2015年10月 - Age of Pen

ただ秋のかぜ

塚本邦雄
三十一日間の日記を創作し、塚本(キエルケゴール)氏は秋の風邪   (黄金律)
ただ秋のかぜと言へれどその秋の風邪に眞珠母色の水洟(みづはな)   ( 〃 )
斷じて行へば貴様も怯むかと刈り束ねたれ芒千本   ( 〃 )

岐阜県揖斐郡池田町と揖斐川町にまたがる池田山で。
到着した瞬間だけ遠くに陽の光がみられましたが、すぐに雲ばかりの空模様になりました。
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

本日はかぜ気味。

ちちのみの

塚本邦雄
戀にやぶれたるちちのみの父上の秋のただむき冬のひかがみ   (花劇)
晩秋の茄子錆色にひびわれてキェルケゴールの何を愛せむ   ( 〃 )
十三夜曇りの宵をうく齲歯(うし)の菌こそストレプトコッカス・ミュータンス   ( 〃 )

あすはハロウィーンなので、リトルワールドのジャック・オー・ランタンの残り物を。台湾の福建系農家を復元した建物で。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7

たましひ遊ぶ

塚本邦雄
火の星のふふめる酸味 晩秋のこころ病みつつたましひ遊ぶ   (天變の書)
耳燃ゆるばかりに羨(とも)し咒ひもて無花果を枯れしめたるイエス   (驟雨修辭学)
風媒花ばかり培(そだ)てて生きのびた園丁の掌(て)の圓錐形果   (水葬物語)

また「歴史ルート公園鹿深の道」で。
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

心車輪のごと

塚本邦雄
枯るる蓬生(ともぎふ)口紅ほどにもみぢする心車輪のごと急(せ)く彼方   (感幻樂)
古典炎え盡きたり神無月夕ひばりきららなしつつわれ墜ちゆかむ   (星餐圖)

滋賀県甲賀市甲賀町、櫟野寺(らくやじ)。櫟は「いちい」の木で、お寺の十一面観音菩薩が櫟の生樹から彫刻されて「生えぬきの観音」と言い伝えられているそうです。坐像の十一面観音様は珍しいのだそうです。
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8

風を踏み訪い

塚本邦雄
ともにガルシア・ロルカを聽かむ紅葉(こうえふ)の夕風を踏み訪(と)ひ來し男   (豹變)
レオナルド傳新刊のなまぐさし今宵薄紅葉の中行けば   (歌人)
草もみぢつひのいのちの紅はおのれ灼きつつしづもりにけり   (薄明母音)

「歴史ルート公園鹿深の道」で。
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

のこすべきなにありやなしや

塚本邦雄
遺すべきなにありや秋のほそり陽に犬蓼の穂のいよよ紅かれ   (薄明母音)
なかぞらの戀をなにせむ林中にして手のつけられぬ櫨紅葉(はぜもみぢ)   (歌人)
石榴(ざくろ)一顆(いつくわ)届け候兄弟と呼び呼ばるるもこの秋かぎり   (睡唱群島)

「歴史ルート公園鹿深の道」で、たぶん甲賀町。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

そろそろ年賀状とカレンダーの準備をする季節です。
年賀状は、毎年、干支の小物とカメラの組み合わせです。
三重県には、松阪市と桑名市多度に「弾き猿」という縁起物があります。
松阪のそれで試し撮りしてみましたが、サルに見えない点が問題です。

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ほかの「サル」でも試しました。

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しぶしぶ

塚本邦雄
柹の木のほかに樹知らず仲人はジャン・ジャック・ルソーを褒めちぎる   (豹變)
楸(きささげ)下蔭を來て突然によみがへるうつくしからざりし母   (花劇)
サリンジャー忌などあるものか秋胡頽子(あきぐみ)の夕べ西からしぶしぶ霽(は)れて   (風雅)

鈴鹿峠をこえて。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8

惡名が奔らむ

塚本邦雄
紅葉(こうえふ)映すべき黑漆の大机買ひ入れてなにもおかざる二日   (黄金律)
歌に浮かれゐるてふわれの惡名が奔らむ秋風よりも迅く   ( 〃 )
われは何ものならざりけるかこゑのみて視る紅葉(こうえふ)のをはりの黑   ( 〃 )

鈴鹿峠をこえて「歴史ルート公園鹿深の道」で、大原ダムの湖畔。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

