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戦略・戦術

第155号 1兆113億円

社長のための“儲かる通販”戦略視点

  この数字は、日本生活協同組合連合会(全国生協)の2011 年の「個人宅配」サービスの供給高である。 年々拡大し続けている食品宅配サービス市場において、過半を占める生協の「個人宅配」が、ついに前年比5.7%増で1兆円超えを達成し、4 年ぶりの増収増益に大きく貢献した。

 自宅へ直接届ける「個人宅配」は、高齢者の利用増だけでなく、従来の生協会員より若い30~40代のインターネット注文の増加が、大幅な伸びにつながっている。また、食に対する安全管理や商品チェックが厳しいことも、生協が支持を得ている一因と言える。
 
 生協ではかつて、隣近所や同じマンションの居住者が、グループ単位で共同購入する形が主流だったが、近年は「個人宅配」へと大きくシフトしている。これは、核家族化や主婦の就労者が増えて留守が多くなっていること、晩婚化の進行や高齢者の単身世帯が増えていることが大きい。さらに、不況による外食離れに加え、惣菜(中食)も含め、家庭内調理による内食回帰の風潮が強まっていること等、ライフスタイルの多様化や社会環境の変化も少なからず影響している。
 
 この食品宅配分野は、大手スーパーやコンビニ、百貨店など大手流通業もこぞって参入しており、激戦市場となりつつある。それに伴って、競合他社との差別化を図るため、各社のサービス内容も多様化。移動販売や配食事業、シニア向け商品の拡充、そ
して即日注文で即日配送、時間指定配送など、既存の配送インフラを持つ大手が、収益の柱として本格的に資本投下を加速させている。
 
 その一方で、宅配寿司が宅配釜飯・宅配中華を、新聞販売店や牛乳配達店が菓子や米を宅配するといった、業態のクロスオーバー化も深化している。最近では、NTTドコモが食品宅配大手の「らでぃっしゅぼーや」を買収。音楽や映像、アプリなどのデジタルコンテンツに加え、来年度から野菜などの食品通販事業に本格進出する方針を明らかにしている。NTTドコモの加藤社長は、スマホや携帯デンワで簡単に決済できる強みを生かし、「段階を踏んで米アマゾンのようになっていく」と述べている。
 
 今年に入り、とくに大手企業による通販企業のM&A が増加中で、いち早く新市場を創造すべく通販企業に食指を伸ばしている。このように、業界を越えた再編が進行していることに伴い、今後は“ 食”以外の分野でも、「個人宅配」サービス市場は拡大していくはずである。

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