控制墊 (コンジーディエン)とは、二胡には必須の音質調整材のことです。
日本の楽器店で販売されているものは、控制綿 (コンジーミェン)という呼び名が多いようです。
この控制墊は、二胡の駒の下、弦と琴皮の間に挟みます。
控制墊は様々な材質や形のものが販売されています。自分で材料を加工して作られる方も多いようです。
厚手の皮革 羊毛の厚手のフェルト
フェルトの中にスポンジを入れたもの 鹿革の中にスポンジを入れたもの
カラフルな薄手のフェルト カシミヤ製の布
控制墊にこのように材質や形に種類があるのは、駒と同様に二胡の音質決定に深く関わっており
また二胡の弾き手一人ひとりにとっても、ベストな音質と感じるフィーリングが異なっているからです。
控制墊は雑音を軽減するためだけのものと、誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが
実は、二胡独特の美しい音を作り出すためにかなり重要な役割を果たしています。
二胡を始めた最初の頃、私自身が市販の控制墊の音質に納得がいかず、その仕組みを理解しようと
いろいろと試してみて解ったことがあります。
例えば、控制墊を外して内弦か外弦のどちらかを開放弦のままで弾くと、かなりにぎやかで金属的な音が
鳴り響きます。その時に弾いていない方の弦に左手でそっと触れると金属音が劇的になくなります。
これは一本の弦を弾いている時には、もう一方の弦も共振しているがために起こる現象です。
控制墊を駒の下に挟むことで、不必要な弦の共振を抑制する役目を果たしているのです。
また、同じように控制墊を外して内弦か外弦のどちらかを開放弦のままで弾いている時に、左手の指で
駒の周辺の皮にそっと触れると、一瞬で音がまろやかに変化します。
つまり、控制墊を外した状態の皮は、駒を中心に皮全体が目一杯振動しているために、全ての倍音成分が
前面に出てしまうことで大音量でかつ、かなり尖った音質となってしまうのですが、控制墊が皮の振動領域を
非対称形と変える役目を果たすことで、倍音成分を編集する形で音質を変化させているものと思われます。
ちなみに控制墊を外した時に、左手指で皮を強く押していくと、皮の振動そのものが抑えられすぎて
音量は小さく、音質もこもった感じのものになります。控制墊の面積や厚さが、皮や弦への圧力の大小に
関わってきます。総論としては
弦はしっかり押さえ、皮はソフトに押さえる、がキーポイントかと。
また、同じ控制墊を使っていても、置く位置によって音質は変わります。駒にくっつけるようにすると
駒の振動も若干押さえられるので非常にまろやかですが少しこもった感じの音色になり、逆にテール部分に
近づければ弦や皮への圧力が増すと同時に、皮の振動領域も対称形に近づきますのでコントラストの
はっきりとした先鋭な音色に変化します。
このあたりは二胡を弾く各人が、その人なりにこだわって追求し調整すべき領域かと思います。
私も過去に、せっせと控制墊を自作して、いろいろと試行錯誤してみました。
私は自分の控制墊の色を真紅と決めていますので、並べると真っ赤っかで目がチカチカしてしまいますが
いろいろな大きさ、厚さ、材質を組み合わせて試してみました。おかげで裁縫がとても上達しました。(笑)
現在、私の好みに最も合っている自家製の控制墊の仕様は、大きさ:30mmスクゥエアまたはラウンド
厚さ:8.5〜9.0mm です。厚さは駒の高さに依存します。ちなみに私の駒は9.2〜9.7mmです。
私の使用している材料と製作過程をご紹介しておきたいと思います。何かのご参考になれば幸いです。
外側の材料その1 : ハイミロン(表ナイロン100%裏ナイロン80%キュプラ20%)
これは裁断しても、端がほつれない生地ですので大変便利です。
外側の材料その2 : ちりめん。見栄えがなかなかいいので。(笑)
中身の材料その1 : セーム革。カメラのレンズなどを拭くための製品です。弦をしっかり包み込みます。
中身の材料その2 : メイクアップ用のスポンジ。きめ細かく柔らかいので皮にソフトタッチです。
以上の材料を裁断します。セーム革は5枚使用します。(外側ハイミロンの例です)
スポンジとセーム革は中に入れた時、ばらけないように糸でセンターをかがっておきます。
あとは座布団を作る要領で、布を裏返した状態で周囲を2/3ほど縫っていき、表裏ひっくり返して
中身を入れた後、残りの周囲を内側にコの字縫いなどで縫い合わせて閉じれば完成です。
二胡に挟むときは、セーム革が弦、スポンジが皮側に来るようにします。
ラウンド型 (ちりめん)
スクゥエア型 (ハイミロン)
二胡の美しい音色は、二胡本体だけではなく、琴弓や松脂、駒や控制墊など多くのものがコラボして
紡ぎだされているものだと、最近つくづくと感じます。まあ、弾き手の腕が一番大事ですけれどね…。(笑)