先日紀伊国屋書店でノルシュテイン本がたくさんあるのが気持ち悪い、なんて書いたけどあれは嘘である。そんなこと、本当はどうでもいいと思っているのだ。実はあの日、オレはカレル・ゼマンの本(ASIN:4890486879)を見つけて立ち読みしているうちに、気持ち悪さを通り越して気分が悪くなったのだった。それからトイレに行ってウンコをしたのであった。
オレはカレル・ゼマンが嫌いだ。ゼマンへの烈しい敵意は我ながらちょっと異常ではないかと思うほどオレの中に燃えており、その原因も判っている。ジュール・ヴェルヌをどう捉えているか、その一点である。
そもそもは中学の頃に宮崎駿のインタビューを読んでいたら、「悪魔の発明って観たけどあれは面白いですね。アニメと実写が混在していて、ヴェルヌの挿絵の銅版画がそのまま動き出したような」 というような宮崎駿の発言があってそれを真に受けて、へえー観てみたいなあーと思ったのが始まりだった。オレは早速「悪魔の発明」のビデオを借りてきて観た(当時ゼマンのビデオなんてそれしか出てなかった)。画面の面白さは認めたものの、ものすごく不快な気分になったことを覚えている。ゼマンはヴェルヌの物語を一応なぞってみせるものの、ゼマンが物語に興味がないことは明白だった。ゼマンは銅版画を動かしてみたいだけで、物語を語ろうとか観客の感情を動かそうなどとは思っていないのである。極論すればゼマンの映画に演出はない。観客はただゼマンの画を眺めるだけだ。
そういう工芸品のようなアニメーションや映画はヨーロッパには少なくないし、それだけだったらオレもこれほどの敵意を抱きはしなかったのだ。しかしゼマンはヴェルヌに手を出し、オレの逆鱗に触れたのである。
「はい皆さんこんばんは。今日はジュール・ヴェルヌのお話ですよ。海底二万海里、知ってますか。月世界旅行、知ってますか。あのヴェルヌですよ。まあ今になってみたら、みんなバカな話ばっかりですね。マンガですね。レトロですね。懐メロですね。皆さんが真面目に読むには値しない、くっだらないお話ばっかりですね。でも今になってみると、なかなか奇妙な味わいがありますね。逆にオシャレですね。ヴェルヌは全然オシャレじゃないけど、今あえてヴェルヌに目をつけるという行為がオシャレですね。通ですね粋ですね。今日はそんな珍味を味わってくださいね。はい、それではご覧ください」
掛け値なしに、「悪魔の発明」とはそういう映画である。これで激怒するなと言われても無理だ。
この話続く。
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