高層ビルの建設に欠かせない「タワークレーン」。その半数を製造しているのが広島に本社を置く北川鉄工所だ。製品開発力の高さは製造業の世界で広く知られている。なぜそうした希少な位置を占めるようになったのか。同社の北川祐治代表取締役会長兼社長に聞いた――。(インタビュー・文=中沢孝夫・福井県立大学名誉教授)
日本のビル建設に使うクレーンの半分は北川製
——北川鉄工所は典型的なBtoBの企業なので、仕事の中身は消費者には、地元(備後・府中市)の市民は別として、一般市民には見えにくいのですが、設立から80年、創業者の個人企業の時代から数えると100年を超えました。
【北川祐治(北川鉄工所代表取締役会長兼社長)】山あり谷ありでしたが、新製品の開発や改良を重ねることによって、おかげさまでここまで歩んできました。当社の事業の中身を大きく分けると①金属素形材事業、②産業機械事業、③工作機器事業、の3分野です。
金属素形材事業は、いわゆる鋳物製品で、クルマのトランスミッション部品や農業機械部品など機械加工した鋳造品を大量に造っています。工作機器事業は、工作機械の周辺機器などを造っており、NC円テーブル、回転シリンダ、旋盤用チャックなど多様です。
産業機械事業ですと、建設機械のタワークレーンなどです。日本のビルを建てているタワークレーンのおよそ2分の1が当社の製品です。高層ビル、中層ビルの上層階をどんどん重ねていくクレーンです。またコンクリートプラントなども多くの生コン工場に供給させていただいています。