からすが夢を見るころに : 歌

からすが夢を見るころに

人間嫌いの隠遁者‘‘OTTO翁‘‘が、メキシコ西海岸シナロア州の海辺の町で、真夜中に一人で書いているブログ

自由の旅人

DSC_1289
朝の散歩。 午前6時半、日の出時のマサトランの空。 いわし雲がきれい。

DSC_1293
さて、夜明けの海岸遊歩道を行く、この御方。

DSC_1286
一輪車を押していますから、きっと大道芸人の方ですね。

メキシコでは、よく町の交差点で大道芸人を見かけます。 信号待ちの間に交差点で芸をして、ドライバーから小銭をもらう。 口にガソリンを含んで火を噴いたり、お手玉やとんぼ返りや曲乗りとか。 学芸会レベルから絶対この人プロだわってハイレベルまでいらっしゃいます。 街角の風物として、物乞いも含めてこういう人たちを排除せず、むしろ好意的に社会に受け入れられていると思います。 そんなメキシコが僕は好きです。 

DSC_1285
この方、年齢は僕と同じ60代かな。 子供のように小柄で華奢です。 軽業師なのかもしれません。

軽やかな足取り、しゃんと伸びた背筋。 まるで自由という輝く衣をまとったよう。 芸に使う小道具が詰まった荷物を背負い、こうして町から町を旅してるんでしょう。 きっとたくさんの思いや悲しみも背負って。

まさに現代の吟遊詩人だね。 どうか行方に倖ありますように。

お聴きください。 みなみらんぼう、サーカス。   



ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

春の雲

DSC_1247
南シナロアは今日もいい天気。 今年はちっとも寒さが来ず、もう毎日初夏の陽気です。 このまま大っ嫌いなくそ暑い夏になるつもりだな、く~。

DSC_1169
真昼の空にはクラゲ雲。 この雲、冬から春の上空に寒気があって天気が安定してるときに出るみたい。 いつも風のない穏やかな昼間です。 母雲の中でできた氷晶が重力でさらさらと落ちて、クラゲの足になってるんだと思う。

DSC_1171
午後には高積雲が夢のようにきれいな彩雲になった。 きっとこれ、天の羽衣だね。

さて、ガサで殺戮が始って4か月半。 毎日映像を見ています。 こうなることは端から分かっていても、力と欲目しか止められないと分っていても、一縷の望みも絶たれ、人類という生き物がいかに邪悪なことが日々証明されていくのが怖いです。 そう、人類ってずっと昔からこんな殺戮破壊を繰り返し、今もあちこちで起こっていて、これからも繰り返す。 僕たちだってきれいごとを言ってても、立場が変わればきっとそうするに違いないよね。 もう本当のことが分かってしまった今、心を痛めることすら偽善なのかもしれないね。 そしてね、弾雨のガサの空にも太陽が輝き、きれいな雲が浮かんでるんだよね。 是非もない、何もかも。 人の世界も自然もなんて非情なんだろう。

ちょっとどうしたらいいのか分からないんだけど、僕が固く心に決めているのは、いつも弱い者たちの、虐げられた者たちの側にいること。 そしてその時が来たら潔く受け入れ、たくさん苦しんで逝くこと。 これは父さん母さんや先に行った愛ネコたちとの約束だから。

子供のころからずっと気にしてる歌、フランシーヌの場合.。 ぜひ僕と一緒に聴いてください。 何度も頬を濡らして聴いた歌。 この由紀さおりのがいちばん好きです。



ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

目を覚ませ

1698979141138
大奮発、一年ぶりにテニスシューズを買いました。 メーカーはG1です。 ええ? 聞いたことないメーカーですか? まあね、これ、知る人ぞ知るなんですよ。 軽くて空気クッションもあって履き心地は極めて良いです。 

1698979068950
良いですな、ワシのマークのHecho en Mexico(Made in Mexico)です。

1698979141112
デザインもスッキリ、なかなか垢抜けてますよね。 値段はね、240ペソ(約2000円)でした。

ん?、なんか興ざめのご様子ですね。 ではこうしましょう。 娘よ、ハサミと紙を持ってきてくれるかな? あいよ、パピ! はい、ちょきちょき。

1698979068929
これで大満足ですかね?

