8本目はシガー入門ショートストーリー編。
2006.09.05
『シガーを始めたい友へ』
君がシガーを始めたいなんて、いったいどういった心境の変化だい。
最近流行っているからか、それとも女の前で格好つけたいからじゃないのか。
図星か。
まあ、動機としては間違っちゃいないが、シガーの魅力ってのはそれだけじゃないぜ。
で、オレに何を教えて欲しいんだ。選び方とか吸い方か。
いいぜ、教えてやる。簡単だからな。
先ずはシガーを売っているショップかバーで「美味いシガーをくれ」と言え、そしたら火を点けて吸ってみろ。
それだけだ。
え、もっと丁寧に優しく詳しく教えろってか。オーケーわかったよ、そのかわり今夜の酒は君持ちだ。
最初に君に用意してもらいたいものがある、それは「時間」だ。
誰にも邪魔されない2時間強の時間を先ずは用意して欲しい。これが一番大切なこと。
シガーってのは時間を煙に変換する行為だとオレは思っている。時間にシガーをかけてそこに自分の好きなもの、酒や文学や映画を足してやると、煙+αに変換されるのさ。αが何かは自分で答えを出してくれ。
次に何か飲み物を用意する。酒でもお茶でも水でも何でもいい。今日は君に酒をごちそうになりながら楽しもう。オレはラムかスコッチを合わせるのが好きだな。
じゃあ早速シガーを吸ってみよう。
はじめにどんなシガーを選ぶか。キューバ産のプレミアムシガーを選ぼう。
プレミアムシガーっていうのはシガレットみたいに葉っぱを刻んでない、そのままの葉っぱを職人の手で一本ずつ巻いたものだ。そしてキューバは最高のタバコ産地なんだ。
吸う前のシガーをみると、ほら、片方がカットしてあって、もう片方が閉じているだろう。
この閉じている方をシガーカッターでカットして吸い口を作るんだ。ここで注意するのはカットの位置だ。
球面になっている部分のアールをほんの少し残してカットしてやるんだ。そうすると唇にあたる部分がとがらないで、口当たりが柔らかくなる。
どうだい、うまくカットできたかい。おや、切り口が少し斜めになっちゃったなあ。でも気にするな、よくあることだ。
次に点火だ。今日はマッチを使おう。ほら、普通のマッチの倍くらいあるだろう、これがシガー用のマッチだ。
先ずオレがやるから見ていてくれ。
最初は口にくわえずにシガーを手に持って、さっきカットした吸い口と反対側の断面をマッチ一本使ってよく焦すんだ。
こうやって炭化させておくと、あとでまんべんなく火がまわってくれるからね。さあ、君もやってみなよ。
途中でマッチが消えたらもう一本点けろよ、そう、あまり上の方を焦さないように断面だけうまく焦して。
ここで2本くらいマッチを消費してもいいぞ。
よし、うまく焦げたな。じゃあもう一本マッチを点けて、今度は吸い口をくわえながらゆっくりと吸い込みながら火をシガーに近付けて、おいおい、いきなりむせるなよ。
煙を肺まで吸い込んじまったな。吸い込まずに吹かすんだよ。
え、吹かせないって。そうか、君はシガレットしかやったことなかったんだな。
ちなみに君は煙で輪っかを作れるかい。出来るのか、それじゃあ簡単だよ、それが吹かしだから。
吹かしがわかったら次はペースだ。あまりプカプカするなよ。不味くなるぞ。そうだな、1〜2分に一回くらいのペースでゆっくりとたっぷり煙を口に入れるといい。口に入れた煙はしばらく口中で転がし、その味を味わう。そして口を開け、煙を自然に出してやる。漂う煙の香りを味わい、眺める。
オーケーそれで完璧だ。
一度火を点けたシガーは最後まで吸ってやってくれ。途中で止めて、後日吸っても味が落ちるだけだよ。
一本のシガーを灰にする間に味が変化していく。それもシガーの楽しみの大きな部分だからね。途中で止めると最後まで変化を楽しめないから。
おっと、灰をトントンと落としちゃあだめだよ。2センチくらいまではそのままにして、ポキっと折るんだ。
灰を残す理由?
