久しぶりに漫画関連の話題を。
現在取り掛かっているネームは、あともう少しだけ手直しを加える可能性があるものの、既に作業自体は終了しており、あとはコンペの結果を待つのみだ。
もっとも、コンペの結果が出るのは少し先であり、2〜3週間ほどの時間的空白がある。そこで、この期間に絵の研究・練習をしようかなーと思い立った。まあ、要するに原稿作業の前倒しというか。コンペの結果がどうなるか分からないけど、次に繋がるような研究・練習が出来たらそれで良いかなと思う。
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今回、僕が意識したいのは、リアリティとポップさ(コメディさ)の融合というか、「リアリティを追求すべきところはちゃんと追求して、自分だけの世界観を出すべきところはちゃんと出す」という点にある。
これまでの僕の傾向としては、物やヒトの形を現実に沿って忠実に描くことが多く、デッサンの狂いは少ないので、「絵が上手い」という評価は受けやすかったものの、「個性やオリジナリティがある」という評価にはなりづらかった。上手いけど見た目が平凡だったのだ。
しかし、漫画家としてやっていきたいのであれば、「その漫画家にしか出せない形」を探求する必要があり、いずれそれを確立しなければならない。それを今回は追求していきたい。
そして、それを模索する上で重要なのは、自分の絵のテーマを追求・具現化することかなぁと思う。
僕の絵や作品のテーマは、「ほっこり」とか「ポップさ」という部分にあって、読む人に「柔らかい」とか「優しい」という印象を与えたいという思いがある。ただ、柔らかい印象を与えようと思って、形や線を省略して描くと、今度は「下手」「リアリティがない」という印象になってしまう。
完全に幼児向けの絵本とかを描くのであれば、それでも良いんだけど、少年漫画はキャラやストーリーのリアリティを伝えることに主眼が置かれているため、絵のテーマ性を伝えるだけではダメなのだ。
そこで、僕がイメージしているのは、「柔らかい印象を与える形(ポップさ)を模索しつつ、それを立体的(リアリティ)に描く」という方向性である。
例えば、僕は漫画家でいうと、鳥山先生のデザイン・絵柄が大好きなんだけども、鳥山先生はデフォルメ全開の絵であるにもかかわらず、「絵が上手い」という不変的・絶対的な評価を受けている。それは、形を崩しつつ、ちゃんとそれを立体的に描けているからだと僕は分析している。引き合いに出して申し訳ないが、例えば、クレヨンしんちゃんの作者である臼井儀人先生は、形は独特だけど、立体感が不足しているので「個性的だけど下手」という評価になっている(それがダメだと言ってるわけではなく、少なくとも少年漫画には合っていないという意味)。
つまり、テーマ性が現れるように形を崩したら、ちゃんとそれを「立体感」で補う。線の描き込みを増やすとか、立体的に見える構図を追求するとか。もちろん、少ない線でコメディっぽく描くところがあっても良いけども。
あともうひとつは雰囲気作り。ここも工夫したい。
漫画には「スピード線・集中線」「描き文字」という漫画ならではの演出があるのだけど、「こういう場面ではこういう風に表現すべき」という「常識」みたいなものがある。
確かに、この「常識」に沿って表現していれば、誰でもそれっぽい漫画が描けるものの、言い方を変えれば、それは「使い古された陳腐な表現」ということであり、その手法を踏襲している限り、没個性的な演出になってしまう。
なので、演出方法についても、「本当にこの演出で良いのか?」と常識を疑う姿勢を持つ。そこでも、もちろん「ほっこり」とか「ポップさ」というテーマ性が現れるように新しい表現を考えてみる。
- ネームで考えたラフ絵・イメージに引っ張られ過ぎない。新しい絵を描く気持ちで。
- 「ほっこり」「ポップ」というテーマ性が現れる形を探す。このフェーズでは自分の感覚やイメージを優先していい。
- ちゃんと立体感を意識して描く。コメディに見せたいシーンを除き、平面的に見えてしまう絵は検討し直す。
- 既存の演出方法を脱却し、自分だけの雰囲気作りをする。「本当にこの演出で良いのか?」と常識を疑う。
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とりあえず、絵の研究の方向性としてはそんな感じだろうか。
自分の中で、今回の作品の雰囲気というか、イメージみたいなものはあって、あとはどれだけそれを自分らしく表現できるか・・・という部分にかかっていると思う。
さて、まずは資料集めから始めようかな。頑張ろう。一歩ずつ。一歩ずつ。