〇仮面ライダーストアの購入者は40%が女性。
玩具業界紙「トイジャーナル」2021年2月号に面白い記事がありました。
東京駅一番街で2020年7月よりオープンした「仮面ライダーストア」の購入層の4割は大人の女性(20~40代中心)だというのです。
これは特集「おもちゃはジェンダーフリー、エイジフリーで市場拡大へ」の中で記されたもので、これまで男の子向けがメインであった仮面ライダーグッズもジェンダーフリーへと舵を切る可能性を示唆していました。
資料では、
仮面ライダーストアの購入層の割合が
大人男性(30代中心) 5割
大人女性(20~40代中心)4割
ファミリー層 1割
となっています。
画像引用;月刊トイジャーナル(東京玩具人形協同組合)2021年2月号(P66)
※何故に大人男性が30代中心、大人女性が20~40代中心の表記なのかは謎ですけど。
〇4割が女性は想定以上だった
仮面ライダーストアは東京駅という立地上、ファミリー層は少なくて大人男性が最も多いのはある意味予想通りだとは思いますが、バンダイサイドとしても4割が大人女性だった事は想定以上だった様です。
グループ会社が展開する「一番くじ」等の販売状況からも大人女性のグッズ購入が、年々、徐々に拡大傾向になることからも一定数いることは分かっていたが、購入層の4割が大人女性ということは想定以上の結果だった。
月刊トイジャーナル(東京玩具人形協同組合)2021年2月号(P66)
ちなみに、大人女性に人気のあるシリーズは、
仮面ライダーゼロワン(2019)
仮面ライダービルド(2017)
仮面ライダーオーズ(2010)
仮面ライダーダブル(2009)
仮面ライダー電王(2007)
、の様です。
画像引用;月刊トイジャーナル(東京玩具人形協同組合)2021年2月号(P66)
この、ライダーグッズの購買層の4割が女性層だったというデータは、これまで男の子向け玩具を中心に展開していた仮面ライダーのグッズ展開を見直す契機になっていくとの事。
これまで仮面ライダー商品は変身ベルトなどなりきり商材中心の玩具展開の主軸であり、大人女性向け商品を大きくは展開してこなかったが、同店での動向により仮面ライダーという貴重なIPの市場をより拡充できることが実感できたという。
月刊トイジャーナル(東京玩具人形協同組合)2021年2月号(P66)
仮面ライダーシリーズの新たな入口として、大人女性に手を取ってもらえる様なグッズを販売していきたい、との言及があります。
その時のトレンドや時代に合わせるとともに、既にある需要からさらに深掘りして新規購入に繋がるような商材を検証し、仮面ライダーシリーズの新たな入口として大人女性に手を取ってもらえるような商材を販売していきたい。
月刊トイジャーナル(東京玩具人形協同組合)2021年2月号(P67)
事実、仮面ライダーストアでは2020年12月25日からは 「KAMEN RIDER Girls fes」としてイヤリング、ピアスやボディクリームなどの女性向け商品も展開していますよね。
一部のグッズは売り切れが出るほどの人気だとか。
※個人的には、仮面ライダー関連商品は「男の子向け商品」だからこそ、そういうのが好きな女性にも受けている部分はあるのかとも思うので、安易に「女性向け」にしない方が良いかとも思いますが、それは自分の考えが古いのでしょう。
なにはともあれターゲットが広がっていくのは良い事だと思います。
仮面ライダーはこれまでは「男の子向け」が主流だったのが、この先は「男性」も「女性」も「その他の性」も楽しめる様に、更に「子供」だけでなく全年齢に向け、国境をも越えたIPの展開を図っていく、という結論となっていました。
〇子供向け玩具のジェンダーフリー、エイジフリーについて
この記事内には仮面ライダーだけではなく、その他の玩具についても触れられています
例えば「シルバニアファミリー」は10年前と比べて男児ユーザーが5%ほど増加している(p68)事や、「メルちゃん」も男児ユーザーが10年前は0%だったのが今は2%になっている(p69)事。
また「リカちゃん」は男の子のユーザーは10年前と変わらず1%との事ですが、「ミスタードーナツへようこそ」は5%、「くるくる回転ずし」は3%と種類によっては男の子が購入する割合も高い様です(p71)
「アクアビーズ」も10年前と比べて男児ユーザーが15%も増えている様です。(p69)
(リカちゃんミスタードーナツは5%が男児ユーザー)
逆に男の向け玩具の王道「トミカ」は10年前は女の子のユーザーは全体の2%だったのが、今や10%となっていたり、プラレールも同様に女の子ユーザーが5%から10%に増えていたりと、確実に男の子女の子玩具の垣根は無くなってきている様です。
また、シルバニアファミリーやトミカなどは「エイジフリー」として大人のユーザーにむけた展開も増えてきている、との事です。
(メルちゃんは、この10年で男児ユーザーが0%から2%へ)
(この10年での変化 2011年~2021年)
- シルバニアファミリー→男児ユーザー5%増加
- メルちゃん→男児ユーザー 0%から2%へ
- リカちゃん→男児ユーザーは1%と変わらないが、ミスタードーナツのセット玩具は5%が男児ユーザー
- アクアビーズ→男児ユーザーが15%増加
- トミカ→女児ユーザーが2%から10%に。
- プラレール→女児ユーザーが5%から10%に。
この様に、それぞれ「対象となる性別が明確であった(と勝手に思っていた)玩具も、次第に境界が揺らいできています。
(大人向けのトミカプレミアム)
また、業種面から見ても
株式会社バンダイは2020年に「ボーイズトイ事業部」「ガールズトイ事業部」をやめていますし、
日本玩具協会主催の「日本おもちゃ大賞」も2021年より「ボーイズ・トイ部門」「ガールズ・トイ部門」を廃止し、「ベーシック・トイ部門」「キャラクター・トイ部門」へ変更となりました。
もちろんこれまでのターゲット層だけでは売り上げが上がらないために、販路を広げていく意味もあるかと思いますが、玩具業界は明らかに「ジェンダーフリー」「エイジフリー」の傾向に向かっている事が伺えます。
(記事中では、英国のPINK STINKS(ピンクは嫌だ)など海外の事例にも触れていますし、海外では単純にジェンダーフリー化しているのではなく、海外のアマゾンなどの主要ECサイトでは、トップ画面に男児、女児の文字は無いものの、その文字を入れればジェンダー別+年齢別のアイテムが表示されるなどユーザーが使いやすい方向へとシフトしていっている様です)
日本ではまだまだ、祖父母が「8歳の女の子の玩具はどれですか?」と聞いてくる事が多く、慎重に対応していく事が課題であること等にも触れられています。
もちろんこれまでも玩具のジェンダーフリーの傾向はあったかと思いますが、令和の時代は、「仮面ライダーは男の子のもの」「プリキュアは女の子のもの」といった概念はもう消えていくのでしょうね。
(おわり)