情報商材屋の巣窟であったnoteがついに規約を変更し、情報商材屋の締め出しに走った。
非常に残念なお知らせなのですが、一部の行儀の悪い人が一線を超えすぎたので、多少規約が厳しくなります。98%の人には影響はないかと思います。
— 深津 貴之 / THE GUILD / note (@fladdict) March 10, 2020
「売上を公開して購入を煽る行為の禁止」
「未成年者による有料記事販売の制限(売る側になるのに保護者の許可がいる)」https://t.co/ZVyq5Pf1NP
情報商材屋と手を取り合って、「女に貢がせて合鍵を手に入れる方法」だったり、「お金を稼いでいるフリをしてお金を稼ぐ方法」などの販売を放置していたあのnoteがついに、動き出したのだ。
彗星のように現れた「noteで1000万稼ぐ中学生」の存在が、眠れる獅子を起こしてしまったようだ。
心当たりある人…きこえていますか…今… あなたの…心に…直接… 呼びかけています… 3/17日までに…悔い改めるのです…3/17日までに…大事なことなので…2度言いました…本当にいい記事は…煽らなくても売れる…そのことを…知るのです… https://t.co/ZVyq5Pf1NP
— 深津 貴之 / THE GUILD / note (@fladdict) March 11, 2020
note関連で高い発言力を持っている深津さんは、自身のブログで規約変更した際の心境を語っている。
note規約変更への個人的な雑感 - 深津 貴之 (fladdict)
全体的に書かれている内容については共感しているが、一部の記述に違和感を覚えた。
「危なっかしさ」といってもいい。
まだ激オコする段階ではありませんが、ドラゴンボールで例えると「このフリーザは変身をするたびにパワーがはるかに増す・・・その変身をあと2回もオレは残している・・・その意味がわかるな?」というあたりです。
みなさま、チキンレースはしかけないでください。ギリギリをせめても、メアドや振込口座やIPアドレスはサービス側に把握されています。ボーダーを越えれば容赦無く記事が消され、アカウントが消され、悪質度によってはポリスへGOとなるだけです。
行儀の悪いユーザーは、全体としてはごくごく一部ですが、拡大前に処置すべくこのような運びになりました。そういう人のためにnoteの運用が厳しくなったのは悲しいことです。
「振込口座はサービス側に把握されているから抵抗しても無駄」みたいな内容がしれっと書かれているが、これは言い換えると
「俺はお前の個人情報を持っている。メアドも振込口座もわかっている。
アカウント名を変えて何か新しく商売を始めたとしても、振込口座の個人名からお前のことだってわかるんだからな」
という意味にも取れる。曲解しすぎだろうか。
そりゃあサービス側が個人情報を握っているのはみんなわかってる。
それでも多くのプラットフォーマーが
「個人情報は個人が特定されない形で管理しています。私たちは個人情報を悪用しませんよ」
と散々強調するのは、プライバシーに配慮してのことだ。
もちろん、悪質なユーザーを特定し排除するためには、個人情報を利用しなければならない場合もあると思う。
だからといってプラットフォーマー側が
「あと2回もオレは変身を残している・・・その意味がわかるな?」
みたいに、フリーザ様のように高圧的に、ユーザーを脅すように
「俺はお前の個人情報を知っている。規約を破ったらどうなるかわかるな?」
と堂々と発信するのはいかがなものだろうか。
もう少し慎重に、そして神妙に、控えめな文書で伝えるべき内容ではないか。
プラットフォーマーが個人情報を持っているのは俺たちだってわかってる。
でもそれを口に出したら戦争だろうがっ!
「一部の行儀の悪いユーザー」を牽制したい気持ちはわかる。
しかし一部の行儀の悪いユーザーを倒すために、足元がお留守になっているのではなかろうか。
「“残り98%のまともなユーザー”が深津さんの発言をどう感じるか」にも目を向けてみてほしい。
少なくとも僕は、こうやってnoteの運用規約に批判的な記事を書いたら、noteの中の人に個人情報を調べられてしまうんじゃないかとささやかな恐怖を感じている。
振込口座が把握されているということは、住所や個人名もわかっているということだからだ。
情報商材屋への嫌悪感が強すぎて、プラットフォーマーへの違和感がスルーされている
イケハヤさん、キメラゴンさん、その周辺にいる情報商材屋たちの「煽り商法」はたしかに悪質だ。
情弱から大金を巻き上げて「ツイッターで稼いでます」とアピールして、そんな金持ち生活に憧れたワナビーからさらに金を巻き上げている。
行儀の悪いユーザーを取り締まるのはサービスの健全化のために必要な措置だろう。
noteの規約変更自体には何の問題ない。
株式会社ピースオブケイクの上場のためには悪質な情報商材屋を排除しなければならない事情もあるのだろう。
情報商材にアフィリエイト機能を付与して情弱を狩りまくった「Brain騒動」がnoteの方向転換に影響した可能性もある。
Brainの失敗を見て学んだnoteの決断は概ね正しい。
だからといって深津さんみたいな、noteの意思決定に大きな影響力を持ち、「サービスの看板」みたいな立場の人が、ユーザーに対し、
「俺たちはお前らの個人情報を握っている」
と宣言する態度が正しいとは言えないだろう。
深津さんのnoteへの貢献は大きい。
彼はnoteの成長に大きく寄与した偉大な存在だとは思うが、ピースオブケイク社内でガバナンスが効かない状態になってはいないかと心配である。