僕はブランドにはこだわりません。 というか、アンチです。 そういうの好きじゃないんですよね。 まあ、資本力にものを言わせてブランドを築き、高価で販売し資金をかき集めて投資し技術を高め社会貢献しさらにブランド名を高め...、そういうビジネスモデルは完全には否定しませんが僕にはバブルに見えるし欺瞞でもありフェアじゃないと感じます。 そうです、OTTO翁は反資本主義者なんです。

ブランドものじゃなくても適正価格でブランド物より良い物はたくさんあります。 そして物の価値を決めるのはブランドでもなく値段でもない、各々の消費者、僕たち自身です。 資本主義に絡めとられ騙されてはいけませんぞ。 目を覚ませ、心の中の旅人よ...。

懐かしい歌をどうぞ。 堀内孝雄、青春まよい人。



ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

雨音を聞きながら

1698120394858
今回のハリケーンはマサトランの西海上200kmあたりから時計回りにぐるりと迂回して過ぎて行った。 3日ほど大荒れで、飛ばされそうな突風とともに大粒の雨がゴオっと降ったり弱まったりを繰り返す。 雲の様子もかなり凄かった。 正面の▽形の雲はゆらゆら揺れながら下がってきて竜巻になりそうだったけど、数分で左の黒雲の中に消えてしまった。 さっきここが突風に襲われたとき、あんな雲が真上に来てたのかもしれないね。 

1698120339943
断続的にかなりの雨量で、我が家は玄関など一部浸水しちゃいました。 

だけども雨は嫌いじゃない。 一人の部屋でざあざあぶりの雨音に包まれてると、深い森にいるみたい。 雨粒は、雲の器からこぼれる銀の鈴。 あんなに暗い雲の中で、透きとおった水がうまれるなんて、なんだかとっても不思議だね。

昨日も今日も、大量虐殺の映像が次々とアップされてます。 皆さん、見ていますか? 買い物客が集まるスーパーが爆撃され血まみれの人たちが運び出される映像とか。 今まで知らんぷりしててこうなったのならば、せめて今は目を背けずにしっかり見ておこうと、そしてこの人たちのことを忘れないでいようと思うのですが、あまりの酷さに心が折れそうです。 そうしてね、ふつふつと憎しみの感情が沸いてくる。 なんてことしやがる、この連中のほうこそ皆殺しにしてやりたいなんて。

いかんよね。 僕も壊れかけてるのかもしれません。 そして僕自身の狂気に戸惑ったりして。 きっと狂気は誰にでも存在し、こうして憎しみは増幅し、人は壊れ、社会も壊れ、世界が壊れるんだろうね。

でもね、12年前に雲の上に行った母さんが言ったんだよね、焼夷弾の中を逃げ惑った話をした後で。

”明日の命も知れん毎日やったけど、青春は青春やったで、防空壕の中でもよう笑うて怒られたわ、恋もしたで、みんなきれいな青年やった、誰も帰って来んかったけどな”。

母さんは18歳のとき、焼け野原の神戸で敗戦を迎えた人だった。

人生ってどうにも変えられない運命もあるけど、誰もがいつも、最後の時まで、元気に前を向いて過ごせることを願うのみです。 僕たちだって。

大好きなイーグルスの歌をお届けします。 Peacefull Easy Feeling(幸せいっぱい気楽な気分)。 

 

