中学生同士の性交について、自己の性的好奇心を満たす目的で被告から準強姦行為をされ,その結果妊娠,出産を余儀なくされたと主張する原告が,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権として,慰謝料等合計2236万1594円等の支払を求めた事案(請求棄却 東京地裁h30.1.30) - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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中学生同士の性交について、自己の性的好奇心を満たす目的で被告から準強姦行為をされ,その結果妊娠,出産を余儀なくされたと主張する原告が,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権として,慰謝料等合計2236万1594円等の支払を求めた事案(請求棄却 東京地裁h30.1.30)

 結論は「本件性交渉は準強姦行為であって,これが原告の権利を侵害する不法行為であることを認めるに足りる証拠はないというべきである。本件性交渉は不法行為とはいえない。」ということでした。

裁判年月日 平成30年 1月30日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2018WLJPCA01308014
原告 
X 
同訴訟代理人弁護士 
大野康博 
被告 
Y 
法定代理人親権者 
A 
同訴訟代理人弁護士 
加藤俊子 

主文

 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
 
 
事実及び理由

第1 請求
 被告は,原告に対し,2236万1594円及びこれに対する平成26年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,被告から準強姦行為をされ,その結果妊娠,出産を余儀なくされたと主張する原告が,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権として,慰謝料等合計2236万1594円及びこれに対する不法行為の日よりも後の日である平成26年7月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 1 前提事実((4)につき当裁判所に顕著な事実,その余につき当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
  (1) 当事者等
 原告は,平成11年○月○日生まれの女性であり,被告は,同年○月○日生まれの男性であり,ともに同じ中学校に通っていた。(甲12,13)
  (2) 原告被告間の性交渉
 原告と被告は,中学2年生であった平成25年7月21日,B(以下「B」という。)やC(以下「C」という。)等の友人らとともに,a公園において飲酒をしながら花火を行うなどした。原告と被告は,他の友人らが帰宅した後,同所において性交渉を持った(以下「本件性交渉」という。)。
  (3) 原告による子の出産と被告による認知等
   ア 原告は,平成26年○月○日,その子であるD(以下「D」という。)を出産した。原告と被告は,Dの父親を確定するためのDNA鑑定を行ったところ,同年7月17日,Dは被告の子であることが判明した。そこで,原告と被告は,同月18日,それぞれの両親を交えて話合いを行った(以下「本件会談」という。)。(甲1,2,5の1)
   イ 被告は,平成27年6月22日,Dの認知をした。また,原告と被告との間で,平成28年2月9日,被告が,原告に対し,①平成28年2月からDが満20歳に達する日の属する月までDの養育費として月額3万円を,②平成28年1月までのDの未払養育費として66万円を,③Dの出産費用の一部として16万円を,それぞれ支払う旨の調停が成立した(東京家庭裁判所平成27年(家イ)第7323号養育費調停事件)。(甲4)
  (4) 被告による消滅時効の援用
 被告は,原告に対し,平成29年2月28日の第1回口頭弁論期日において,原告の被告に対する本件性交渉に係る不法行為に基づく損害賠償請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
 2 争点及びこれに対する当事者の主張
  (1) 本件性交渉は被告の不法行為といえるか(争点(1))
 (原告の主張)
 被告は,原告が飲酒により前後不覚であることに乗じて,原告の同意なしに本件性交渉を行ったものであるから,本件性交渉は準強姦行為であって不法行為である。このことは,①一緒に遊んでいた友人らが帰宅した時点では原告は酔って動けない状態であったところ,被告は原告を送っていくと申し出て,原告とあえて二人きりになったこと,②被告は,本件性交渉の直後,原告に対し,原告が酔って記憶を無くしていた様子である旨を認めるメールを送り,また,本件会談の際,本件性交渉が準強姦行為であることを認めていたこと,③被告は女友達に性行為を求める言動を繰り返すような,性欲を満たす行動にちゅうちょなく出る人物であるところ,被告は原告に好意を抱いていた一方で,原告は被告に嫌悪感を抱いていたこと等から明らかである。
