【50代の大人旅】秋風感じる日帰り旅へ! 奈良国立博物館「第76回 正倉院展」と、なら仏像館の見どころをお届け! ―エディター・あさこの奈良めぐり③―
宝島社出身・奈良在住の編集者、ふなつあさこです。東京よりもまだ暑さが残る奈良では、例年より少し遅れて彼岸花やコスモスが咲いていますが、毎年10月下旬から11月上旬の恒例行事・奈良国立博物館の正倉院展が近づいてきました。街中でもポスターやチラシを見かけるようになり、今年もこの季節がきたなぁ、という気がします。
およそ1300年前から大切に大切に守り抜かれてきた正倉院宝物は、時空を超えたアートであり、当時の出来事や技術力の高さを実際に目にすることができるタイムカプセル。毎年行われていますが、もちろん毎年展示内容が替わり、第76回を数える今回も初出陳の作品があります。ぜひ晩秋の奈良で、古代の美を堪能してみては。
これ、本当に奈良時代のもの!? 守り継がれてきた天平文化の粋にうっとり
もとは東大寺の倉だった正倉院には、奈良時代中期・天平時代の宝物が整理済みのものだけで約9000点が守り継がれており、種類も多岐にわたります。毎年秋には勅封(天皇陛下の命により封印すること)が解かれて宝物の点検が行われ、これに合わせて奈良国立博物館で「正倉院展」が開催されています。今回の正倉院展は2024年10月26日(土)〜11月11日(月)の開催で、会期中は無休。
今回の正倉院展の見どころとなる、出陳宝物をピックアップしてご紹介します。
[中倉]a.黄瑠璃魚形(きるりのうおがた)、b.浅緑瑠璃魚形(あさみどりるりのうおがた)、c.深緑瑠璃魚形(ふかみどりるりのうおがた)、d.碧瑠璃魚形(へきるりのうおがた)
なんとも可愛らしい、魚形のガラス製の飾り。魚の口もとに開いている穴に紐を通し、腰から下げて使ったと考えられています。現代でガラスというとそれほど高価なイメージはないかもしれませんが、当時は超貴重品。これを身につけた人も高貴な身分だったはず。
[南倉]e.黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)
今年の正倉院展のメインビジュアルにも使われているこちらの宝物は、七宝細工の鏡。宝相華(ほうそうげ)という、仏教にまつわる装飾品によく使われる想像上の植物柄がモチーフ。インパクトのあるデザインは、今見ても新鮮な美しさ。
[北倉]f.紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)
夫である聖武天皇の遺品を、光明皇后が東大寺大仏に献納した品々のうちのひとつで、こちらは肘おき。実際に体重をかけてもしっかり支えてくれそうな構造にもなっているそうで、再現レプリカも同時に展示される予定。
[南倉]g.伎楽面 酔胡従(ぎがくめん すいこじゅう)
飛鳥時代に大陸から伝わった仮面劇「伎楽(ぎがく)」で使う仮面。伎楽は東大寺大仏開眼会で華々しく上演されたものの、平安時代以降、あまり演じられなくなっていった謎多き古代演劇ですが、面は14種類23面(複数人で演じる役もあるため)が1セットだったようです。酔胡従は酔っ払いの役だと考えてられていて、当時どんな演技をしていたのか想像するのも楽しいですね。
[北倉]h.花氈(かせん)
花文様のフェルトの敷物。天平時代には、日本から遣唐使が派遣されるなど大陸との交流が盛んで、正倉院宝物にはシルクロードを経て伝わったものやデザインも数多く見受けられます。この宝物も、中央アジアの遊牧民に由来する技法で作られているそう。
[南倉]i.緑地彩絵箱(みどりじさいえのはこ)
仏さまに捧げる品々を納めたと考えられている花文様の箱。そのデザインセンスと、目にも鮮やかな色合いには驚くばかり。一見するとベッコウ細工に見えるフチや、透かし彫りに見える脚はよくよく見ると、絵! 希少な素材や製作が難しい部品を手描きでカバーする創意工夫にも驚かされます。
正倉院宝物 写真提供:宮内庁正倉院事務所
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第76回 正倉院展
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