I like the way your sparkling earrings lay きらきら光るイヤリングが素敵だよ
Against your skin, it's so brown 日に焼けた君の肌にぴったりさ
And I wanna sleep with you in the desert tonight 今夜は砂漠で君と一緒に眠りたいね
With a billion stars all around 億万の星々に包まれて
'Cause I gotta peaceful easy feeling そうさ幸せで気楽な気持ちになっちゃう
And I know you won't let me down 君と楽しい時が過ごせるからね
'Cause I'm already standing on the ground そして僕はもう立派な男なんだよ
And I found out a long time ago ずっと前に分かったんだよ
What a woman can do to soul 男の心に女が何をできるかって
Ah, but she can't take you anyway ああでも君は俺を骨抜きにはできないよ
You don't already know how to go どうやるのか君はまだ知らないのさ
And I gotta peaceful easy feeling そうさ幸せで気楽な気持ちになっちゃう
And I know you won't let me down 君と楽しい時が過ごせるからさ
'Cause I'm already standing on the ground そして僕はもう立派な男なんだよ
I get this feeling I may know you 思ってるんだけどさ 君のことを
As a lover and a friend 恋人なのかな、友達なのかな
But this voice keeps whispering でもささやき続けているんだ
In my other ear, tells me もう片方の耳にはね
I may never see you again 君とはもう会わないかもしれないよって

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ジム・クロウチの歌ーII オペレーター

ハリケーンが通過中で、今日は雨ふり日曜日。 一日中、降り続く。 音楽聴いて過ごそうかな。

先日記事にしたジム・クロウチって日本ではあんまり知られていないみたいね。 僕もアメリカに来るまで全く知らなかった。 きっと日本の皆さんも好きになると思う。 みんなで聴いたほうが楽しいもんね。 というわけで、もう一曲、大好きなジム・クロウチの歌、行きます。

この歌も1987年ごろ、ロサンゼルスにいたときよく聞いた。 1973年にリリースされて、そしてジム・クロウチが飛行機事故で死んでから14年たったころだね。 恋人と親友に裏切られ立ち直れない男が、今は遠い町に住む2人に強がりの一つでも言ってやろうと消えかけた番号を頼りに電話しようとするが、優しいオペレーターに愚痴を聞いてもらううちに電話をやめてしまうという歌。 アメリカの公衆電話って、電話番号が分からないときは指の爪みたいに小さい10セント硬貨(ダイムと言います)を入れてオペレーター(いつも女性)に探してもらうこともできたんだよね。 きっとオペレーターが唯一の話を聞いてくれる人だったんだろうね。

女々しい歌って言えばそうだけど、気持ちは分かるよね。 人生いろいろあって、誰にも辛くて悲しくて孤独な時が訪れる。 何度もね。 そのつど苦しみもがいて引きずって、それでも決して癒えないけれど、時が包んでくれるのを待つしかないんだよね。 歌詞もだけど、何より歌声とメロディとギターの伴奏が好きです。 

それでは、ジム・クロウチ、オペレーター(Operater)。 



Operator, oh, could you help me place this call? オペレーターさん、この電話をつなぐの手伝ってくれますか?
See the number on the matchbook is old and faded マッチ箱に書いた番号が古くて消えてるんです
She's living in L.A. その娘はロサンゼルスに住んでます
With my best old ex-friend, Ray 僕の元親友のレイと
Guy, she said she knew well, and sometimes hated あの子が、よく知ってて時に憎らしいと言ってた野郎と
<But isn't that the way they say it goes? でもそういうことってよくあるって言うよね。
Well, let's forget all that いやいや、何でもないです
And give me the number if you can find it じゃあもし番号が分かったらくださいね。
So, I can call just to tell 'em I'm fine そしたら奴らに僕は大丈夫だって言うから
And to show I've overcome the blow それから僕はあのダメージを乗り越えたって分からせてやるから
I've learned to take it well それを前向きに考えられるようになったって
I only wish my words could just convince myself いやただ僕のその言葉が僕自身を納得させられたらいいと願ってるんだけど
That it just wasn't real あれは現実じゃなかったんだって
But that's not the way it feels> でもね、そんなふうには思えないんだけどね
Operator, oh, could you help me place this call? オペレーターさん、この電話をつなぐの、手伝ってくれますか?
'Cause I can't read the number that you just gave me 今いただいたばかりの番号、読めないんです
There's something in my eyes 何かが僕の目の中にあるんです
You know it happens every time いや、いつもそうなっちゃうんですよ
I think about a love that I thought would save me 僕を助けてくれると信じてた恋人のことを思うとね