 (被告の主張)
 本件性交渉は原告の同意に基づくものであって不法行為とはいえない。原告は,飲酒をしていたものの意識が無くなっていたわけではなく,芝生に座って携帯電話を操作するなどしていたし,本件性交渉は,むしろ原告が性体験のなかった被告を主導して行われた。現に,原告は,本件性交渉が終わった後,自ら身支度を整えた上で,自転車に乗って帰宅している。
 被告が本件性交渉の直後に原告に対してメールを送ったのは,初めての性体験に興奮していただけであるし,原告からも,本件性交渉が準強姦行為であるなどと被告を非難するような返信はなかった。被告は,本件会談においても,本件性交渉が不適切であったことや被告が父親として責任を取るべきであることを認めたにすぎず,本件性交渉が準強姦行為に当たることを認めたわけではない。また,被告の女友達に対する行動も,異性に興味を持つ青少年期の男子として通常の行動にすぎない。よって,これらの行為は被告の準強姦行為を推認させるものではない。
  (2) 損害額(争点(2))
 (原告の主張)
 被告の不法行為により,原告には少なくとも以下のとおりの合計2236万1594円の損害が生じた。
   ア 妊娠,出産費用等 36万1594円
 (ア)から(エ)までの合計金額から(オ)の金額を控除した額である。
 (ア) DNA鑑定関連費用 5万2800円
 (イ) 出産費用 31万3180円(ただし,出産育児一時金を差し引いた後のもの)
 (ウ) 交通費 2万4400円
 (エ) 出産関係費用 15万7614円
 (オ) 被告による既払金 18万6400円
  ① DNA鑑定関連費用 2万6400円
  ② 出産費用 16万円
   イ 養育費 1000万円
 子供一人当たりの20歳までの養育費は約2500万円以上であるところ,仮に被告がDの養育費として月額3万円を20年分支払ったとしても,同人の養育費は約1800万円不足するから,原告には同額の損害が発生している。原告はこのうち1000万円について一部請求を行う。
   ウ 慰謝料 1000万円
 原告は,被告の準強姦行為の被害を受け,その結果Dを妊娠,出産し,養育していくことを余儀なくされた。その上,被告は,自らの準強姦行為を否認する虚偽の主張を行い,原告の心情を著しく傷つけていることも併せれば,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は1000万円を下らない。
   エ 弁護士費用 200万円
 (被告の主張)
 否認し,争う。
  (3) 消滅時効の成否(争点(3))
 (被告の主張)
 仮に本件性交渉が不法行為であるとしても,本件性交渉は平成25年7月21日に行われたものであるから,消滅時効が完成しており,本訴請求に係る損害賠償請求権は,消滅時効の援用により消滅したことになる。
 (原告の主張)
 被告による不法行為の終期は,原告がDを出産した平成26年○月○日であるから,消滅時効の起算点は早くても同日である。また,DNA鑑定の結果が判明してDが被告の子であることが明らかとなった同年7月17日までは,原告が被告に対して権利行使をすることが現実には期待できなかったから,消滅時効の起算点は同日である。したがって,消滅時効は完成していない。
第3 当裁判所の判断
 1 認定事実
 前記前提事実に加え,証拠(甲6,7の1,7の5,11,乙5,6,証人C,証人B,原告本人,被告本人のほか掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
  (1) 原告と被告の関係等
   ア 原告と被告は,同じ中学校に通っていた同級生(本件性交渉当時中学2年生)であり,平成24年4月に中学校に入学して間もなく,一時期交際したことがあったが,交際期間を含め,二人きりで外出して遊んだことはなかった。
 被告は,中学校の野球部やクラブチームに所属して野球に勤しみつつ学校に通っていたが,原告は,学校を休みがちであった。(乙1から4まで,8から10まで(枝番を含む。))
   イ 原告は,平成24年夏頃から平成25年6月頃まで,中学校の一学年上の男性と交際し,その間には同人と性交渉もあったが,本件性交渉当時は交際相手を有していなかった。一方で,被告は,本件性交渉当時はBと交際していたが,それまでに性交渉の経験はなかった。
   ウ 被告は,同じ中学校に通う女友達に対し,エッチしようなどと言うことはあったが,その体を無理に触ろうとしたことはなかった。また,被告は,原告やBと交際中も,同人らの体を無理に触ろうとしたことはなかった。
 なお,本件性交渉当時,原告は身長約170cm,体重約50Kgであったのに対し,被告は身長約165cm,体重約55Kgであった。
  (2) 平成25年7月21日の出来事について(本項は基本的に同日の出来事である。)
   ア 当日,原告は,Bら女性の同級生5人とともに,缶酎ハイ等のお酒やソフトドリンクを併せてスーパーのカゴ1個分購入した後,自転車でa公園に向かった。なお,Bは,原告の自転車に一緒に乗って同公園に向かった。
