イヌショウマ（犬升麻）は、キンポウゲ科サラシナショウマ属の多年草です。日本、朝鮮、中国に分布します。日本では、本州（関東以西～近畿）に分布する在来種です。名の由来は、サラシナショウマ（晒菜升麻）に似るが薬用や食用とならないために、役にたたず劣るとの意味で犬が冠せられています。中国名は、小升麻(xiǎo shēng má)。

　キンポウゲ科(Ranunculaceae Juss. (1789))は、北半球の温帯を中心に約58属約2500種が分布します。日本には、20属約100種があります。サラシナショウマ属(Cimicifuga L. ex Wernischeck (1763))は、北半球に約18種が分布します。日本には、3種3変種があります。※ルイヨウショウマ属(Actaea L. (1753)) とされる場合もあります。

　山地の林内に生えます。地下茎は横に伸び細根を多数付けます。草丈は40～80cmで、時に120cm程になります。茎には微細な柔軟毛があり、直立して上部で分枝します。根出葉は1～2回3出複葉。小葉柄は長さ4～12cm。小葉は掌状の五角形状。鋸歯があり、脈に短毛があります。長さ5～20cm、幅4～18cm、茎葉はありません。

　花期は、８月から１０月。花茎の先に穂状花序¹⁾を出します。花序長は約30cm。花柄は無柄。球形の蕾は淡紅色を帯びます。花は径約4mm。白色で先端に膨らみがある線形の雄しべが多数あります。萼は開花時に脱落します。花弁はありません。果実は袋果です。長さ5～6mm。種子は長さ約2.5mm。染色体数は、2n=16。

　類似種に、日本固有種で葉が大きい、オオバショウマ（大葉升麻）Cimicifuga japonica (Thunb.) Spreng. var. macrophylla (Koidz.) H.Hara) があります。サラシナショウマ（晒菜升麻）Cimicifuga simplex (DC.) Wormsk. ex Turcz. の花穂には柄があります。

脚注：
¹⁾穂状花序（すいじょうかじょ｜spike）：伸びた花軸に無柄や短柄の花が均等につく花序。無限花序の一つ。

Japanese common name : Inu-syouma
Cimicifuga biternata (Siebold et Zucc.) Miq.

左：数個の蕾と萼が少し開いた花　右：花柄は無柄　茎に微細な柔軟毛がある

左：上部で分枝して穂状花序を出す　右：まれに高さ120cmまで伸びる

左：全体　右：果実

根出葉は1～2回3出複葉　小葉は掌状の五角形状

イヌショウマ（犬升麻）
キンポウゲ科サラシナショウマ属
学名：Cimicifuga biternata (Siebold et Zucc.) Miq.
　synonym : Cimicifuga japonica auct. non (Thunb.) Spreng.
花期：８月～１０月　多年草　草丈：40～80(120)cm　花序長：約30cm


【学名解説】
Cimicifuga : cimix（南京虫）＋fugere（逃げる）／サラシナショウマ属
※Actaea L. (1753) : ニワトコの古ギリシャ名／ルイヨウショウマ（類葉升麻）属
biternata : bi～（接頭辞）２ + ternatus（三出の、三数の）／二回三出の
Siebold : Karl (Carl) Theodor Ernst von Siebold (1804-1885)
et : et alii（及び・命名者が２名の時など・＆(and)に同じ）
Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
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japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Spreng. : Christian Konrad Sprengel (1750-1816)

撮影地：静岡県静岡市
葵区西ヶ谷　2022.10.14, 2022.10.18, 2022.10.19
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 15 March 2025