<繰り返し>
Operator, oh, let's forget about this call オペレーターさん、いやもうこの電話のことは忘れてください
There's no one there I really wanted to talk to 僕が本当に話したかった人っていないんです
Thank you for your time お時間をとっていただいてありがとう
Ah, you've been so much more than kind いやぁ、親切以上にしていただいちゃって
You can keep the dime 10セント硬貨は取ってくださいね

<繰り返し>

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ジム・クロウチの歌 I Got a Name

ジム・クロウチ(Jim Croce)は、アメリカの歌手です。 1972年からヒット曲を連発し、売れ始めてほんの1年半ほどで、1973年9月に飛行機事故で死んだ。

僕がロサンゼルスに渡ったのが1984年だからたぶん1987年あたりだと思うんだけど、何故かやたらとラジオでジム・クロウチの歌がかかった。 何かのリバイバルだったのかもしれない。 僕の職場の従業員は全員メキシコをはじめとする(不法)移民だったが、一日中作業現場に流れるラテン系ラジオ局でもよく流れて、I got a nameはとてもいい歌だなと思った。 同僚たちも好きだった。

だけども僕は歌を聞き取れるほどの英語力はなかったし、同僚たちも英語はさっぱり。 ジム・クロウチが誰なのか、なにを歌ってるのか誰も分からない。 今みたいに歌詞をささっとネットで調べられる時代じゃなかったからね。 それでもみんなで鼻歌や口笛を合わせたりしていた。

そうしてずっと後になって、この歌の歌詞を知った。 このNameは単にに名前ではなくて、うんと強い意味があるんだよね。 確かなアイデンティティや意思や使命や魂を持った個って言うか。 例えば勘定に入れられずに無視された奴がなめんなよって怒りを込めて、Hey, I have a nameって言ったり。 ほら、Black lives matterのMatter みたいな。 あの頃僕もいろいろあって異国で独りぼっちだった時なんかに、この歌にずいぶん勇気づけられた。

そして今ね、誰にも顧みられずにゴミのように殺戮されてる人たちのニュースを見てて、関係あるようなないようななんだけど、この歌が思い浮かんだのね。 この人たちにも名前があり生まれてきた意味があり、夢や希望や愛や感情をもって日々を生きてきた個々なのになんということをって。 明日は我が身かもしれない僕たちだって、誰にだって、殺戮を指揮してる連中だってね。 何と言ったらいいか、ちょっともう感情のコントロールができないんですが、今日はここまでで。 どうか聴いてください。 ジム・クロウチ、I Got a Name.   
 


Like the pine trees linin' the windin' road 曲がりくねった道路に並ぶ松の木のように
I've got a name, I've got a name 僕は確かな誰かなんだ 僕は確かな誰かなんだ
Like the singin' bird and the croakin' toad 歌い続ける鳥のように ケロケロ鳴き続けるカエルのように
I've got a name, I've got a name 僕は確かな誰かなんだ 僕は確かな誰かなんだ
And I carry it with me like my daddy did 僕はその使命を抱き続けている 父がそうだったように
But I'm livin' the dream that he kept hid でも僕は父が秘め続けたその夢を 実際に生きているんだよ
Movin' me down the highway ハイウエイを走ってる
Rollin' me down the highway ハイウエイをぶっ転がしてる
Movin' ahead so life won't pass me by 人生が過ぎ去ってしまわないように進み続けるのさ
Like the north wind whistlin' down the sky 空の彼方でひゅうひゅう鳴る北風のように
I've got a song, I've got a song 僕には歌がある 僕には歌がある
Like the whippoorwill and the baby's cry 森の精霊やその赤ん坊たちが泣き叫ぶように
I've got a song, I've got a song 僕は歌うんだ 僕は歌うんだ
And I carry it with me and I sing it loud 僕はその歌を抱き続け 高らかに歌うのさ
If it gets me nowhere, I'll go there proud それが何もならないことであろうと 胸を張ってね。
Movin' me down the highway ハイウエイを走ってる
Rollin' me down the highway ハイウエイをぶっ転がしてる
Movin' ahead so life won't pass me by 人生が僕を過ぎ去ってしまわないように進み続けるのさ
And I'm gonna go there free そして僕はそこに行くよ、自由にね
Like the fool I am and I'll always be 僕はバカだよね、そしてこれからもずっとそうさ
I've got a dream, I've got a dream 僕は夢みるんだ 僕は夢みるんだ
They can change their minds but they can't change me あんたがたは心変わりをするよね でも俺を変えることはできないぜ
I've got a dream, I've got a dream 僕は夢を追い続ける 僕は夢を追い続ける
I know I could share it if you want me to 僕は夢を君と分かち合えるよ 君がそう僕に望むなら
If you're going my way, I'll go with you 君が僕の道を行くのなら 僕は君と一緒に行くよ
Movin' me down the highway ハイウエイを走ってる
Rollin' me down the highway ハイウエイをぶっ転がしてる
Movin' ahead so life won't pass me by 人生が僕を過ぎ去ってしまわないように進み続けるのさ

