KOIN塾 自分を成長させるコーチングパートナーの作り方 開催レポート(第1回) | KOIN(Kyoto Open Innovation Network)

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KOIN塾 自分を成長させるコーチングパートナーの作り方 開催レポート(第1回)

WRITER : 井上 良⼦

3年目となる本年度第1KOIN塾は、「自分を成長させるコーチングパートナーの作り方」というテーマで819日(土)にスタートしました。今回のテーマは、一般社団法人my turnがこれまでKOINで開催してきた相談会の中で一番多かった悩みを受けて設定されたそう。自分の描いているビジョンや未来に向けた思いを相談できる相手や仲間との関係性をどうつくったらよいのでしょうか?

そんなテーマのもと、講師のトミーさんこと福冨さん(一般社団法人my turn理事)による講義から講座は始まりました。講義のトピックは「マーケットシフト(社会変化)」です。

 マーケットという言葉から経済用語としての「市場の変化」の話をイメージされる方も多いと思いますが、トミーさんの切り口は「個人組織社会」という多角的なもの。個人を取り巻く組織や社会の変化がめまぐるしい時代、「先がわからないからこそ自分の視点が大事」だと言います。何をどう捉えるか次第でアウトプットも変わってくる。そして「とくに一次情報(自分の感じること)が大事」だと20数名の参加者に語りかけます。

まず〈個人〉の切り口では、米国ギャラップ社によるグローバル職場環境調査において仕事に対する熱意が日本では5%と低いことが指摘されました。勤勉と言われることの多い日本と世界平均(23%)との差に驚かされます。近年、企業では「従業員エンゲージメント(個人と組織の成長の方向性が連動し、互いに貢献しあえる関係)」が重視されていますが、その比率も世界全体の中で最低水準だそう。これらの数値の低さは、「企業が人に投資せず、個人も学ばない」ことが原因と言われているとのこと。業務の中でトレーニングを行うOJT以外の人材投資、仕事以外の社外での学びが圧倒的に少ない日本。トミーさんは「活き生きするためにも好奇心と学びが大切」だと強調していました。

次に〈組織〉の切り口からは、近年発展がめざましいAIが社会や働き方にもたらす影響をどのように捉えるべきか、海外での事例や動向をもとに考えていきました。アメリカでは、20235月の時点で人員削減された約80,000人のうち約4,000人がAIの影響によるものというデータがあるそうです。その事実だけ見ると、AIが従来の仕事を奪ってしまう側面に目がいきますが、サンフランシスコにあるAI開発の中心地には、AI関連の起業家11名が同じ施設に住み、切磋琢磨しながら技術開発を行う働き方も生まれているとのこと。会社という組織ではなく、共通点をもつメンバーがコミュニティを形成し、プロジェクトベースで協働する形態は、(一社)my turnの働き方とも共通しています。

「働き方や組織の変化は新たなチャンスでもある。」とトミーさんは前向きに捉えながら、AIが仕事を担う分、人間の感性やコミュニケーション能力を活かす方向に重点が置かれること、余暇が増えるため遊びの時間も仕事と掛け合わせて新しい価値を生み出す可能性もあることなど、好奇心をもってお話しされていたのが印象的でした。

最後に取り上げられた〈社会〉の切り口では、資本の変化に着目してこれからの社会では、目に見えないもの、お金だけでは手に入れられない「無形資本」が価値をもってくるため人の経験やスキル、人間性などの「人的資本」や「自然資本」、コミュニティといった「社会・関係資本」、そして、「地域資本(地域の歴史や文化など)」「自然資本」などをどう捉えていくかが鍵になるそうです。

実際にトミーさんも、地域であまり活用されてこなかった公園をフィールドに、多様な人が混ざり合う新しい場をつくり始め、また、最近新しく立ち上げた会社は、あえて経験や専門性・価値観の異なる人と創業したとのこと。共感ベースのコミュニティは時として閉鎖的になりがちです。無形資本を組み合わせた事例を通して、居心地のよい場所や慣れた領域等を越境しながらどこに着眼し、自分自身の資本もどのように見立てていくかによって行動が変わってくることを学びました。

大きな歴史の転換点を考えても、2020年から人間中心から生命中心の時代にシフトしたと言われており、働き方、生き方に加えて、暮らし方も含めた価値観の変容が起きている現在、どこで誰とどう過ごすか、自分がもっている資本や能力をどう掛け合わせていくのかその「すべては自分で選べる。well-being にとっても自分が選択していけることは鍵」だというトミーさんの言葉に、参加者の皆さんも大きく頷いていました。

講義の最後にトミーさんから投げかけられたのは、これからの生成AI時代に大切なことは何かという問いでした。AI時代が本格的に到来したとき、3つの視点でのシフト【①個人の「マインド」、②組織での「リレーション」、そして③社会レベルでの「ソーシャル」シフト】が必要とした上で、どんな一次情報(体験、体感、感情)を持っているか、それをどう編集・体系化していくかが鍵になると、あっという間の講義パートが締め括られました。

そのあとは講義を受けてどのように感じたか、「ワクワクしたこと」と逆に「不安に感じたこと」を参加者3〜4名のグループによる対話の時間。昨年のKOIN塾から参加しているメンバーもいれば、今回が初めての方もいた中、どのグループでも盛り上がり、会場は初回とは思えない熱気に包まれていきました。

 「マイナスをゼロにするところに時間をかけるより、プラスをつくっていく方にエネルギーをかけたい」「AIは便利と怖さが表裏一体。人間が利用されるおそれもある中、どのように活用していくかが課題では」「まさに対話によって自分だけでは分からない各自の多様性を感じた」といった感想が飛び交い、会場の熱気が冷めやらないまま講座は終了。

 例年以上に様々なバックグラウンドをもつ参加メンバーとスタートしたKOIN塾。今年度のゴールである「わたしは、本当は何がしたいのか?」という大きな問いと向き合いながら、半年かけて深掘りしていきます。次回もどうぞお楽しみに!!

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