こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。今年の日本は年明け早々から大地震やら飛行機事故やらと、エラいことになってます。
災害が発生するとすぐさまツイッターに悪意のあるデマが流れだすのが、もはや恒例になってしまいました。ニセの救助要請を書きこむなんて悪質なことがよくできるもんです。芯から性根が腐ってるヤツなのでしょうか。救助をする側の人員は限られているのだから、もしもデマに振り回されたら、本当に救助を求めてる人が救われる確率が下がるかもしれないのに。
あと、被災地での犯罪に関するデマ情報にも注意が必要です。以前に当ブログでは『災害ユートピア』という本をおすすめしました。(
災害関連で必読のおすすめ本)
著者のレベッカ・ソルニットさんは災害後の被災者たちの実態について、世界中の事例を検証しています。それによると、災害発生後に被災地で起きた犯罪は、多くの人たちが思っているよりもかなり少ないのだそうです。日本よりも遙かに犯罪発生率が高い国でもそうなんです。
大きな災害が起きた直後には、レイプや略奪が多発していると警告する情報が流れるのですが、その多くが実際には起きておらず、デマだった可能性が高いんです。
ニセの犯罪情報でも警戒を呼びかける効果があるからいいじゃないか、などと好意的に解釈する人もいますけど、それは違います。正しい情報だけが、価値ある情報なのです。ニセの情報に価値はありません。ニセの情報でいいことが起きたとしてもそれは幸運な偶然にすぎません。ニセの情報は人に誤った行動をとらせるので、ほとんどの場合、悪い結果をもたらします。
もちろん犯罪に警戒することは必要ですが、過度に恐れると疑心暗鬼や人間不信が高まる副作用もあるので、警察やマスコミは事実をきちんと伝えるべきです。
助け合いといえば、義援金。その善意をだまし取ろうとするヤカラもあとを絶ちません。ただし、近頃は道徳心が失われた、なんて思わないように。義援金詐欺や義援金横領は、むかしからある定番の犯罪なんです。拙著『偽善のトリセツ』に書きましたけど、明治時代の新聞を見ても、災害時には必ずといっていいほど義援金詐欺が起きてます。
明治大正のころから、新聞社と役所が義援金受付の窓口となってました。新聞記者や市の職員などが義援金を横領していたことが発覚し逮捕される事件もまた、戦前から多数報じられてます。
義援金詐欺や横領が発覚したからといって、慈善は偽善だ! 寄付や募金は無意味だ! などと極論に走るのは愚かです。
去年、地方のテレビ局の職員が24時間テレビの募金を着服していたことが発覚しました。その際にも、24時間テレビはもうやめろと騒いでる人たちがいましたけど、やめる必要なんてありません。
必要なのは、募金や義援金がちゃんと使われているかを、チェックすることなのですから。
これに関してはウィリアム・マッカスキルさんが『〈効果的な利他主義〉宣言! 』でクギを刺してます。(
おすすめ本『〈効果的な利他主義〉宣言! 』)
マッカスキルさんは、寄付や募金が自己満足で終わってはダメだとクギを刺します。寄付金の管理団体がきちんと寄付金を届けているのか。その寄付に本当に効果があったのか。寄付をするだけで満足せず、きちんと検証まですることで、意味のある利他主義になるのだと。
たしかにそうなんです。善意は相手に届いて、相手の役に立たなければ無意味です。本気で困ってる人の役に立とうとするのなら、途中で中抜きや横流しがされてないかどうかを検証する作業が不可欠です。寄付金や義援金がちゃんと届いたかどうか、寄付した人たちもそこまで関心を持たなきゃいけないってことです。
寄付をする人は、寄付の主旨に賛同し、誰かを助けるために善意で寄付しますけど、寄付金や義援金の管理をしてるのは企業や団体の職員です。そのほとんどは業務命令でやらされてるだけなのだから、善意の人だとはかぎりません。寄付の主旨に賛同も関心もない人に大金の管理を任せたら、横領する誘惑に負けることもあるでしょう。てか実際、誘惑に負けた人たちが戦前からたくさんいたわけでね。