漂いて

塚本邦雄
魔女といはむにはほどとほしきぬぎぬの幼ききりぎりすの舌足らず   (黄金律)
ゆふやみ迫るころおのづから漂ひて菊人形の公卿惡(くげあく)の香   ( 〃 )
秋風に吹きちぎらるる吾亦紅これよりこころおきなく老いよ   ( 〃 )

犬山市リトルワールド、アルザス地方の農家。1582年築だそうです。
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LUMIX G 20mm f1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

カメラが修理されてもどってきました。日曜にネットから申し込んで、火曜に運送業者がとりに来てくれて、昨日修理が終わり、航空便で今日自宅へ着きました。いつも早い対応に満足ですが、いろいろな設定が初期値になってくるのが困りものです。カメラでユーザーが設定した情報をPCかプリンターに転送できるといいのですが。

愚かしき一日

塚本邦雄
卑怯者と云はれてはつと立上がり茶の花や鶸に哀れがられぬ   (歌誌『オレンヂ』 6号)
愚かしき一日果つると夕闇に衰へし菊を剪りすてにけり   ( 〃 )
明日の日はあすの光りうつろはむ紅葉なれやかへりみはせじ   ( 〃 )

犬山市リトルワールド、チベット仏教寺院。
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7

刻刻を老ゆるわれ

塚本邦雄
秋ふかくふかくなりつつ遠緣(とほえん)の男のふところに銀時計   (黄金律)
木犀のやみに思へば十年來われにも一人イヤーゴがゐる   ( 〃 )
籃の石榴紅きしづくし刻刻を老ゆるわれ、すさみゆくユーラシア   (日本人靈歌)

御在所岳で。
イヤーゴはシェークスピヤの「オセロ」に出てくる、ずる賢く、他人をおとしいれる悪人ですが、わたしの内部にもいるような気がします。
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

群青の

塚本邦雄
聖心女學院前過ぐるときわれの群靑のカフス釦曇る   (詩歌變)
皇族寫眞集いな家族寫眞帖見せむと婿が來る夕時雨   (花劇)
黑人奴隷ひとり心に飼ひ まひる遠き電柱の胴鳴り交へる   (綠色研究)

犬山市リトルワールド、西アフリカのサバンナ地帯の家。(と、リトルワールドの公衆トイレの壁模様)
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

ことば優雅に

塚本邦雄
コスモス滿開なり腕白の二の腕に沃度丁幾(ヨードチンキ)のうするるセピア   (風雅)
言葉にそむきなほ歌人(うたびと)としてあるを愕然と神無月の霰   (花劇)
菊花展の菊むしりつつ反目のことば優雅に詩人家族ら   (綠色研究)

御在所岳で。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8

燗ざましののごとし

塚本邦雄
世界戰爭勃らむとしておこらざる神無月燗ざましののごとしも   (獻身)
いくさとは忍ぶる戀の爆發と思へ石榴を眞二つに割(さ)く   (天變の書)
國民年金番号號四一七〇ノ二三二六 枇杷くされ果つ   (魔王)

御在所岳で。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

ことしもまたカレンダーをいただきました。越中八尾「おわら風の盆」カレンダーです。
小説『風の盆恋歌』の作者高橋治氏の書を牛首紬の帯にして踊っている写真が10月になっていて、帯の主の方からカレンダーをいただきました。
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わが宇宙(コスモス)

塚本邦雄
秋眞晝わが宇宙(コスモス)に水流れ名も知らぬ草、花散らすなり  (新歌枕東西百景 東京都秋川市草花)
あきざくら散るやすなはちみづうみの水さやさやと岸越す嵐 ( 〃  神奈川県津久井郡相模湖寸澤嵐)

今日はご近所。
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

今日は御在所岳の紅葉を見にいったのですが、E-M5Ⅱのシャッターを2回切ったあと背面モニターがブラックアウトして、内蔵EVFもメニュー画面やバッテリー残量が消えたままになってしまいました。E-P5を持っていて助かりましたが。気分がダウンして写真ももうひとつです。

よろこびに隣り

塚本邦雄
われの悅樂(よろこび)に隣りて全身の釘ひえびえと建ちゆく禮拜堂(チヤペル)   (綠色研究)
イタリアに生るるならばアンジェロと吿(の)らむすなはち靑き菊の香   (靑き菊の主題)

犬山市リトルワールド、復元したドイツバイエルン州の村の丘のゲオルグ礼拝堂。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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LUMIX G 20mm f1.7

見失う環

塚本邦雄
夕映の圓塔(ドーム)からあとをつけて來た少女を見うしなふ環狀路   (水葬物語)
燠色(おきいろ)の夜の鶏頭にからだ觸れ立てりわれまた死の國の火夫   (水銀傳説)
熟柹色の夕空の下いま千の家庭がよごれたる米あらふ   (日本人靈歌)

