こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。若い人たちのあいだで自民党支持率が高いのはアベノミクスによって就職率が上がったからだと、テレビで評論家っぽいおっさんがいってました。
へえ、そうなの? 私を大学教授と信じている一部のかたのご期待に沿えず申しわけないのですが、私は大学に勤務してないので、大学生の就職実態について知るよしもありません。個人的には、印税も原稿料もまったく上がらないので、アベノミクスによる景気上昇の恩恵をまったく受けてません。
というわけで、平成28年度文部科学白書を確認すると、221ページに大卒者(短大なども含む)の就職率推移グラフが載ってました。
![H28文部科学白書P221](https://blog-imgs-116-origin.fc2.com/p/m/a/pmazzarino/20171019093650f5cs.png)
グラフによると平成24年から就職率が回復傾向にあるようです――ん、ちょっと待てよ。これは前年度卒業生の最終結果を4月1日にまとめた数字ですよね。平成24年4月時点の日本で政権の座にあったのは、民主党です。自民党が政権を奪還したのはその年の暮れの選挙ですから、アベノミクスをはじめる前、いやそれどころか民主党政権のときに、すでに大卒就職率は急上昇していたことになります。つまりデータからは、就職率がアップしたのは民主党のおかげなのか、アベノミクスのおかげなのかは判断できないというのが結論です
(テレビに出てた評論家っぽいおっさんはなにを根拠にしてたんだろう?)。
過去の数字を見ましても、平成12年、グラフ上では最悪の就職氷河期だったときの総理は小渕さんで、経済政策には賛否両論あったものの、日経平均株価はいまと同じ2万円台でした。
じゃあ、なんなんだよ、って話ですよね。就職率の良し悪しは、政治とはあまり関係ないんじゃないですか。就職率の数字が景気の指標としてふさわしいのかどうかも、かなり疑問に思えてきます。