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CPCレポート作成について

新医師臨床研修制度のもとで、研修医にとって必修項目のひとつとなるCPCレポートの作成について、研修病院等からお問い合わせがありますので、以下に改めてこれまでの経過を含めてご報告します。

 研修医のCPCレポート作成は、大学附属病院を含む各研修病院において病理医がその指導にあたらなければなりません。この新たな指導業務に対する病理医の対応について、日本病理学会として検討するために病理専門医制度運営委員会(当時委員長:長村義之)のもとに卒後臨床研修ワーキンググループが作られ、様々な検討を行ってきました。

 まず、CPCレポート作成指導に関する提言(平成14年10月29日)が日本病理学会の公式見解として発表され(1)学会としてはCPCレポート作成を通じて、研修医の指導に積極的に関与することを表明しました。

 次いで、CPCレポート作成に関する指針を作成してCPCの形式やCPCレポートの記載内容及び作成要領を示し、これを平成14年12月11日に提示しました(厚生労働省へ提出。(2))。この指針では、各病院で従来行われているCPCを、全ての研修医にあてはめて行うことは事実上不可能であると考えられることから"教育型CPC"として簡素な形式のCPCも可能であることを提案しています。

 CPCレポートの実際については、厚生労働省からの求めもあって、その書式のスタンダードを提示することが必要と考え、2例の具体例を作成し、平成15年1月9日に厚生労働省に提出しました。そのうち1例について。雑誌に掲載しています(3)。

 ここに提示されているCPCレポートが詳細なものであることから、各研修病院でこれを標準としたレポート作成は不可能であるとのご意見が寄せられています。この例示はある意味で"病理解剖及びCPCの意義"を本質的に考えた場合、そのありたい姿であり、ひとつの理想型を提示したものです。一方で、 CPCの形式について"教育型CPC"として簡素化したCPCを実施することが可能であるのと同様、CPCレポートの内容も簡素化することは可能と考えます。また、全ての研修医が自ら病理診断をつけることが求められている訳ではありませんので、病理医がつけた病理診断を理解できる能力の獲得が目標であるとみるべきでしょう。CPCレポートの内容は各病院の研修委員会で判断することであり、日本病理学会として最初から簡素化したものを提示することは、日本病理学会自体が"病理解剖及びCPCの意義"をまげることにも連がりかねないことを恐れ、提示したCPCレポートの具体例は、ひとつの理想的な内容での提示となったことをご理解いただきたいと思います。

 これらCPCレポート作成に関する一連の資料の提出によって、研修制度の中でこの必修項目が病理医に大きな負担を与えることを厚生労働省は認識されたと考えます。一連の資料は、「新医師臨床研修制度におけるCPCレポート作成に関する資料一覧」として(社)日本病理学会が小冊子にまとめ、配布致しました。お手元にない場合は日本病理学会事務局にお問い合わせ下さい。また病理解剖の経費については先日、厚生労働省から問いあわせがあり、日本病理学会の試算(平成4年5月1日)を提示致しました。これについても厚生労働省内で検討が行われていると考えます。

 CPCレポート作成に関する研修医への参考書が現在、各出版社から刊行の準備がなされていますので、ご紹介致します。これらはいずれも日本病理学会の基本方針に準拠していると思いますが、編者あるいは著者の独自の見解も披歴されていると考えます。

1. 雑誌「病理と臨床」短期緊急連載(田村浩一)
1) 新医師臨床研修制度におけるCPC症例呈示とレポート作成の必修化にあたって
2) CPC研修のための必要な準備 他
2. 「臨床研修必携:CPCレポート作成マニュアル」
(編集:田村浩一)、南江堂(2004年2月)
3. 「臨床医・初期研修医のための 病理検査室利用ガイド」
(編集:笹野公伸、森谷卓也、真鍋俊明)、文光堂(2004年4月1日)

 新医師臨床研修制度のもとでのCPCレポート作成の指導は病理医にとって過重な負担であるとのご意見もあると考えますが、これを機会に病理医の存在意義を社会にアピールし、各病院で常勤病理医の確保が積極的に行われ、病理医をめざす人材が増えることを切に願うものです。

 なお、本文中に引用番号のある記事は以下です。
(1)医学のあゆみ 204(12):887, 2003
(2)医学のあゆみ 204(12):888, 2003
(3)医学のあゆみ 204(12):891, 2003

  2004年11月 卒後臨床研修ワーキンググループ(委員長:井内 康輝)


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