ニュー・ギアが届いたので試し撮りに散歩しました。
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8
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KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8

ニュー・ギアはコーワの広角レンズです。
コーワというと、むかしは「カロ」という名前のカメラを出していて、カロワイド、カロ140、カロフレックスなんていう名前を聞いたことがあります。(実物は見た事がありません)
写真を撮り始めてからは、コーワSWとか、コーワSIXの円形魚眼レンズにあこがれていました。
下は1957年の雑誌付録のコピーです。ワイドカメラブームをつくったオリンパスより明るいレンズ(オリは3.5)、高級なレンズシャッター(オリはコパルの300分の1どまり)をつけ、当時25,000円の定価(オリは16,900円)でした。
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『フォトアート』12月号付録

偶像

塚本邦雄
人に飽きて入り來し畫展レダの繪にくらくらと赤き西日てりつつ   (装飾樂句)
われら短き命もてうちくだくべき偶像は黄なる霞に睡り   (透明文法)
闇取引するときのみぞきらめける瞳なり旣に神に杳けれ   (歌誌『木槿』1947 1月号)

犬山市リトルワールド、バリ島のお屋敷家。
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LUMIX G 20mm f1.7
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LUMIX G 20mm f1.7
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

行つて引つかへす

塚本邦雄
シヤンデリアの下まで行つて引つかへす貴族のなれの果て靑蜥蜴   (透明文法)
壁ごしに聞える彌撒(ミサ)に不覺にもこゑあはせたる老娼婦たち   (装飾樂句)
むらさきのムラノ明けつつ一ぴきの玻璃の馬吊る天のたていと   (閑雅空間)

犬山市リトルワールド、ペルーのアシエンダ(農園)のスペイン人領主の家で。
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye

そらおそろしき退屈の

塚本邦雄
白萩に灰色の月「左大臣實朝」とこそ書き損じたれ   (黄金律)
家族に核ありしや否や秋風に洗ひあぐればさびしき障子   ( 〃 )
莊子(さうじ)讀むそらおそろしき退屈のそのときかがよへりわが余生   ( 〃 )

犬山市リトルワールド、韓国の家。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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LUMIX G 20mm f1.7
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LUMIX G 20mm f1.7
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LUMIX G 20mm f1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

前にも引用した「デジャ・ヴェ」創刊号の森山大道の話の続きからもう少し。

飯沢: 『仲治への旅』(蒼弯舎、1987)という写真集も出されていますね。安井仲治という人物が森山さんをそれほどまでに魅了しているのですか、それとも仲治の写真ですか。
森山: もちろん写真ですよ。でも写真ということは結局人物でもあるから。
飯沢: クラインとかとは違ったレベルですか。
森山: クラインとか東松照明は、まさに僕が写真を始めようとした時に出会って、ショートしただけのことですからね。

空白の出日本 ~ 「ジャック・オー・ランタン」のリトルワールド

塚本邦雄
動脈を白葡萄酒がさかのぼりゆく夕光(ゆふかげ)の二年目の逢ひ   (歌人)
アフリカにて見れば母國の地圖ゆがみどのみづうみの底に寺院(てら)ある   (綠色研究)
穀物祭の町あたたかく若者の耳のうしろにのこれる石鹼(しやぼん)   (装飾樂句)
檻に頬すりつけて火喰鳥見つつつひに空白の出日本記(しゆつにつぽんき)   (日本人靈歌)

ハロウィーンの季節というので、「ジャック・オー・ランタン」の作り物で遊んできました。場所は、愛知県犬山市のリトルワールドです。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7

塚本邦雄の短歌に出てくる火喰鳥に、「火の鳥」、フェニックス=皇帝、天皇のイメージを感じます。
歌集『装飾樂句(カデンツア)』の『生きのびて癡(おろ)かに暑し火喰鳥蒼然として羽抜けかはる』が、私には昭和天皇の人間宣言を想像させるのです。
羽根が抜け変わっても火喰鳥は火喰鳥。しかし、「おろか」で「あつい」のは火喰鳥ではなく、それを見ている私です。火喰鳥が「暑い」などと言うはずがないからです。
「蒼然」は古色蒼然の蒼然ですから、「蒼然として羽抜けかはる」のは、過去にもあったという意味かな、と。今日の、『檻に頬すりつけて・・・』も、有名な皇帝ペンギンの歌のバリエーションだろうと思いました。

