<この記事の著者>
ヨス - Tech Team Journal
業務効率を改善し、タイムパフォーマンスを高める時間最適化の専門家。「単語登録」の便利さを伝える「単語登録エバンジェリスト」。
人口のたった10%しかいないといわれる「左利き」。
多数派である「右利き」の人にとって、左利きのスポーツ選手が活躍しているのを見ると「なんか人と違っててかっこいい」と思ってしまいますよね。
もしそう思うのであれば、わたしのように左利きになってみませんか?
実はわたし、もともと右利きでしたが18歳のときから自分の意志で左利きに矯正しはじめて30年が経ち、現在は両利きです。
みずからの意志で左利きになった人は珍しいと思うので、その体験について語らせてください。
左利きにしようと思ったきっかけは?
18歳のわたしが左利きに矯正しようと思ったのは、こんな話を聞いたことがきっかけです。
「身体の左半身は右脳で動かし、右半身は左脳で動かしている。そして右脳は芸術性や空間能力を司っている。ゆえに左利きの人には天才が多い」
アインシュタインやピカソ、エジソンやモーツァルトのような天才たちが左利きだったことは有名なので、この話を聞いたことのある人も多いと思います。デザインの学校に通っていた18歳のわたしはこの話にすごく興味をもち、この日から食事の時間は「左手でお箸をもつ練習」も兼ねるようになりました。
当然ながら最初はまったく使えません。左手でもった箸をプルプルさせながらご飯を食べていましたが、1か月もつづけたころにはかなり上手になっていました。そして現在まで約30年もの間つづけています。今気づきましたが、右手で食事していた期間を余裕で超えていますね(笑)。
とはいえ、左手で箸をもてるようになっても左利きにはなれません。それは単に「左手で箸をもてるようになっただけ」だからです。左手で文字を書く、左手で歯を磨く、左手でボールを投げるという動作それぞれになれる必要があります。
そこで、お箸の次は左手で文字を書けるようにしようと思い、アルバイト中は左手で字を書く練習の時間にしました(当時の同僚のみなさん、読みにくい字を書いてすみません)。こんな感じで、次は左手で歯磨きをする練習、次は左手でボールを投げる練習……のように、日常的に左手を使う練習を取り入れていきました。こんな生活をずっとつづけていると、だいたいのことは左手でもできるようになります。
左利きに矯正したメリット
では実際のところ、左利きに矯正してメリットはあったのでしょうか? まず、右手をケガしたときの保険が得られたのは大きなメリットでしょう。「ドアに右手の指をはさんで痛い」というレベルの小さな負傷でも、左手でお箸を使えたり、歯磨きができると便利です。タイピングをするときも、これだけ左手を使いこなせるので左手のキータッチも器用になったし、速くなったはずです。
細かい話をしていくと、ご飯を食べるときも左手に「取り箸」を、右手には「自分の箸」を同時にもち、左手で料理をとってすかさず右手の自分の箸で食べられます。麺類を撮影するときも、左手で箸をもって麺をもちあげ、右手で一眼レフをもって撮影するのも簡単です。右手にフライ返し(通常は右利き用になっている)をもち、左手で菜箸をもって料理もつくれます。
そういう姿を見られたときに「すごい! 両利きなの?」と褒められて優越感にひたれるのも大きなメリットかもしれません。
講演会で「利き手ではないほうの手で〇〇をやってみてください」と言われ、講師が「ほら、うまくいかないでしょ? これはつまり……」となにかの話につなげたい流れのときに「いや、どちらの手もうまくいくんですけど!」と心のなかで天邪鬼にもなれます(笑)。
そして、これはデータとして提示できませんし、証拠もないため断言はできませんが、クリエイティブになり、発想が豊かになったように感じます。そのおかげかどうかわかりませんが、書籍も出せたし、自分の会社ももっているしなんかいい感じになっています(すごく適当ですみません)。
左利きに矯正して意味がなかったかもしれない?
どうでしょうか。わたしの体験を聞いて「オレもやってみたいな!」と興味をもってもらえたでしょうか? そういう仲間が増えるとうれしいですが、「左利きになってもそんなに意味はないかも」と思っている自分もいます。
なぜなら、さきほど大風呂敷を広げて書いた「クリエイティブになった」というのも、思い込みの可能性があるからです。「左利きの人はクリエイティブな人が多いらしいぞ」という話を聞いていたから、プラシーボ効果でそうなった気になっているのかもしれません。
冷静に考えると、左手を使いまくって30年が経過した今も空間能力は低いままで、運転すれば車を傷つけることが多いし、極度の方向音痴も治っていなくて地図をぐるぐる回して見るし、なにも変わっていない気もしてきました。
そもそも普通の人よりもはるかに両方の手を駆使しているわたしですが、別にスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、サム・アルトマンみたいに歴史に名を残す何者かにはぜんぜんなっていませんし。
デメリットではありませんが、自分がどちらの手でやればいいのかわからず、混乱することもあります。たとえば野球のようにわたしがめったにやらないスポーツをする場合、どちらの腕のほうがバットを振りやすいのかがわからなくなりました。左でやっても右でやっても下手なのには変わりないのですが……。
あと、日によって「今日は左手が動きにくい」という日や「右手がしっくりこない」という日があるのは不思議で、いまだに謎です。
それでも左利きへの矯正をオススメする
せっかくの「オレも左手を使ってみようかな」という気持ちに水をさすことばかりいってしまってすみません(笑)。
それでも「左手を使う」という新しいスキルに挑むことは「チャレンジ精神」を育んでくれます。これはどんな仕事をしている人にとっても重要なので、意味のあることです。
また「左利きの視点」も身につき、社会がいかに右利きの人を基準につくられているかにも気づけるようになりました。マウス、キーボード、ハサミ、ナイフ、エレベーターのボタン、ドアノブを回す方向、駅の自動改札……など。こういう「視点の引き出し」が増えると、商品を開発するときやイベントを企画するときにも役に立つかもしれません。
もし左利きになることに興味がある場合、お箸の練習だけでもオススメします。なぜなら、わざわざ時間をつくらなくても、24時間のなかで毎日3回も練習するチャンスがあるからです。
ご飯を食べる時間に右手を使っていても得られるスキルはありませんが、左手を使うだけで、その時間が左手を鍛える時間になるなんてオトクだと思いませんか? きっと最初は難しいと思いますが、左手でお箸をもつことは「単なる習慣」でしかないのでだれでもマスターできますよ。
(文:ヨス)