どんなタバコも極力安定した弱い火で燃やしてやるほうが美味いんだ。灰を残しておくと燃焼が安定する。ラジエーターの役割を果たすとも言われている。
それにオレの折った灰を見てみろよ、綺麗だろう。それに比べて君の灰皿は灰が散っていて見苦しいぞ。
上手に吸えるようになってきたじゃないか。どうだ、初めてのシガーは。
まあ、答えを聞かなくても君の表情を見ていればわかるよ。
オレはシガーを吸っている時にはいつもタバコの歴史に思いを馳せるんだ。
もともとタバコは神や精霊に捧げる香りの良い煙だった。また、仲間であることを確認するための儀式にも使われていた。
それがシガーを吸っていると腑に落ちるんだ。
オレと君も今、こうやって一緒に香りの良い煙を共有している。それがなんとなく嬉しいんだよなオレは。
さあ、そろそろ終わりに近づいてきたな。
シガーをどこまで吸うかは人それぞれだけど、火傷はしないようにな。
オレは途中でリングを外して、熱くて吸えないってところまでは吸うぞ。
最後に言っておくけど、シガレットのようにもみ消すなよ。シガーは吸うのを止めれば自然に火が消える。
国によってはもみ消す行為は怒りを表すジェスチャーと受け取られるらしいぞ。
さて、酒とシガーで程よく酔えたからそろそろ帰るか。
オレが最初に話したαがなんだか解ったかい。
いや、言わなくていい。言葉にするとしらけちまうからな。
いつか、君のようにシガーを始めたいってヤツがいたら、今日のオレのように教えてやってくれよ。
じゃあな、また一緒に美味い煙を燻らせようぜ。
Go Smoking
『シガーを始めたい友へ』
君がシガーを始めたいなんて、いったいどういった心境の変化だい。
最近流行っているからか、それとも女の前で格好つけたいからじゃないのか。
図星か。
まあ、動機としては間違っちゃいないが、シガーの魅力ってのはそれだけじゃないぜ。
で、オレに何を教えて欲しいんだ。選び方とか吸い方か。
いいぜ、教えてやる。簡単だからな。
先ずはシガーを売っているショップかバーで「美味いシガーをくれ」と言え、そしたら火を点けて吸ってみろ。
それだけだ。
え、もっと丁寧に優しく詳しく教えろってか。オーケーわかったよ、そのかわり今夜の酒は君持ちだ。
最初に君に用意してもらいたいものがある、それは「時間」だ。
誰にも邪魔されない2時間強の時間を先ずは用意して欲しい。これが一番大切なこと。
シガーってのは時間を煙に変換する行為だとオレは思っている。時間にシガーをかけてそこに自分の好きなもの、酒や文学や映画を足してやると、煙+αに変換されるのさ。αが何かは自分で答えを出してくれ。
次に何か飲み物を用意する。酒でもお茶でも水でも何でもいい。今日は君に酒をごちそうになりながら楽しもう。オレはラムかスコッチを合わせるのが好きだな。
じゃあ早速シガーを吸ってみよう。
はじめにどんなシガーを選ぶか。キューバ産のプレミアムシガーを選ぼう。
プレミアムシガーっていうのはシガレットみたいに葉っぱを刻んでない、そのままの葉っぱを職人の手で一本ずつ巻いたものだ。そしてキューバは最高のタバコ産地なんだ。
吸う前のシガーをみると、ほら、片方がカットしてあって、もう片方が閉じているだろう。
この閉じている方をシガーカッターでカットして吸い口を作るんだ。ここで注意するのはカットの位置だ。
球面になっている部分のアールをほんの少し残してカットしてやるんだ。そうすると唇にあたる部分がとがらないで、口当たりが柔らかくなる。
どうだい、うまくカットできたかい。おや、切り口が少し斜めになっちゃったなあ。でも気にするな、よくあることだ。