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ケンタッキーの青い月(Blue Moon of Kentucky)

1695957647048
今宵は満月。 日本では中秋の名月ですよね。 皆様、お月見、なさいましたか?

こちら南シナロアはまだまだ雨期から抜けきってなくて雲が多い。 湿度が高いから雲間から見えるのは黄色い優しいお月様です。 次の満月にはきっと秋が来ていて、青いお月様がみられるでしょう。

今日は小さな思い出話をしましょうかね。

僕は1984年にアメリカに行き、1987年に結婚した。 4年後に離婚しちゃったんだけどね。 相手はメキシコ系アメリカ人だったが家族にはイタリア系をはじめ白人が多かった。 それで時々、僕が苦手なファミリーのパーティに連れて行かれたが、みんな英語のネイティブだった。

パーティではみんなで合唱することが多かった。 でも僕は面と向かった会話はOKだけど電話はちょっと不安だな程度の英語力だったから、たいていは歌えない。 歌って聞き取りも歌うのも、ほんと難しいんだよね。 今でも英語もスペイン語も歌はだめ。 40年近く外国に住んでるのにね。

さて、その日のパーティは満月の夜のテラスで、Blue Moon of Kentuckyの合唱が始まった。 手拍子を合わせて何度も繰り返し歌う。 何度か聞いたことがある歌だったけど、最初の一節以外、僕は全く歌えない。 居心地悪いなぁと口をパクパクさせていたら、隣に座っていたマークっていう奴が紙ナプキンにさらさらっと歌詞を書いて渡してくれたんだな。

マークのことは以前に旧ブログで書いてるから、ぜひお読みください。 

マークは僕の妻の姉婿だった。 僕と同年代の白人で、発達障害+対人恐怖症でほとんど誰とも話さない人だったが僕とは妙にウマが合ったんだな。

僕はマークからもらった歌詞を見ながら歌おうとしたけど、舌が回りきらなくて追いつけず、やっぱりちっとも歌えない。 そんな僕を見て、マークはあはははと大笑いしやがった。 僕は怒り顔でマークの胸を小突く。 マークは長い腕を広げて僕を抱きしめる。 僕らは小さな兄弟のように笑いながらじゃれあった。

パーティの人たちがみんな僕らを見ている。 あとで知ったんだけど、マークは妻や兄弟とですらめったに笑わないらしくて、あんな風に笑って誰かとじゃれあうのを見て驚いたらしい。

マークとはそんなわずかな関わりが数回あっただけで、僕の離婚を契機に会うこともなくなった。 でも今頃になって、時々マークのことを思い出すんよだな。

そうそう、彼は土日には公園のフリーマーケットでワゴンを引いてポップコーンを売ってたんだけど、僕が買いに行ったとき、マークはたくさんのお客に囲まれて軽口をたたきながらポップコーンをカップで掬っていた。 あれれ、対人恐怖症って芝居だったのかな?

