多様な進路を語る会 ~起業・就活・休学・院進・・・少しだけ多くを経験した学生は今後どう生きるのか~|3/23 KOIN BAR開催レポート
KOINの受付スタッフに学生たちがいるのはご存知だろうか?
多くが株式会社Katharsisに所属する、起業、就活、休学など、様々なキャリア経験を持つ学生たちである。
今回はそんな株式会社Katharsisのメンバー4人が、今後のキャリア人生についてディスカッションを行った。
1人目は株式会社Katharsis代表取締役・京大企業部部長の山本周雅さん。彼は京都大学総合人間学部の4回生であり、現在休学中である。京都大学に進学する際、1年の浪人を経験し、その間キャリアについて考えるようになったという。大学に入学した後はビジネスに興味をもち、今はベージックインカムについて卒論を書いている。
2人目は株式会社Katharsis副代表の静木銀蔵さん。彼も京都大学総合人間学部の4回生で、来年度から京都大学大学院、人間・環境学研究科に進学予定だ。大学に入学し、初めて経験したアルバイトを通して、労働とは何か?を考えるようになったのだという。
3人目は株式会社Katharsis共同経営者の中尾真徳さん。静木さんと同じで、春から京大大学院、人間・環境学研究科に進学予定の、京都大学総合人間学部4回生だ。高校時代の留学経験を経て、キャリアを広く見れるようになったのだという。表現の世界に興味を持ち、音楽活動をしたりと幅広い視野を持っている。
4人目は京都大学大学院M1の梁雨文さん。上海出身の留学生である彼女は、大学院では疫学の研究をしている。京大3回生の時、リーダーシップを育成するプログラムに参加。その際、社会起業家に興味を持ち、それが夢になったのだという。来年からは東京のコンサルティング会社に就職予定。
以上多種多様な経歴を持つ4名が、熱く語り合ったこのイベントは、各々が自分の考えをぶつけ合い、理解しあう非常に有意義なものとなった。
◯今後どのようなキャリアを選択していく予定ですか?
最初のテーマでは4人が2つに分かれる形となった。
将来がはっきりと決まっている、静木さんと梁さん。まだ未定の山本さんと中尾さん。
静木さんと梁さんは院進後就職予定であるが、中尾さんは修士に進学するか悩んでいるのだという。一方山本さんは休学を続けるか、それとも就職か迷っている。
4人のキャリア選択はどのような考えから来ているのか、次のテーマで深掘りしていく。
◯キャリア選択において重視していることはなんですか?
山本さんは重視していることを3つあげた。
1つ目は表現者の主体であること。支える側ではなく、主体、つまりはトップになることで社会を変えていきたいという。
2つ目は“山”を見極めてから登るということ。山、つまりは目指すべき地点をしっかり見極めたいということである。社会に出て忙しい日々を送りながら“山”を探すことができるほど自分は器用ではない、と山本さんは言う。学生のうちにゆっくりと登るべき“山”を見つけたい…それが彼の休学という選択をした理由でもあるようだ。
3つ目はリスクの高い方を選択すること。若い今だからこそできることをする。それはつまり、社会人になってからだとできないことをする、ということである。実際にリスクの高いことであっても、学生の間はそもそも背負うものもなくリスクが少ない。ならば今のうちに行動すべきだという。
次に梁さんが口を開いた。梁さんは解決すべき社会問題をゆっくり見つけていくために就職するのだという。そして、将来的には社会的に大きなインパクトを残したいそうだ。そのために、まずコンサルタントとして会社を裏から支え、そこから社会にインパクトを残すのだという。
学生の間に目指すべきところを探す山本さんと、探すために就職する梁さん。対極的な考え方ではあるが、どちらの考えも自己分析の結果から出たものであり、自身の正しい選択と言えるだろう。
静木さんは仕事を手段として捉えている。誰かと美味しいものを食べたり、旅行に行ったり…幸せなプライベートを大切にするための手段として働くのだそうだ。
重視すべきはジェネラリスト的な力が身に付くこととプライベート。広範囲に視野を広げることが大事だという。
そんな中尾さんは真っ向から反対の意見をぶつけた。
中尾さんは仕事は目的であるという。孔子の「好きなことを仕事にすれば、 一生働かなくてすむ。」という言葉を例に挙げ、重視すべきは効率ではなく価値だと語った。人生の中の仕事の部分をお金に換金するだけではもったいないという考えだ。
それに対して静木さんは、自身の母親から「好きなことを仕事にしない方がいい。」と言われたことから、「好きなことを仕事にすると、人間関係と両立できない」と考える。静木さんの中ではプライベートが第一優先事項であり、仕事は手段でも良いのだという。
また、仕事に没頭する幸せとプライベートを大切にする幸せの二つがあると静木さんは言う。
「どちらが秀でているわけでもないし、手段だからと諦めているわけでもないです。あくまで選択としてプライベートを選んでいるだけ。それに、自分が全くしたくない仕事につくとも思いません。ある程度の選択ができるキャリアは設計してきたつもりですし、その中でしたいことは追求します。ただ、その優先順位が一位になることはありません。」
そんな静木さんの話を聞いて梁さんは、好きなことを仕事にできる人はラッキーだと言う。ベストは好きなこととできることの間くらいを仕事にすべきだが、好きなことを学生の間に見つけられる人は少数派である。ならばせめて、嫌いなことを見つけてそれを仕事にしないようにすべきだと、このテーマを締め括った。
◯キャリアにおいて達成したいことはありますか?