 別紙1及び2は,a公園内の原告と被告が飲酒をしながら花火を行うなどした場所及びその付近を撮影した写真であるが,原告は,午後4時30頃,別紙1の道路沿いの柵の辺りに自転車を止め,上記同級生らとともに,別紙2の奥側の緑地(以下「本件現場」という。)まで前側の斜面を降りてビニールシートを敷き,その上に座って飲酒をしながら歓談するなどしていた。なお,当時は,別紙2に写されている金網の代わりに柵(道路沿いの柵と同種のもの。)が設置され,その柵と道路沿いの柵との間には,体を細めて横に出るようにすれば一応通行可能な程度の隙間があった。また,上記柵の高さは約110cmであった。(乙7(枝番を含む。))
   イ 被告は,Cら男性の同級生2人及びCの弟(小学生)とともに,花火を購入した上,午後7時頃までに原告らの集まりに参加した。参加した者は,花火をしたり,座って歓談したり,各自携帯電話で遊んだりするなどして過ごした。原告は,飲酒により酔っていたものの,少なくとも午後8時頃までは,花火や歓談に参加し,また,その頃,Bとの間で,午後10時頃には帰ろうといった会話をしていた。一方,被告は,一口程度しか飲酒をしなかった。
   ウ 原告らの集まりは,午後9時半頃には終了し,その時点において本件現場に残っていたのは,原告,被告,B,C及びその弟のみであった。そして,CがBを送っていくこととなり,C,その弟及びBは,午後9時45分頃,帰っていった。一方,被告は,Bらに対し,自らが原告を送っていく旨を申し出て,原告と被告は二人きりで本件現場に残った。
   エ 原告と被告は,その後,本件現場において,性交渉を持った(本件性交渉)。そして,原告と被告は,敷いていたビニールシートを片付けるなどした上,午後10時30分頃までに,道路沿いの柵の辺りに置いていたそれぞれの自転車に乗って一緒に帰路についた。本件現場からの帰宅経路は,原告が別紙3記載①から②まで,被告が同記載①から③までであり,本件現場から原告の自宅までの帰宅経路の距離は約2.4kmである。
   オ 原告は,午後10時50分頃までに帰宅した。その際,原告に下着や洋服の乱れはなかった。(甲9)
   カ 被告は,帰宅後,原告に対し,「お前俺とやったんだけど覚えている?」という趣旨のメール(以下「本件メール」という。)を送信した。もっとも,原告は,その後,本件メールに返信するなどして,事実関係を確認したり,被告を非難することをしなかった。
  (3) 本件会談について
 原告は,平成26年○月○日,Dを出産した。原告は,当初,Dの父は前記(1)イの交際相手ではないかと考えていたが,DNA鑑定の結果,同人がDの父親ではないことが分かった。そこで,原告は,被告に対し,DNA鑑定に応じるよう求め,その結果,被告がDの父である旨の検査結果が出たことから,原告と被告及び双方の両親は,同年7月18日,本件会談を行った。本件会談においては,以下のような内容を含むやりとりがあった。(甲1,2)
   ア 被告は,原告の母から,被告が原告とともに本件現場に残った理由を問われ,原告が寝そうだから1人にしては駄目かと思ったと返答した。
   イ 被告は,原告の母から,本件性交渉がどのような経緯で行われたのか問われ,本件性交渉はその場の空気で,原告との合意に基づいて行われたと返答した。しかし,被告は,原告の母から,本件メールを原告に送った理由を問われると,酔っていたから記憶にないのかと思ったと返答し,原告の母からそれは合意ではないと指摘を受けると,これを肯定した。もっとも,被告の父から,被告が原告を襲ったのかと問われると,襲っていないと返答した。
   ウ 被告は,原告の母に対し,原告と二人きりになる時点で性交渉をするつもりがあったのではないかと問われ,原告が眠そうであったから,他の女友達も含めて帰ろうよと言っても,完全に横になって帰ろうとしなかったため,自分が送っていく旨申し出たにすぎないと返答した。
 2 争点(1)(本件性交渉は被告の不法行為といえるか)について
  (1) 原告は,本件性交渉は酒に酔った原告が前後不覚の状態にあることに乗じて行われた被告による準強姦行為であって,不法行為に当たると主張する。
 しかしながら,原告は,本件性交渉当日である平成25年7月21日,飲酒をしていたものの,少なくとも午後8時頃までは,花火や歓談に参加することはできていた。そして,本件性交渉は,午後9時45分頃から午後10時30分頃までの間に行われたが,原告は,その後間もない午後10時50分頃までに,まず,本件現場の片付けを行った上で,本件現場から徒歩で海辺から土手上の道路までそれなりに勾配がある斜面を上り,約110cmの高さの道路沿いの柵を乗り越えるか,柵と柵との間にあるわずかな隙間を通過した後,本件現場から約2.4km離れた原告の自宅に自ら自転車に乗って帰宅している。そうすると,原告は,本件性交渉当時も,相当程度の運動能力,判断能力を維持していたものというべきである。