どうしたのマーク、えらくご機嫌じゃない? 僕がちょっとからかってやったらマークははにかんで、いや、こういうやることや話すがこと分かってると大丈夫なんだけど、そうじゃない雑談パーティみたいなのはだめなんだと言った。 今になって思い出して、ハッとする。 実は僕も大いにそういうところがあるんだよね。 今思えばマークと僕は似た者同士で、もう少しで良い友達かそれ以上になれたのかもしれないなと思う。

それでは僕の思い出の歌、ケンタッキーの青い月、お聴きください。 遠い日に別れた恋人を思う歌。 アメリカではポピュラーなカントリーソングで、誰でも知っている歌です。 今なら僕、ほぼ歌えます。 だってあれから一人で、マークのメモを見て練習したからね。


Blue moon of Kentucky, keep on shining ケンタッキーの青いお月様 輝き続けてよね
Shine on the one that's gone and proved untrue 僕から去っていった 不実なあの娘の上に
Blue moon of Kentucky, keep on shining ケンタッキーの青いお月様 輝き続けてよね
Shine on the one that's gone and left me blue 僕から去っていき 僕に悲しみを残していったあの娘の上に
It was on one moonlit night, stars shining bright それはある月の夜 星たちもきらきら輝いていて
And they hispered on high, your love said goodbye 高みからささやいたのさ お前の恋人はさよならを言ったよって
Blue moon of Kentucky, keep on shining ケンタッキーの青いお月様 輝き続けてよね
Shine on the one that's gone and left me blue 僕から去っていき 僕に悲しみを残して行ったあの娘の上に

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

マサトラン北方海岸地方探索ーV 寂しいところ

IMG_20230325_151436
バラス・デ・ピアストラ(Barras de Piaxtla)の丘は荒涼たるところでした。

IMG_20230325_145528
荒波寄せる岩場が続き。

IMG_20230325_145313
景勝地ですが、誰も来ないところ。

IMG_20230325_145137_1
乾ききった岩山、枯れた灌木とサボテン。

IMG_20230325_145000
荒野にぽつんと白い十字架がありました。 足元には墓標があり、名前と生没年が刻まれています。 男性の名前で、13年前に24歳で死んだ。 

1680934257793
十字架のそばに、ひっそりと咲いていた花。

1680934257810
ほかには一輪の花もなかった。 枯れた灌木とサボテンばかり。

IMG_20230325_143510
なんて寂しいところなんでしょう。

IMG_20230325_150501_1
この若者は望み通り、海を臨む荒野に眠ったんだろうね。

びゅうびゅう吹く潮風に吹かれて荒野を歩きながら、ぼくはずっと駅馬車の口笛を吹いていました。 そしてね、寂しい荒野に葬った愛ネコたちを思い出していました。

駅馬車は日本語ではあの村~この町を~っていう明るい歌詞なんですが、元歌はアメリカのカウボーイソングでして、荒野で死んだ若者のそれは悲しい歌です。

愛ネコたち、寂しい思いをさせてるなぁ。 でももうすぐ僕も行くから。 きっと僕も、お前たちがいる荒野に眠るから。

来週は愛ネコたちに会いにって、ハーモニカを吹こうかな。

よろしかったら聴いてください。 寂しい荒野に僕を埋めないで(駅馬車の元歌)。
    

ねえこの寂しい荒野に僕を埋めないで 夕暮れ時の血に染まった大地に
横たわった若者の青ざめた唇からの 低く悲しいその言葉
 
ねえ僕を埋めないでね そこで彼の声は尽き 僕らはその今際の祈りを聞かず
たった6フィートx3フィートの狭い墓穴 彼をその寂しい荒野に埋めた

ねえこの寂しい荒野に僕を埋めないで コヨーテが吠え風が吹き渡る荒野
そこには僕を慰める霊もない ねえだから僕をこの寂しい荒野に埋めないで

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

マリセラの歌 貴方の鉄の女

OTTO翁は1984年にアメリカに行って、9年間ロサンゼルスに住んで、それからメキシコに行きました。 仕事は食品工場、農園、水産加工業、青果卸売、スーパーマーケットなどやりました。 日系の会社が多かったけど現場の仕事ばかりで、アメリカ西海岸では現場仕事はメキシコ人がほとんどなのね。 知らなんだ~。 行ってみないと分からないことってたくさんあります。