情報商材屋が信者に囲まれて裸の王様になるように、会社の発展に大きく貢献した人物も、誰からも批判されずにいつの間にか裸の王様になっていることもある。
時には社内で、お互いに批判的(かつ建設的)な意見をぶつけ合ってみるプロセスも必要なのではなかろうか。
サービスが大きく飛躍し、伸びている今だからこそ、noteは「プラットフォーマーの勝者の奢り」が出ていないか振り返ってみてほしい。
「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」
というのが、株式会社ピースオブケイクのミッションだ。
だれもが創作をはじめられる場所を創ったnoteは偉大なサービスだ。
だからこそ、不用意な発言で98%のユーザーに不安を与えないようにしてほしい。
2%の悪質なユーザーは粛々と成敗すればいい。
でも、「俺たちには成敗できる権力があるんだぜ」とプラットフォーマー側に見せつけられると、一般ユーザーとしたは不快な気分になってしまうものだ。
その不快感はnoteにとってもユーザーにとっても不要なものだろう。
力を持ったプラットフォーマーには誰も文句を言えなくなる
motoさんを「ロックじゃない」と批判したあのイケハヤさんでさえも、noteの運営に対して「君たちはロックじゃない」と批判はできなかった。
それはひとえにnoteに財布を握られているからで、たとえ「脱社畜界の王様」であっても圧倒的な支配力を持つプラットフォーマーには牙を向けられないのだ。
会社に支配されるなんて真っ平ごめんだ!とネットの中心でヘイトを叫び、上司を選べない会社なんてクソだ!とツバを吐き散らしたインフルエンサーであってもプラットフォームは選べないし、規約に支配されてしまうのだ。
この構図はアフィリエイターがGoogleに逆らえないのと同じであり、Amazonや楽天を利用して商売しているメーカーがAmazonを切れない構図にも似ている。
多くのユーザーを獲得したプラットフォーマーは力を持つ。
noteは「クリエイターが課金できるプラットフォーム」を独占している。
そして中にいる人間に適切な自制心がないと、手に入れた強大な力に溺れて暴走してしまう、ということでもある。
かつてGoogleが「Don't Be Evil(邪悪になるな)」と自分たちを律し続けてきた意味を考えてほしい。
今のnoteは邪悪どころかフリーザじゃないか。
ミイラ取りがミイラになっているようにも見える。
ペナルティ猶予期間みたいのを置いても、対応しないのは、舐めてんのか、反省しないのか、認知不協和で逃避してるのか、それとも情報収集力か理解力が足りないのか…慈悲の心をかける意味はあるのか…と感じている。この辺考えすぎると、少年漫画で闇落ちする味方の思考っぽくなるので要注意だな
— 深津 貴之 / THE GUILD / note (@fladdict) March 18, 2020
普通に考えて、「舐めてんのか」なんて発言はプラットフォーマーがツイッターに書くべき内容ではない。
もしはてなブログの開発者が
「凍結を猶予してやってるのにすぐに対応しないユーザーは俺たちを舐めてるだろ。慈悲をかけてやる意味はねえな...」
なんてツイッターに書き込んでいたら、ユーザーは離れるはずだ。
「こいつらヤバいな。近寄らんとこ...WordPressにするわ...」
とさっさと切り替えるだろう。
サービス提供者(=note)が傲慢になっても許されていて、かつユーザーから何も言及されないのは、noteが既にプラットフォーマーとして強い力を持っているからである。
noteの最大の武器はシンプルなユーザーインターフェースでもないし、拡散されやすい仕組みでもない。
多数のユーザーのクレジットカードを握っている点にある。
普段なら真っ先に文句を言うような「声の大きい人たち」はnoteに「財布」を握られているため、表立って文句は言えない。
文句を言って凍結させられたら困るからだ。
力を持ったプラットフォーマーは、自制心がないと暴走する。
権力の行使に快感を覚え始めたら危険だ。
規約による制裁は淡々と執行するべきだ。
第三者に見せしめるのではなく、サービスの改善にのみ権利を行使するのがウェブサービスの提供者の姿勢として正しいと僕は思う。
noteとBrain
Googleが検索を独占しているように、noteは情報商材の課金市場を独占している。
本来であれば、ユーザーに別のサービスの選択肢があればnoteの暴走を防ぐこともできるのだが、noteのようなサービスは生まれなさそうだ。
「情報商材を販売できる」名目で生まれた「Brain」というサービスは情報商材屋のオモチャになって終わってしまった。
情報商材屋は金に正直だ。
稼げそうなプラットフォームを荒らすだけ荒らして、過疎化したらもう一切触れない。
応援しない。サービスを育てようともしない。
金をむしり取ったらイナゴのように去っていく。
残ったのは稲を食い尽くされたサービスの残骸だけだった。
深津さんの言葉を借りれば、Brainは
「行儀の悪い2%のためのサービスを作って、まともな98%に相手にされないサービスになった」
ということだろう。
個人的にはここではてなブログに頑張ってほしいものだが、どうもnoteの独走は止まりそうにない。
プラットフォーマーは“Winner-take-all”が基本だ。
実際noteはよいサービスだし、使いやすいし、理念も素晴らしい。
既に多くのユーザーを獲得していて、法人の利用も増えている。
皆に愛され、存在感を発揮しているサービスなのだ。
だからこそ。
中の人は慎重に、その発言一つひとつがnote全体のイメージにも影響していることに自覚的であってほしい。