考へる豚

塚本邦雄
考へる豚なりき根の無い蘭科植物なりき火の街に棲み   (透明文法)
亭主關白豚兒攝政秋ふけて一刷毛の血の雁來紅(かまつか)刈らる   (魔王)
偕(とも)に眞晝の星を數へて戰亂の二十一世紀を愉しまむ   (詩魂玲瓏)

宝山寺。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

身の底に

塚本邦雄
曼珠沙華のきりきりと咲く野に立てば身の底に湧く飢ゑもくれなゐ   (透明文法)
父の聲そらみみに聞く茗荷宿いかなる神と枕ならべむ   (海の孔雀)

ふたたび宝山寺。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

ずたずたの

塚本邦雄
野分は北北東へましぐら屋(や)の上の男鮭色の腿に掻き傷   (歌人)
風のちまた百のテレヴイにマラソンの獅子奮迅のずたずたの獅子   (綠色研究)

きょうは気分転換。
先日ベルトが切れてしまった40年愛用の(有)マスミ商会のバッグと「さる」を引っぱり出して記念写真をとりました。
ついでに、「さる」で思い出して、東山動物園が最近出したゴリラの写真集も注文。
そろそろ年賀状の季節です。
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マスミ商会のバッグはたぶん木でつくった芯に、表は総牛革、内側はラシャが貼ってあります。どこにも、ほころびが無いので、芯材が何か確かめたことはありません。
中は二段になっていて、下層にレンズ3本、上層にカメラ2台を入れていましたが、肩ベルトが切れてコンクリート床にバッグを落としても中身は無事でした。
買った当時も、マミヤのC330を2台とレンズ2、3本を入れていましたから、4キロ以上の重さをいつも支えてくれていました。もっと大事に使えばよかった。

うすれつつ、透かしつつ、えにしもあらず

塚本邦雄
蜉蝣(かげらふ)と燈と秋霧とうすれつつひとりなる夜夜をわが炎(も)ゆる莫(な)し   (透明文法)
鶏卵を燈(ひ)に透かしつつじりじりと生溫き生(せい)をたのしみゐるか   (装飾樂句)
夢殿に人觸れあひてはるかなるえにしもあらず晝の白萩   (睡唱群島)

生駒聖天宝山寺。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

われもまた衆愚の一人

塚本邦雄
こころなきわが繪の水にナザレ人(びと)イエス溺るる聖神無月   (されど遊星)
われもまた衆愚の一人おろおろと後退りしつつ見し曼珠沙華   (透明文法)
苦蓬酒(アブサン)に焦げしまぼろし秋の地に柩かさなり上なるランボオ   (水銀傳説)

なお宝山寺「獅子閣」。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm

日本画家の石本正さんの訃報が新聞にのっていました。わたしは、舞妓のヘアにどきどきした高校生でした。

死後はいさ

塚本邦雄
神無月深夜おもへばわが街に藍靑(らんじやう)の絹なびけるごとし   (黄金律)
死後はいさ生前くらき日常に秋いたりけり露に火の色   ( 〃 )
わが額(ぬか)にとどきてさむし菩提寺の障子繪(さうじゑ)のしろがねの月光   ( 〃 )

奈良、宝山寺「獅子閣」で。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7

雑誌「デジャ・ヴェ」 第1号(1990年7月)の森山大道と飯沢耕太郎の対談から引用します。
Dialogue 『プロヴォーク』から遠く離れて
・・・・
森山 : ・・・・『プロヴォーク』の頃だって、多木さんや中平は写真で何ができるかと考えていたと思うし、また、そういう時代だった。でも僕は、そんな意識は実際はあまりなかったし、はつきり言って、あんまり興味ないんです。自分自身に何ができるか、それ意外のことは。
飯沢  : 見事なほど断ち切ってますよね。興味のあるのは自分を通して見た世界ですか。
森山 : それしかないですよね。自分が見える世界。見たい世界。
飯沢 : 世界と自分とは不可分ですか。
森山 : そんなこと、分けられると思う?
・・・・

「やっぱり」「そうだよね」と共感を持って読めます。
森山大道が中平卓馬と対談したときはこんな事いってなかったし、むしろ真逆のことをいう中平に相槌をうっていたように感じていました。
対談というのは不思議です。3人以上だと、変な話も正論のようになってしてしまうし、2人だと、ポテンシャルの高い方の色になってしまう。司会者についても、自分色をつけて自論にまとめてしまう「評論家」もいれば、良心的に対談して相手から話を引き出す飯沢のような人もいる。
だから、対談で言っていることをそのまま信じるよりも、撮った写真を信じた方が本当なのではないかと感じたりします。