仕事場では一日中、結構な音量でメキシコ移民向けのラジオ局のスペイン語の曲がかかっていた。 メキシコの歌謡曲で僕が全然知らないのばかり。 うむ、ここにも知らない世界があるなぁと。 でも一日中聞いてると耳に馴染んできて、気になる歌も出てくる。 同僚たちも僕に、この歌良いだろ、この歌手どう思う、なんて写真を見せに来たり。 だんだん歌と顔が一致するようになる。 メキシコの歌謡曲ってラテンのノリだけど少しまったりしたところもあって、日本のポップやフォーク、演歌にすら通じるところがあるな、なんて思ったっけ。

あの頃の女性シンガーには、ユリ、ルセロ、タリア、フェイ、パウリナ・ルビオ、アレハンドラ・グスマン、グロリア・トレビとかアイドル系から色気派や歌唱力派までいろいろいて(知らないのばかりでしょう?)、けっこう良いな、なんて。 その中でも特に好きだったのがマリセラ(Marisela)です。 その辺に普通にいそうなちょっとクラマーできれいなお姉さんって感じなんですが、その歌声がね、伸びやかで可愛くて何とも素敵なこと。 メキシコやアメリカ西海岸ではかなり売れてたけど、日本では全く知られてないと思います。

では、お聴きください。 僕のお気に入りのマリセラの歌、貴方の鉄の女(Tu Dama de Hierro)。 この場合の鉄の女の意味は、感情のないどうにでもなる女、マテリアルガールみたいな感じだと思います。 いけない恋に堕ちてしまった女の子の歌です。



Mas de una vez he intentado olvidarte Arranacarte para siempre de mi
何度も貴方を忘れようとしたわ 貴方を永遠に私から遠ざけて
Y siempre llego a la misma conclusion Tendria que arrancarme el corazon
だけどいつも同じことになっちゃうの 私の心が引き裂かれてしまう
Mas de una vez digo ala diablo contigo Si por un tiempo no se nada de ti
何度も貴方にこの悪魔めって言って そして長い間貴方に合わなかったりしても
Mas de repente te apareces y todo Cambia mi mente y feliz Y como siempre
でも突然貴方が現れてお終い 私は心変わりして嬉しくなっちゃう、いつも通りに
Sigo siendo tu esclava Sigo siendo tu dama de hierro
貴方の奴隷であり続け 貴方の鉄の女であり続け
La que nunca te dira que no La que siempre tiene lista un beso por que te quiero
絶対にイヤって言わない女よ いつでもキスしていいの だって貴方が好きだから
Sigo siendo tu sombra sigo Siendo tu niña mimada
貴方の影であり続け 貴方の愛玩少女であり続け
Aunque a veces te quiera matar Reconozco que sin ti no vivo sin ti me muero
貴方を時には殺したいと思う でも分かってる 貴方なしだと生きられない 死んじゃうって 
Mas de una vez he maldecido tu nombre Y luego a dios perdoname
何度も貴方の存在を呪い あとで神様許してって言うの
Cuando te siento estremecer en mis brazos Cuando estallo ante tu desnudes Y como siempre
私の腕の中で震えてる貴方を感じるとき 裸の貴方に私が爆発するとき そしていつも通りに…

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ロス・ティグレス・デル・ノルテの歌 黒い扉(La Pierta Negra)

ロス・ティグレス・デル・ノルテ(Los Tigres del Norte, 北部の虎たちと言う意味)はシナロア州北部のモコリト(Mocorito)という小さな村出身の4人の青年たちが1968年に結成し現在に至る、ラテンアメリカでは誰でも知っている超有名なバンダです。 メキシコ北部の音楽、ノルテーニョの大御所ですね。

