書いてみなけりゃわからないこともある/謹賀新年 - シロクマの屑籠

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p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

書いてみなけりゃわからないこともある/謹賀新年

 

 
新年あけましておめでとうございます。このブログをいつも読んでくださる常連さん、たまに読んでくださるリピーターさん、いつもありがとうございます。
 
しかし私は、今年もブログがあまり書けないでしょう。忙しすぎるからです。
 
でもブログを長く書いていないと窒息しそうだし、書くという行為の大事な一部分が削げてしまいそうなので、2023年最初のブログ投稿は、黄金頭さんへの私信という体裁で書いた独り言です。私は自分のブログを書くということのなかで、独り言を大切にしてきましたし、これからもそうしたいです。以下、主観的な話を垂れ流すので、お役立ち記事をお探しの方は引き返してください。
 
 
「今年は小説を書く」と宣言したのに、一文字も書けませんでした。 | Books&Apps
 
独り言を書きたくなったのは、黄金頭さんがbooks&appsに寄稿した、上の文章を読んだからです。小説が書けない。それは躁鬱の波の問題か? 書きたいことの有無の問題か? 等々。結びの文章に書かれているように、それは筆者である黄金頭さんの話、黄金頭さんだけの話でした。だから黄金頭さんがなぜ小説が書けないのか、第三者である私にはわかりません。推測しても外れてしまうでしょう。
 
私も自分だけの話を書きたくなったので書くことにします。それは2021年から2022年にかけて起こってしまった、思いがけない出来事の話です。私は小説を、書いてしまいました。もちろん世間様に見せられるものではありません。世間様に見せられるようなものを目指しましたが、失敗しました。その出来事をとおしていろいろと学びましたし、また書きたいとも思っていますが年が明けたのでここに部分的に書いて、いわば"出来事として埋葬"したいのです。
 
私にも小説を書きたい性質はあり、プロットの試作は00年代の頃から数年に一度、発作のようにやっていました。とはいえ、小笠原諸島の海底噴火の大半が海面の変色で終わるように、私の小説書きたい欲はプロットの試作で終わってくれました。小説を書く甲斐性が足りなかったからでもあるし、他に書くべきこと・書きたいことがあったからでもあるし、なにより本当は書かなくても構わないことだったからだと思います。
 
ところが2021年の後半に起こった小説書きたい欲は、海面の変色で終わりませんでした。私は小説を書かずにいられなくなって書いてしまったのでした。それでご迷惑をおかけすることにもなったようにも思います。ご迷惑をおかけした方々には、ごめんなさいというほかありません。すいませんでした。
 
間違いなく、書きたいことがありました。それは、今まで書いてきた論説文形式の書籍やブログでは書けそうにないことで、小説という形式が最も似つかわしく思われました。自分なりにプロットをつくり、実際に13万字ほど書いてみました。ハイテンションの期間が重なったのも良かったのでしょう、その時点で私が表現したかったことはおおむね表現できたと思います。
 
しかしその後、親しくしていただいている方の助言などをとおして、私は自分が書いたものの限界を知りました。確かに私が表現したかったことはおおむね書けましたが、それだけだったとも言えます。私は自分が書きたかったこと・小説でなければ表現できないことを確かに表現できたのですが、それ以上のことまでは表現できませんでした。2023年から振り返ると、もっと表現したいことがたくさんあるべきで、その表現したいことが圧縮された形式になっているべきだったとも思います。技巧上の問題点もたくさん見つかりました。
 
でも、実際に書いてみなければそこらへんがわからなかったのです。小説には、論説文に比べて表現しやすいことが色々ありますが、逆に、小説には小説の難しさがあるのですね。そこのところが私には経験不足という以上に、認識不足でした。私には、小説ならではの難しさに対抗するための備えとソリューションが足りていませんでした。十分成功した小説と私が書いたものの間には、ちゃんとしたメーカーの作った赤ワインと、零細漬物業者が初めて漬けてみた赤ワインぐらいの差があるでしょう。そのことがくっきりと見えたのは、確かに収穫でした。表現技法や技巧が拙いだけでなく、想像力の密度とでもいうべき点でも水をあけられていたのです。
 
現在の私は小説づくりを停止していますが、創作の火種は残しています。しかしリトライの機会は二度と訪れないのかもしれません。歳月は人とプロットを待ってくれないので、プロットが時代遅れになるかもしれないし、私がもう書けなくなってしまうかもしれないので。だけど2021~2022年の私は小説を書いたことをとおしてノウハウが0から1になったので、悲観せずに火種を手入れしながら、機が熟すのを待ってみます。
 
そして2023年が始まりました。今の私は再び論説文を書きたい機運にあてられ、その機運じたい、小説を書いてみたおかげで膨張してきたものだと感じています。小説でなければ表現できないと思っていたことを、論説文の様式でどうにか表現できないものか。そういうことも再考しています。今年の抱負として、もっとストレートに、もっと自分の慣れた分野に挑戦し直してみたいものですね。これも、書いてみなければわからないことなので、書いてみるっきゃありません。
 
これを書き始めた時、もっと後ろ向きなことを書くつもりでいましたが、書いているうち、だんだん前向きな気持ちに変わってきました。黄金頭さん、私はつとめてみたいと思います。黄金頭さんにおかれても、良い一年となりますように。それからいつもお読みくださっている皆さん、ブログを書く頻度は少なめが続くかとは思いますが、本年も、どうかよろしくお願いいたします。