次に点火だ。今日はマッチを使おう。ほら、普通のマッチの倍くらいあるだろう、これがシガー用のマッチだ。
先ずオレがやるから見ていてくれ。
最初は口にくわえずにシガーを手に持って、さっきカットした吸い口と反対側の断面をマッチ一本使ってよく焦すんだ。
こうやって炭化させておくと、あとでまんべんなく火がまわってくれるからね。さあ、君もやってみなよ。
途中でマッチが消えたらもう一本点けろよ、そう、あまり上の方を焦さないように断面だけうまく焦して。
ここで2本くらいマッチを消費してもいいぞ。
よし、うまく焦げたな。じゃあもう一本マッチを点けて、今度は吸い口をくわえながらゆっくりと吸い込みながら火をシガーに近付けて、おいおい、いきなりむせるなよ。
煙を肺まで吸い込んじまったな。吸い込まずに吹かすんだよ。
え、吹かせないって。そうか、君はシガレットしかやったことなかったんだな。
ちなみに君は煙で輪っかを作れるかい。出来るのか、それじゃあ簡単だよ、それが吹かしだから。
吹かしがわかったら次はペースだ。あまりプカプカするなよ。不味くなるぞ。そうだな、1〜2分に一回くらいのペースでゆっくりとたっぷり煙を口に入れるといい。口に入れた煙はしばらく口中で転がし、その味を味わう。そして口を開け、煙を自然に出してやる。漂う煙の香りを味わい、眺める。
オーケーそれで完璧だ。
一度火を点けたシガーは最後まで吸ってやってくれ。途中で止めて、後日吸っても味が落ちるだけだよ。
一本のシガーを灰にする間に味が変化していく。それもシガーの楽しみの大きな部分だからね。途中で止めると最後まで変化を楽しめないから。
おっと、灰をトントンと落としちゃあだめだよ。2センチくらいまではそのままにして、ポキっと折るんだ。
灰を残す理由?
どんなタバコも極力安定した弱い火で燃やしてやるほうが美味いんだ。灰を残しておくと燃焼が安定する。ラジエーターの役割を果たすとも言われている。
それにオレの折った灰を見てみろよ、綺麗だろう。それに比べて君の灰皿は灰が散っていて見苦しいぞ。
上手に吸えるようになってきたじゃないか。どうだ、初めてのシガーは。
まあ、答えを聞かなくても君の表情を見ていればわかるよ。
オレはシガーを吸っている時にはいつもタバコの歴史に思いを馳せるんだ。
もともとタバコは神や精霊に捧げる香りの良い煙だった。また、仲間であることを確認するための儀式にも使われていた。
それがシガーを吸っていると腑に落ちるんだ。
オレと君も今、こうやって一緒に香りの良い煙を共有している。それがなんとなく嬉しいんだよなオレは。
さあ、そろそろ終わりに近づいてきたな。
シガーをどこまで吸うかは人それぞれだけど、火傷はしないようにな。
オレは途中でリングを外して、熱くて吸えないってところまでは吸うぞ。
最後に言っておくけど、シガレットのようにもみ消すなよ。シガーは吸うのを止めれば自然に火が消える。
国によってはもみ消す行為は怒りを表すジェスチャーと受け取られるらしいぞ。
さて、酒とシガーで程よく酔えたからそろそろ帰るか。
オレが最初に話したαがなんだか解ったかい。
いや、言わなくていい。言葉にするとしらけちまうからな。
いつか、君のようにシガーを始めたいってヤツがいたら、今日のオレのように教えてやってくれよ。
じゃあな、また一緒に美味い煙を燻らせようぜ。
Go Smoking
一方、私はパイプの吸い方下手くそで、なかなか吸い切れなかったりします。悪戦苦闘しているのですが、悪いことに最近喉が痛く、胸も苦しいような気がします。お医者さんに診てもらっても禁煙しなさいと言われるような気がします。どうしたら良いのか悩んでいる今日この頃です。