朱き絵の硝子窓 ~生駒聖天で獅子閣

塚本邦雄
月光のとどかぬ街をゆきかへるがらす賣りらのかがやける額   (歌誌『靑樫』四号 L氏のための二十行詩)
しのびよる御手と夕やみ、朱き繪の硝子窓いま色あせゆきぬ   ( 〃 )
食卓にたちこめる霧、ちちははにかくれてきみと胡桃を割るも   ( 〃 )

きのうの奈良の目的は生駒山でした。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

寶山寺獅子閣へ行きました。
明治17年落慶の木造の「客殿」で、生駒聖天を建て替えた際に出た資材が使われているそうです。
洋式の石造を木で再現していて、木製アーチなら不要のキーストーン(楔石、要石)まで木でつくられていました。
ステンドグラスをはじめ窓ガラスもほとんど建築当時のものだそうです。
柱の飾りをアーカンサスから菊に変えて、日本らしさも演出しています。

こころにもあらざるを

塚本邦雄
奈良も旱なれどつゆけき心もて過ぐる京終(きやうばて)、帶解(おびとけ)の町   (驟雨修辭学)
スープの皿に針沈みつつゆめわれら知らぬアンダルシアに月照る   (水銀傳説)
歌はこころにもあらざるをうつくしきかなあつものの中の銀杏(ぎんなん)   (不變律)

今日は奈良。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

うすき日殘る

塚本邦雄
月は東うすき日殘る神無月(かみなづき)鬼住む野には雉(きじ)の聲する (新歌枕東西百景 宮崎県東臼杵郡南郷村鬼神野)
菊合(きくあはせ)月明(あか)ければ丹精の黄花白花(きばなしろばな)色もなしとよ ( 〃  山口県豊浦郡菊川町貴飯)
砂金降る夢よりさめて消息(せうそく)すとはに生きたまへははそはの母 ( 〃  茨城県久慈郡金砂郷村千寿)

なお京都。廬山寺(ろざんじ)。
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

中平卓馬について、もう少し。
引用は、長谷川明がアサヒカメラ増刊「都市を視る」(S58(1983)年7月5日発行)に書いた森山大道論の一部です。
「・・・・(中平卓馬と森山大道の)対談の中で、中平がしきりに早死にの予感を語り、森山も死の恐怖が四六時中頭を去らないと告白しているのは、その後の二人の軌跡を考えると興味深い。中平は死にこそしなかったが予想どおり倒れ、森山は一時健康を害しながらも、写真ヘの取りくみをやめなかった。それは性格の違いもあろうが 森山の方がより写真家だったということだろうか。・・・・」

中平卓馬は、写真集『来たるべき言葉のために』や評論集『なぜ、植物図鑑か』があるとはいえ、きのうの塚本邦雄がいうところの「代表作」というべきものがありません。それをやんわりと「森山の方がより写真家だった」といっているのではないでしょうか。
新しいものを創造してこそ芸術家であり、写真家といえるのであり、ウィリアム・クラインや森山大道はまさに写真家ですが、破壊だけして創造しなかった者は写真家とはいえないでしょう。生きていさえすれば、創造の可能性もあったのですが。

群靑の十月

塚本邦雄
殺したい奴が三人ゐて愉しとりかぶと群靑の十月   (黄金律)
知己を探さむと獣園にきたりけり秋の駱駝のさびしき笑ひ   ( 〃 )
銀杏(ぎんなん)煮つつあるゆふつかたむらむらと西行傳の美辭數十行(すじふぎやう)   ( 〃 )

なお京都。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOKTON 25mm F0.95
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NOKTON 25mm F0.95
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

きのうの塚本邦雄『黄昏楽』引用のつづきです。
 「・・・・私の選択は一見刻薄をきはめる。傑作一篇のためには、他の諸作はもとより、その作者すら殺してもよい。否、むしろ作者はそれに殉じるのだ。ただ、 一篇と生涯のつりあふほどの絶唱、代表作は稀有である。にも拘らず、作家はそれを幻覚しつづけて果てるのみであらう。幻覚が現実となつた時さへ、その多くは若書の佳篇を、悪み否み、葬りたいと希ふ例も少からずあるのだ。そしてその時、作品はすでに作者の私有物ではなくなつてゐる。・・・・」

読んでいて、わたしの心に残るような代表作を残した写真家のことを、かれらの写真と一緒に思い起こしました。