2021年10月反社会学講座ブログ
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政治家を呼び捨てにしよう

 ナポリ3区の有権者のみなさま、ごぶさたしております。忘れたころに戻ってくる、新党アルデンテ代表のパオロ・マッツァリーノでございます。あ、パオロ・マッツァリーノであります、のほうが政治家っぽく聞こえるのかな? たぶん安倍政権になってからだと思うんですけど、政治家がやたらと言葉の語尾を「であります」っていうのが流行りだして、なんかその丁寧さが逆にやかましく聞こえるようになりました。

 これまでも選挙のたびに、わが党は数々のマニフェストを発表してきたのであります。過去のマニフェストは、当ブログの検索欄で新党アルデンテを検索すればお読みいただけるのであります。『日本列島プチ改造論』も過去のマニフェスト集といってもいい内容なので、よろしければご参考にしてほしいのであります。

 ほら、やかましくなってきたでしょ。もうこの語尾やめます。
 さて、今回発表するマニフェストは、「政治家を呼び捨てにする」というものです。
 ほめて伸びる政治家など、いません。政治家をほめたり尊敬したり持ち上げたりすると、必ず腐ります。政治批判はいけないなんて生ぬるいことをいってるみなさんは、応援してるつもりで逆に政治家を腐らせてるんです。
 政治は批判されてあたりまえ。政治家は叩かれてナンボってやつです。ちょっと批判されたくらいでヘソ曲げたり、泣きべそかいたり、悪口で応酬したりする者は政治家向きではありません。
 周囲の連中もいけないんですよ。先生、先生などと持ち上げるから、俺はエラいんだ、といい気になって性根が腐ってくるんです。
 そうさせないためにも政治家には、さん、様、先生などの敬称をつけず、全員呼び捨てにすることをルールにしましょう、ってのが今回のマニフェスト。
 もちろん報道でも呼び捨てを徹底します。○○議員、○○大臣という呼びかただと敬称になってしまうので、議員の○○、大臣の○○、とするのがいいでしょう。総理大臣の岸田は……みたいな言いまわしですべて対応できます。

 そんなことやっても何も変わらないだろうって? 変わらないとおっしゃるあなたは、デメリットもないと認めたわけですよね。だったら、やってみてもいいじゃないですか。なにしろこのマニフェスト、実行するのに新たな財源をまったく必要としないのです。やって損はありません。
 新たな改革案を提言されるとすぐに「財源はどうするんだ!」と条件反射で吠える財源バカは本当にウザいですよね。そういう人って、新たなアイデアを検討するのがめんどくさいだけなんですよ。財源がない、と頭ごなしに却下すれば検討しなくていいものね。財源をどうするか具体的に考えるのはアタマ使うけど、財源はどうする! と一喝するだけならアタマ使わずにイバれるからラクです。

 呼び捨てにされた政治家は、最初はムッとするかもしれません。先生と持ち上げられないことで、いままでみたいにイバりづらくなります。逆に国民のほうも政治家を呼び捨てにすれば政治家に媚びづらくなります。
 私は、それによって政治家と国民の距離感が縮まることを期待してるのです。政治家の呼び捨てに抵抗を感じる人は、政治家はエラい人だから敬わなければならないって先入観にとらわれてるんです。
 政治家がなぜエラいの? 政治家は国民の代表なのだからエラいのではなく、仲間であるべきでしょう。政治家と国民をタテの関係からヨコの関係に引き戻すために、呼び捨てにするというちょっとした荒療治は効果があると思うんですよ。まあ、仮に効果がなかったとしても、さっきもいったように、財源を使うわけじゃないのだから誰も損しませんから。
[ 2021/10/25 20:29 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

エンタメはほめよ、政治は批判せよ

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。本や映画やマンガなどに関して、私はわりと他人のおすすめをあてにするほうです。自力だけでおもしろいものを探し当てるなんてムリですからね。
 おすすめ作品で興味を惹かれたものがあれば、とりあえず読んでみる、観てみる。それでおもしろければ、めっけものだし、つまらなかったとしても、べつにがっかりはしません。
 読者のかたがメールやツイッターなどでおすすめしてくれた本も、へー、そんなのあるんだ、と思ったものは図書館で読んでます。先日も読者のおすすめ本のなかから『文武両道、日本になし』と『妻たちの企業戦争』を読みました。『文武両道……』は、文武両道をきちんと実践してるのは日本でなく海外のほうで、日本はスポーツバカを作ってるだけじゃないか、みたいな指摘が小気味よい。
『妻たちの……』はまだ1章しか読めてないのですが、出だしの「美人妻ばかりが住む団地がある」というくだりからして不穏な気配に満ち満ちてます。フィクションではなく、昭和時代のルポなのですが、読んでいくとほぼホラーです。
 その団地というのはある大手商社の社宅なので、住んでるのは全員、男性社員とその家族。男性社員はみんな仕事が忙しすぎて社内結婚をする人が多かったため、会社は女性社員を戦力としてではなく、最初から男性社員の花嫁候補として顔で選んで採用してました。だからこの団地には美人妻ばかりが住んでたんです。
 そこへ新たに越してきた夫婦の奥さんは、珍しく社外で知り合って結婚した人。よそ者である彼女が社宅で遭遇する超ヒエラルキー社会。会社での夫の地位がそのまま団地内の妻たちの地位になっているのです。コワいよー! これ、出版当時ドラマ化とかされなかったのかね。

 ついでなんで、レビューに関して思うところをお話ししておきます。私はエンターテインメントの批評、レビューは基本的にほめるだけでいいと考えてます。自分が気にいったものを他人におすすめして、おもしろさを誰かとわかちあいたい、それがレビューを書く自然なモチベーションです。
 なので自分もブログではなるべく、おもしろかった本やドラマや映画だけを紹介するように心掛けてます。つまらないものはスルーでいい。
 政治や社会システムは、不合理不条理を批判して圧力をかけることで改善されてきました。だからスルーせずにどんどん辛口批判をしなきゃいけません。でも、どうしようもないエンタメ作品をメッタクソにやっつけたところで、作者がいい作品を作るようになるかというと微妙です。やる気をなくすだけかもしれません。
 これつまらないから観るな読むな、と他人に命令する権利なんかないですし。きみもこの作品を観て、私が感じたつまらなさを追体験してみたまえ、って不毛な共感を求めて他人の時間を奪うのもどうかと思いますよ。
 時間のムダという意味でいえば、そもそも私は本でも映画でも、つまらないなと感じた時点でやめちゃいます。で、その作品については何も語らない。それが精神衛生上もっともいいやりかたです。つまらない作品に最後までつきあったあげくに、批判レビューまで書いても、二重三重にイヤな気分を増幅するだけじゃないですか。
[ 2021/10/12 17:49 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告