今日、パンツのゴムを交換しようと思ったんですよ
5年くらい前に、しまむらで買った申叉。

さるまた、って読みます。ご存知でしょうか?
申叉をカラフルにしたり、模様を入れたり、
ローマ字のロゴを入れたりして手を加えたのが今のボクサーパンツだ、多分。
ぼくのは年齢相応に単色、前窓なしの正真正銘の申叉だ。
申叉は、グンゼが良い。
しまむらあたりで売ってるどこの馬の骨ともわからない安物と違い、
正統派パンツメーカーの歴史と精神がにじんでいますね。
しかし、ぼくのはしまむらだ。グンゼの半額以下で買えるんです。
(しまむらにもグンゼは売ってるが、どこのメーカーか聞いたことないようなものは、
たとえメーカー名が書いてあってもすべてしまむらと呼ぶことにする。)
その申叉のゴムがもうすっかり緩んでしまったので、履いてると自然にずり落ちるようになった。
しかし申叉本体はまだまだ使える。
ゴムがいかれただけで、布地は擦り切れているわけでも、
うんこあとが洗っても消えないような劣化した状態でもない。
洗えばキレイになります。
だから、ゴムさえ替えればまだまだ使える。
ぼくは、裁縫箱の中に昔ダイソーで買ったゴムが残っていたのでそれに取り替えようとした。

申叉の前部、へそにあたる部分から伸びきったゴムを引っ張り出し切断し、
パンツのゴムが通っている腰部のループから引き抜く。
だがしかし、ぼくをあざ笑うかのように、ゴムは尻尾を出さないで、
どうだ!といわんばかりにのびのびに伸びるだけだ。
背面の尻上部中央あたりでゴムが布地に直接縫い付けられているのだ。

ぼくはひさしぶりに頭に血が上った。
そうだ、簡単にゴム交換なんかされたら、商品が売れなくなるではないか。
この狡すっからさ極まりない、ゴム直接縫いつけ法は商品サイクルを早めるためのアイデアなのだな。
ぼくは、この詐欺のようなせこさに怒りで肩を震わせた。
このような大企業の隠れたせこさは、おれがゴム交換をしてパンツの延命をはかるというせこさをはるかに凌ぐ。
大企業の隠れたせこさの代表例が、むかし巷でいわれていたソニータイマーや、エコロジーの名のもとに行われているレジ袋削減などだ。

ぼくは昔を思ったのだ。
昔の人は、ゴムやら腰紐やらがだめになったら新しいものを買わずにその部分だけ交換、修理したのだろう。
破れたりすればツギをあてる。兼好法師だって言ってるじゃないか。
昔は品物も高価だったから、簡単には買い換えられない。
パンツ屋もその辺を考慮して、やろうと思えば出来ても、こんなこすっからい細工はしなかったはずだ。
昔はモノがなくても、かりにあっても高価だけど、世間は寛容でいい時代だったのだろうと思う。


それに較べて現代はなんだ。何十億何百億って動かせる大企業のこのせこさはなんだ。
これは経団連の陰謀である。
貧乏人だろうとなんだろうと、とにかくものを売りつけたい財界の陰謀だ。
そしてもちろんそれには政・官も癒着してるはずだ。
それは個人が抗える術などない巨大で腹黒い権威だ。
パンツのゴムさえ安寧に交換できないような、せこくなった現代の日本。
世の中はどんどん世知辛く狡すっからく、そして無関心に、やがて人々のストレスがだんだん溜まるようになっている。