 そして,原告は,本件性交渉直後,途中まで被告とともに帰宅していること,原告は帰宅時着衣や下着の乱れが特段なかったことに加え,被告が原告に対して送信した本件メールは,本件性交渉があったことを示すものであるのにもかかわらず,原告が被告に対して何ら事実関係を確認しようとメールの返信をしたり非難したりするといった行動に出ていないことは前記認定のとおりであり,これらの事実は,仮に本件性交渉が原告の同意なしに行われていたのであれば不自然なものといえる。これに加え,原告と被告は同じ中学校の同級生という関係であって,一時交際していた時期もあったこと,本件性交渉当時,原告は交際相手を有していなかったことからすると,原告の同意の下本件性交渉が行われたとしても不自然であるとまでいうことはできない。
 以上の事実を総合すると,本件性交渉が原告の心身喪失又は抗拒不能状態に乗じた被告による準強姦行為であると認めることはできない。
  (2) これに対し,原告は,本件性交渉が準強姦行為であることに沿う事実として,被告が,本件性交渉当時酔って動けない前後不覚の状態であった原告を送っていくと申し出て,あえて原告と二人きりになったと主張する。
 確かに,自身がa公園から帰宅する際にその場に残った原告の様子について,Bは,原告訴訟代理人の質問に対する回答書(甲7の1)及び証人尋問において「寝ていた」「私が帰るときにはもう応答はなかった」との証言等をしている。また,Cは,同様の回答書(甲7の5)及び証人尋問において「歩ける状態ではなかった」「歩き方はふらふらという感じでした」との証言等をしている。
 しかしながら,原告が本件性交渉当時,相当程度の運動能力及び判断能力を有していたと考えられることは前記説示のとおりである。他方,前記認定事実によれば,原告の友人らが数時間にわたって飲酒していたことは明らかである上,証拠(証人C)によれば,Bはa公園から帰宅する際,相当程度酔っていたと認められる。そして,証拠(甲6から7の5,証人B)によれば,原告の友人らは本件性交渉当日から1年数か月が経過した後になって初めて自身がa公園から帰宅する際にその場に残った原告の様子等を確認しあったことが認められる(この確認の時期について,原告は,陳述書(甲11・3頁)において,DNA検査によってDの父が被告と判明する前と説明しているが,原告の友人らの認識(甲7の1から7の4まで参照)と一人異なることに照らし,原告の上記説明を直ちに採用することはできない。)。これらの諸点に照らし,Bをはじめとする原告の友人らの本件性交渉当日の記憶は,原告の主張に沿ったものに変容している可能性が否定できず,証人Bの上記証言等は直ちに採用することができない。また,証人Cの上記証言等は,原告が一定程度酒に酔っていたことをうかがわせるものの,性交渉に及ばれても何ら気付かないとか抵抗することができないといったほどの心神喪失又は抗拒不能な程度に酩酊していたことを示すものではない。
 したがって,この点の原告の主張は採用することができない。
  (3) 次に,原告は,被告が,本件性交渉後,原告が酔って記憶を無くしていた様子である旨を認める内容の本件メールを送り,また,本件会談においても本件性交渉が準強姦行為であることを認めていることが,本件性交渉が準強姦行為であることを推認させると主張する。
 しかしながら,被告自身,原告が飲酒をしていたことは認識していたのであり,本件メールは,それ自体は性交渉に及んだことを覚えているかという趣旨のものであること,本件会談においては,被告は原告及び原告の父母と対面しており,これらの者に配慮した発言をしている側面があると考えられることに照らせば,本件メールの内容や本件会談における被告の各発言は,原告が酒に酔っていたことを認識しながら被告が本件性交渉に及んだことを示すにとどまり,本件性交渉が準強姦行為であることを直ちに推認させるものではない。
 したがって,この点の原告の主張は採用することができない。
  (4) さらに,原告は,被告は女友達に性行為を求める言動を繰り返すような,性欲を満たす行動にちゅうちょなく出る人物であり,被告は原告に好意を抱いていた一方で,原告は被告に嫌悪感を抱いていたことが,本件性交渉が準強姦行為であることを推認させると主張する。
 しかしながら,被告は,異性に対する関心の高まる青少年期にあったこと,それまで原告やBに対して意に反した身体的接触を求めることはなかったことからすると,原告の主張する被告の言動から直ちに本件性交渉が準強姦行為であると推認するのは,飛躍が過ぎるというべきである。また,原告の主張する被告の言動の具体的内容に加え,そのような言動に及ぶ被告からの交際の申込みに原告が応じたこともあったこと,そもそも学校を休みがちであった原告と野球に勤しんでいた被告との接触がさほど頻繁なものであったとは考えられないことを併せ考慮すると,原告が時には煩わしく思うようなことは別論として,これを超えて被告に強い嫌悪感まで抱いていたとはにわかに考え難い。そして,他にこの点を根拠付ける十分な事情を認めるに足りる証拠はない。
 したがって,この点の原告の主張は採用することができない。
  (5) 以上によれば,本件性交渉は準強姦行為であって,これが原告の権利を侵害する不法行為であることを認めるに足りる証拠はないというべきである。本件性交渉は不法行為とはいえない。
第4 結論
 よって,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第25部
 (裁判長裁判官 鈴木尚久 裁判官 鈴木雅久 裁判官 川北功)
 
 
 〈以下省略〉