記事一覧 - popoのブログ

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超短編(ショートショート)

6人の容疑者

真っ白な部屋で、青年は目を覚ました。 冷たく滑らかな壁、無機質な床、 そして頭上には眩しいほどの照明。 記憶を辿ろうとするが、何も思い出せない。 「ここは…どこだ?」 戸惑いながらも立ち上がると、 部屋には彼を含めて6人の男女がいた。 互いに見覚え…

母の面影

ひとりの少年は、幼い頃から病弱な母を深く愛していた。 母の温かい眼差し、優しく語りかける声、 そして時折見せる寂しげな表情。 それらはすべて、彼の心に深く刻み込まれていた。 しかし、母の病は徐々に体を蝕み、 ついに床に伏せる日が訪れる。 彼は、…

ニャーニャーニャー

寒い冬の日、ぼくは家のコタツの中で待っている。 暖かいコタツはほっこりするが孤独なものだ。 外はシンシンと雪が降り積もり、 冷たい風が窓を叩きつける。 「ニャーン…」と、小さく鳴いてみるが、 返事はなく、静寂が深まるばかり。 聞こえるのはコタツの…

私の旅

ついに、パスポートを手にした。 初めての海外旅行。 パスポートを手にした時の心境は、 期待と不安が入り混じる、何とも言えないものだった。 胸の奥から湧き上がるような期待感。 今まで画面越しにしか見ることができなかった景色、文化、人々。 それらが…

フトゥバ

「おばあちゃん!今日もいろいろお話聞かせてね。」 「あら、ユイちゃん、よく来たね。さあ、お茶でも飲んでゆっくりしていきなさい。」 「ありがとう!おばあちゃん、いつも不思議に思うんだけど、おばあちゃんが話す言葉って、なんかちょっと違うよね?」 …

天使の囁き

北国の冬は、雪と氷に閉ざされた世界。 でも、その美しさは息をのむほどで、 そこに暮らす人々の生活もまた、 厳しい自然の中で育まれた独自の文化や知恵に満ち溢れています。 ダイヤモンドダスト 気温がマイナス10度以下まで下がると、 空気中の水蒸気が凍…

新たな一歩

主人公の舞は、平凡な毎日を送るOL。 仕事に追われ、家と会社の往復だけの日々に、 心の奥底で何かが満たされない思いを抱えていた。 そんなある日、仕事帰りに立ち寄ったライブハウスで、 彼女は衝撃的な音楽に出会う。 力強い歌声と、魂を揺さぶるようなメ…

最高のチョコレート

冬の寒さが和らぎ始めた頃、 街はバレンタインの甘い香りに包まれていた。 パティシエの深雪は、新作のチョコレート作りに没頭していた。 「永遠の愛を誓う二人にふさわしい、最高のチョコレートを。」 そんな想いを込めて創作したチョコレートは、 シンプル…

家系

秀臣は、武蔵国(現在の東京都)に勢力を誇る豪族。 その勇猛さと人望の厚さから、多くの人々から慕われていた。 ある日、秀臣は一族の繁栄を願って、 子孫に受け継ぐ苗字を定めることにした。 「わが一族は、この地で栄え、末永く家系が続くように」 秀臣は…

温め3分

朝7時、目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。 寝ぼけ眼をこすりながら、男はベッドから飛び起きた。 今日は大事なプレゼンがある。 「あと30分しかない!」 目覚まし時計の爆音で飛び起きた僕は、 焦りながらも、手早く身支度を済ませた。 ネクタイを締め、…

118

青い空とどこまでも広がる海。 私たちはその美しさに魅了され、時に畏怖の念を抱きます。 しかし、穏やかな海も時には牙をむき、 私たちに危険をもたらすことがあります。 そんな時、頼りになるのが「118」 ある夏の日、家族で海水浴に来ていた少年が 沖に流…

服の日

春夏秋冬、季節の変わり目になると、 新しい季節に合わせた服が欲しくなる。 ファッション雑誌やSNSで 新しいシーズンのトレンドを目にすると、 自分も新しい服を着てみたくなる。 周りの人が新しい服を着ているのを見ると、 自分も新しい服が欲しくなる。 …

大地の息吹

春の息吹が大地に満ち溢れる時、一年の農作業が始まる。 凍てついていた土がゆっくりと温まり、待ち焦がれていた種子が芽を出す時、 農家の人々の顔には希望の光が灯る。 夜明けのまだ暗い内から、農家の人たちは畑へと向かう。 冷たい風が肌を刺すが、その…

約束の灯台

舞台は第二次世界大戦終結直後の色丹島。 小さな漁村で暮らす兄弟、ケンジとユウタは、 父の漁を手伝いながら、大好きな海を駆け回る毎日を送っていた。 「ユウタ、見てみろよ!あんなに大きな魚が獲れたぞ!」 「すごい!兄ちゃん、やっぱり漁が上手いね!…

プロフェッショナル

迷いのない眼差し、 確かな技術と知識。 驕り高ぶることなく、 常に向上心を持つ。 困難に立ち向かう勇気、 責任を果たす覚悟。 利己的な欲に囚われず、 貢献を惜しまない。 関わる全ての人々への敬意、 共感を育む優しさ。 言葉だけでなく、 行動で示す誠実…