ぼくがこのバンダを知ったのは、ロサンゼルスに住んでいたとき、1986年だったと思う。 同僚のメキシコ人たちが、日曜日にチャレアダがあるんだ、行こうって。 チャレアダ(Charreada)というのはメキシコスタイルのロデオのことです。

連れて行かれたのはダウンタウンから20分ほどの牧場で、馬の曲乗りや投げ縄のショーがあり、仔牛を捕まえて縛る競技や荒馬乗り、ブルライド、直線200mほどの競馬、どれも結構凄かった。 それからお姉さんたちの曲乗りもあってあとで観客席に回ってきたり、お婆ちゃんに扮したコメディアンと闘牛士のコメディがあったり。 楽しい一日だった。

会場にはタコスやカルニータスや豚の尻尾揚げの屋台の煙が漂い、メキシコ音楽が響き、いるのはもうメキシコ人ばかりで凄い賑わい。 まるで別世界に来たよう。 そしてね、普段は大人しくてオドオドしてるメキシコ人の同僚たちが、本当に楽しそうにリラックスして大騒ぎしてるのね。 きっと束の間、故郷に帰った気分だったんだろうな。

そこで生演奏してたのが、ロス・ティグレス・デル・ノルテだったのね。 乾いた軽いリズムと合間のアコーディオンがとても素敵に思ったんだな。 いつかきっと、メキシコに行こうともね。

では、お聴きください。 ロス・ティグレス・デル・ノルテ、黒い扉。 映像も良いです。 古き良きメキシコだね。    



Ya esta cerrada con tres candados y remachada la puerta negra
3つの錠が閉まってて鋲付けまでされてるんだ、その黒い扉はよ

porque tus padres están celosos y tienen miedo que yo te quiera.
あんたのご両親は嫉妬深くて、あんたが俺を好きになるのが怖いんだ

Han de pensar que estando encerrada vas a dejar pronto de quererme
こうして閉じ込めておいたら、そのうち俺のことを諦めるだろうって思ってやがる

pero la puerta ni cien candados van a poder a mi detenerme.
だけども扉だろうと100の錠だろうと、俺様を止めることは出来ないぜ

Pero la puerta no es la culpable que tu por dentro estés llorando
だけど扉のせいじゃないぜ、中であんたが泣いてるのはな

tu a mi me quieres y yo te quiero la puerta negra sale sobrando
あんたは俺が好きで俺はあんたが好きならば、黒い扉はそこに置いてけぼりさ

Diles por ahi a tu padre y madre que si ellos nunca el amor gozaron
言ってやりなよ、父さんと母さんに もしあんた方の愛が成就しなくて

y si se amaban también la puerta la puerta negra se las cerraron.
愛し合ってたのに扉があって その黒い扉が閉められてたとしたら

Pero la puerta no es la culpable que tu por dentro estés llorando
だけど扉のせいじゃないぜ、中であんたが泣いてるのはな

tu a mi me quieres y yo te quiero la puerta negra sale sobrando.
あんたは俺が好きで俺はあんたが好きならば、黒い扉はそこに置いてけぼりさ


もう一曲、どうぞ。 親分の親分。 こちらはマフィアを歌ったナルココリード(Narcocorrido)です。

 


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

プロフィール

OTTO翁

1959年生まれ。 農学修士。 社会不適合者です。 子供のころから一人で自然の中にいるのが好きで、人付き合いが苦手でした。 25歳で日本を逃げだし、まずアメリカに10年、それからメキシコで27年になります。 メキシコ人の妻と4人の子供たちがいます。 今はメキシコ西海岸の海辺の町で、誰とも付き合わず超庶民の隠遁ひきこもり生活をしています。 貧乏暮しだし、悲しい事や辛いこともありますけど、気楽で自由でもあります。 それは、もし僕が日本に居続けていたなら絶対に手に入らなかったものと思います。 日々の出来事や感じたことを書いていきますので、どうかよろしくお願いします。

ギャラリー
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • 味噌開き
  • メキシコ式サツマイモの食べ方
最新コメント
PVアクセスランキング にほんブログ村
からすが夢を見るころに - にほんブログ村
  • ライブドアブログ