梁さんの進路は留学する前は親が全て決めていたのだそう。しかし大学からは自分でキャリア選択をしたいと考え、日本へ留学。コロナの影響で中国の就職が厳しくなり、東京での就職に決めたそうだ。
就職先である、コンサルは1~100をお客さんのために作り出す仕事だと梁さんは言う。しかし、最終的に達成したいこととして、自分も0~1を生み出す立場(起業家)になりたいそうだ。そのためにコンサルを通して、どんな1を生み出したいかを探求したいのだと言う。
すると山本さんは「0~1を生み出す作業を30、40代の時にできるのかが疑問です。学生時代に思っていたことを実現しようと思ってもその年齢になるとプライベートを優先してしまうのではないでしょうか。」と質問を投げかけた。
それに対し静木さんは、一度きりの人生で自分の成したいことを学生の間に明確にしてしまうのは好みではないと言う。今、それを明確にしてしまうと視野が広がらない。いつか出会う成したいことのために今は準備をしておくべきだ、と語った。
◯今後の人生で大切にしたいものはなんですか?
山本さんは人生をかけてやりたいこととしてベーシックインカムをあげた。
お金が発生することが価値なのではなく、お金だけでは計れないこと=表現することが価値なのであると山本さんは考える。
「人々は創造性を発揮できる時に幸福を感じます。ベーシックインカムを通して、お金の制約を受けずに、人々が創造性を発揮できる社会を作っていきたい。そのために起業し、自分でベーシックインカムを作れるような仕組みを構築したいと思います。」
中尾さんは夢を追い続けること。夢がまだ明確ではなくても、何かを追いかけることが大切だと言う。
静木さんは様々な選択肢を見て迷い、苦しむ時間が大切だと言う。夢を見つけてそれを追いかけることは楽なことだと、静木さんは考える。
梁さんは社会にインパクトを与えたい、と言う気持ちを忘れないこと。
学生時代に感じた気持ちを忘れないことは重要であると思う。
ここで、ここまで4人のディスカッションを聞いてきた他のカタルシスメンバーから質問がでた。
◯将来が決まっていない人に対して何かメッセージはありますか?
梁さん「悩んでいるのであれば、嫌いではない職業について、その間に本当にやりたいことを見つけてみてください。」
中尾さん「待っていても何も見つからないので、とりあえず自己分析をしてみて、その答えの赴くままに行動してみてください。もし違っていたらそれを繰り返すことで何か見えてきますよ。」
静木さん「悩みながらいろんなことに挑戦してみてください。自分の考えに没入しすぎず、視野を広げるといいですよ。」
山本さん「自分のメンター、つまり背中を押してくれる人を見つけてください。最終的には自分で意思決定すべきですが、初めは頼ってみてください。」
◯大学生活を通してやってよかったことはありますか?
梁さんは「学生という身分をフルで活用すること」。インターンシップ等を通して社会人の方から学ぶこともできるし、そもそも学生は社会全体から応援されることが多い。そういった立場を有意義に活用することで、多くを学ぶことができるだろう。
静木さんは「色々な人と話すこと」だと言う。様々な人の考え方に触れる機会を作ることが大切で、その機会は学生の方が恵まれているのだそうだ。学生の間に多くの考え方に触れ、視野を広げることは将来にプラスになるに違いない。
中尾さんは「人生の幅を広げること」だと言う。自分の心の小さな変化を大切にし、その変化をリスクの少ない学生のうちに追いかけるべきだと中尾さんは考える。そうするときっと、見えてくる自分の道があるだろう。
山本さんは「日常にある『なんとなく』を深掘りすること」。出来事を感情で処理するのではなく、理論的に考えることが大切で、それを踏まえて自分の中で何が正しいか、美しいかを考えて磨くべきだと言う。また、「環境を変える」と言う発想を持つのも大事で、なんでも自分のせいにしないことが重要なのだそうだ。
一時間半にわたって行われたKOINBAR。
「梁さんのように、リスクを恐れず夢を追求するのはかっこいいと思います。静木さんの考え方は、夢がまだ明確でない場合、一つの考え方としてアリなのかな、と思う。」と中尾さん。「生き方に優劣などない。みんな色々な考え方を持って、選択して生きている。」と静木さん。特に意見が真っ向から対立していた中尾さんと静木さんだが、違う考え方に触れるからこそ視野が広がり、自分の考え方に確信が持てることもあるだろう。
「色々な考え方があるからKatharsisは上手くいっているのだと思います。ところで、今後Katharsisはどうなっていくんですか?」と梁さん。突然の質問に慌てる山本さんに笑いが起こる。
「今後のKatharsisは自分が個人的にインスパイアするのではなくて、自然にインスパイアされ、それが続いていくシステムを構築したいと思います。この4人のメンバーは信じていることがあるから、周りに流されることはない。自分で何か行動を起こせるメンバーだと思っています。」と山本さん。
語り合える、と言うことは各々が自身の意思を強く持っていることの証明にもなる。
様々なキャリアを選択し、今後の人生を迷いながらもまっすぐ歩んでいくこの学生4人を見て、何かを考えるきっかけになれば幸いだ。