笑顔

舞台は、花と緑にあふれた小さな村。 主人公の少女アリサは、内気で引っ込み思案な性格で、 いつも一人で過ごしていました。 ある日、村に笑顔を絶やさない明るい少女エマが引っ越してきます。 エマは、アリサに優しく話しかけ、一緒に遊ぶようになりました…

ぷよ

うわーっ、海だー! 見て! どこまでも広がってるー! (きゅー!) 今日は天気も最高! みんなで海水浴しよっか! フフフ… また会ったな。 なんでここにいるのよ! 貴様を消し去るためだ! 永遠の眠りにつかせてやろう! くそー!邪魔だなあ。 また始まった…

海を渡って

1900年代半ば外国で生まれた彼女は、 幼い頃から歌と踊りに夢中だった。 日本の歌謡曲を口ずさみ、映画スターに憧れる少女は、 やがて日本の地を踏むことになる。 そして彼女は若くして日本で歌手となる。 透明感のある歌声と愛らしいルックスは、たちまち人…

おんぶ

私、あおいは、ママの背中にいる。 あったかい。 ふわふわの毛布みたい。 ママの匂いがする。 トントン、トントン。 ママの心臓の音が聞こえる。 不思議な音。 でも、なんだか落ち着く。 ママの背中は、私の特等席。 高いところから、色々なものが見える。 …

カニ看板

港町に住む小学三年生のケンとユイは、 いつも一緒に遊ぶ仲良しコンビ。 二人の秘密基地は、波止場の隅にひっそりと佇む、 古びたカニの看板のすぐそば。 看板は、かつてこの町で一番賑わっていた海鮮料理店のものだったが、 今は錆び付き、片目も取れてしま…

愛の光

穏やかに晴れわたった冬の朝、 老人のヨハンは、手入れされた庭の一角に咲くチューリップを見つめていた。 赤、白、黄色、紫… 色とりどりの花が咲き誇り、 まるで妻の笑顔のようだった。 ヨハンと妻のアンは、幼い頃からの友人であり、生涯の伴侶だった。 共…

限られた時間

これは今から数十年も前の話。 世の中にまだ携帯電話がなかった時代。 毎朝、目が覚めると彼はいつも同じことを考えていた。 「さあ。一日の始まりだ」 彼には彼女がいた。 しかし彼女の家は厳しく、 自宅の電話での会話がなかなかできない。 許された時間は…

セレンディピティ

古都の路地裏を散策していたあなたは、 ひっそりと佇む小さな雑貨屋にふと足を踏み入れます。 埃をかぶった棚の一番奥に、 そのぬいぐるみはちょこんと座っていました。 古びたクマのぬいぐるみ、片方の目が少し取れかかっていますが、 どこか懐かしい、温か…

6カ月

彼と彼女は、小さなカフェで知り合った。 明るく天真爛漫な彼女に、すぐに惹かれた彼。 彼女も、優しく誠実な彼に好感を持ち、二人は交際を始めた。 しかし、交際が始まって間もなく、 二人の間には様々な問題が起こるようになる。 彼は好かれたい一心に些細…

アフロへの想い

この手紙を書いている今も、僕は鏡に向かってアフロを触っている。 このモジャモジャの髪が、僕にとってどれほど大きな意味を持っているか。 小さい頃、僕はいつも自分の髪がコンプレックスだった。 友達からは「キノコみたい」なんて言われて、 しょっちゅ…

ほっこりホットケーキ

「お母さん、いつも美味しいホットケーキ作ってくれてありがとうね。今日は私が作るから、ちょっと待ってて!」 休日の朝、香ばしいコーヒーの香りが漂うキッチン。 いつも朝食は、母の愛情たっぷりのホットケーキが定番だった。 今日は、そんな母へ日頃の感…

原石

山奥の小さな村に住む青年は、 幼い頃からダイヤモンドに興味を持っていた。 彼は、ダイヤモンドは地球の中心から生まれると信じており、 いつか自分でダイヤモンドを見つけたいと夢見ていた。 ある日、彼は山で木を伐採していた。 ふと、足元に転がっている…

我が家の習慣

わが家は、少し変わった習慣を持っている。 1月23日を「ステップアップの日」と定め、 家族みんなで何か新しいことに挑戦する日なのだ。 始めたきっかけは、数年前。 カレンダーをめくると1月23日文字。 特に何でもない日。のはずだった。 当時3歳だった息…

カレーライスと男の涙

小さなアパートの一室。 テーブルの上には食べかけのカレーライスと、 男が顔をうずめている茶碗がある。 男は深呼吸をして、顔を上げる。 …また、食べ過ぎた。 どうしたの? 美味しかったんじゃないの? うん、美味しいんだ。 子供の頃から大好きでさ。 父…

地球の危機

2040年、世界は2つの超大国によって支配されていた。 一つは技術革新と経済力に優れる「アトラス」、 もう一つは軍事力と資源に恵まれた「オリオン」である。 両国は、あらゆる面で競争し、対立していた。 経済・豊かさ・資金力。あらゆる面での対立は 年々…