X)はその歴史的役割を終えました

雑誌『文學界』2024年10月号の特集「インターネットとアーカイブ」で、pha氏が「インターネットが現実になるまで」というエッセイを寄稿されていました。その中で特にTwitter(X)について「われわれが好きだった平和で楽しいTwitterはもうとっくの昔に失わ…

Camblyの履歴ビデオにフィードバックが加わった

オンライン英会話のCambly、最近学習用ウェブサイト(パソコンのブラウザ、スマホのアプリとも)のインターフェイスがどんどん変わっています。講師を予約する際の紹介ビデオが再生しやすくなったほか、レッスン後の履歴ビデオに、今年の春ごろに導入された…

デレク・ジャーマンの庭

ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』に「芝生小史」と名づけられた一節があって、そこにはこんな記述があります。 個人の住宅や公共の建物の入口前に芝生を育てるという発想は、中世後期にフランスやイギリスの貴族の城館で誕生した。そして近代初期に…

競争するのをやめれば甲冑もいらなくなる

ここ数日ほど「人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない」と翻訳された言葉がほんとうにアン・モロー・リンドバーグの意図に沿ったものだったのかどうか……について追いかけてきました。けっきょく確たるところは分からなかったのですが、なん…

ちょっと勇み足だったかもしれない

しつこいようですが昨日にひきつづき、アン・モロー・リンドバーグの名言とされる「人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない」の出典が見つからない件……といいますか、どなたが “One must lose one’s life to find it” を「人生を見つけるため…

「人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない」の出典をめぐって

先日このブログで、山口周氏の『ビジネスの未来』に引用されていたアン・モロー・リンドバーグの言葉をご紹介しました。山口氏はこのように書かれています。 大西洋単独無着陸飛行にはじめて成功したチャールズ・リンドバーグの妻であり、また自身も女性飛行…

デヴォンとコーンウォール

オンライン英会話で「こないだイングランドの南西部、デヴォン州とコーンウォール州を旅行しました」と言ったら、講師の先生がそのデヴォン州はプリマス出身の方だったので、そこから先生の「ふるさと語り」が止まらなくなりました。も〜、こちらにぜんぜん…

“台湾素食”は不健康なの?

台湾へ旅行したとき、よく利用するのが“素食”です。“素”は食事について使う場合「菜食」(反義語は“葷”)のことで、仏教などの宗教的な理由で、あるいは健康食として、あるいはエコロジカルな観点から、さらにはアニマルライツのような思想信条でこの食事を…

魯迅の短篇に打ちのめされる

同僚の講師から一冊の本を手渡されました。魯迅の『吶喊』です。1988年発行の人民文学出版社版。いまとなってはかえって斬新にさえ思える、いたってシンプルな装丁の薄い一冊です。もともと私の妻が持っていたもので、ずいぶん前に同僚の講師にお譲りしてい…

なぜ "aren't I" なの?

いつものように朝の通勤電車でスマホのDuolingoをやっていたら、連続記録が3000日になっていました。私はおもに英語を練習していますが、この間Duolingoはたびたび仕様が変わり、カリキュラムも何度か大幅に動いていて、こうやって8年近く取り組んでいても…