日時は記憶が曖昧なのですが、逝去当日のニュース速報で知り…今作の原作者へ黙禱を捧げ、ご冥福をお祈りしたような気がします。いつか読みたいと考えていた事を思い出しました。
しかし…いずれも気付いたのは鑑賞後の事。視聴に至ったのは、出演者に導かれた「単純なミーハー根性」でした。演じていらっしゃる俳優も人間。失敗や間違いを起こしてしまう事や、お勉強代が高くついた方もいらっしゃいます。近親者を失くされた方。最近終了したドラマに出演されていた方々…。なども理由の1つです。
その視聴した作品とは…
余命10年
監督=藤井道人氏
原作者=小坂流加氏
※小説は2007年刊行。その後2017年に刊行された文庫版では…避けていた闘病シーンなどが大幅に加筆・修正された。この文庫版の編集を見届け、小坂氏は逝去された。残念ながら難病を患っていた小坂氏は、病状が悪化し刊行を見る事は叶わなかった。ご冥福をお祈りいたします・・・。
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2022年・125分
Amazon prime videoより
現在prime会員は無料で視聴が可能です。
(会員でも一部地域の方は視聴出来ない可能性があります)ご注意ください。
キャッチコピー
ティザービジュアルでは
「彼女は最後の10年を生きる。
まるで、人生の始まりみたいに」
本ポスタービジュアルでは
「君と出会って、
この世界が愛おしくなった。」
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主題歌
「うるうびと」💿
※PVでは和人の目線で描かれている。映画で描かれたその後の和人を主人公に、茉莉との思い出の地を巡る物語となっている。そして撮影も映画スタッフが集結して、本編では使われなかった映像や、今村監督によるスチール写真が使用されているという。
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役柄・その他
高林茉莉
★小松菜奈
国から難病指定されている「遺伝性の肺の病」を発症していると診断され、20歳の時に手術を受けるが改善出来ず、体に傷だけが残ってしまう。10年以上生存している人がおらず、余命10年の宣告を受けた。治療法はいまだ発見されず、不治の病と言われている。相手を残して死ぬ事が怖く、恋はしない。生きる事に執着しないと決めていた。しかし、和人との再会で変化が起こる。
真部和人
★坂口健太郎
茉莉との再会直後に自暴自棄に陥るが、奇跡的に傷は浅く命に別状なく完治する。上京組(タケル・茉莉)の存在に救われ、自分の進路を見据えて行く。茉莉との距離が急速に縮まり、恋愛対象となるが…事情を抱える茉莉は恋人関係になる事を拒む。深刻な病状だと知らない頃は茉莉の拒絶に悩むが、ある程度理解した上で今度はプロポーズする。しかし茉莉の愛溢れる返答に、最後には自分の人生を生きる約束をした。
高林桔梗➡鈴丘桔梗
★黒木華
茉莉と仲良し姉妹。言動が直球だが、愛情のある言葉で茉莉に接する。結婚して実家を出るが、妹想いの優しい姉。
藤崎沙苗
★奈緒
茉莉が東京の中学に転校した時からの親友。茉莉が病気の話を避けていた為、退院=治ったと解釈しており、茉莉が倒れるまでは限りなくフラットな関係だった。茉莉の文章センスを非常に気に入っており、自社の担当するウェブライターとして茉莉を勧誘する。タケルと一時期付き合うが、短期間で別れる。
寺田美幸
★富山えり子
茉莉の小学校時代の親友。思い出のエピソードをいくつか持っている。※原作では新谷美幸にあたる
富田タケル
★山田裕貴
茉莉と和人の中学の同級生。和人の良き理解者で、行き付けの店でアルバイトの斡旋をし、和人の良きアシストになる。沙苗と一時期交際するが、短期間で別れた。その後は良き関係を築いている。
三浦アキラ
★井口理
茉莉と沙苗の友人・美弥の彼氏(婚約者)
※原作では美弥の夫・亮にあたる。
平田
★田中哲司
茉莉の主治医
※映画版・オリジナルキャラクター
梶原玄
★リリー・フランキー
和人の恩人「焼き鳥げん」の店主
※映画版・オリジナルキャラクター
高林百合子
★原日出子
茉莉と桔梗の母
高林明久
★松重豊
茉莉と桔梗の父(過保護気味)
鈴岡聡
★山中崇
桔梗の彼氏➡夫
ほか
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おおすじ
窓から満開の桜の木が見える病室で、ベッドに横たわる友人の側で微笑む二十歳の高林茉莉(小松菜奈)は、自らも鼻から酸素を投与されている状態で、彼女の息子(小学校の入学式)の映像を一緒に見ていた。
彼女はビデオの中で嬉しそうに手を振る息子を見ながら呟いた。少し先の未来を分かっていたのに「もう少し。もう少し…と、望んでしまう」と寂し気に笑う。「最後まで精いっぱい生きてね」が最後の言葉だった。
無念な想いを飲み込んだまま…愛する家族に見守られ、この世から旅立った。茉莉は車椅子に酸素を持参で葬儀に参加すると、最前列で泣き崩れる夫と、小さな少年の背中を見つめながら、とある決心をする。そして…形見となったビデオカメラに満開の桜をおさめた。
2013年8月。茉莉はビデオカメラを覗き、少し浮かれている。満開の桜から思い出を記録するようになっていた。長かった入院生活に区切りをつけて退院する。姉の桔梗(黒木華)が退院準備のお手伝い。
同室の方々へ丁寧にご挨拶が、ついつい長くなる母(原日出子)に、寄り添う父(松重豊)「いよいよこれから…」と言いながら、主治医の先生(田中哲司)も含め、皆が笑顔。帰路では…まるで観光客のように、アチコチの変化が気になる。いつかスカイツリーに行きたいとテンションの高い茉莉は姉にせがむ。
2年ぶりの我が家だ。入院前より片付いている自室をゆっくり見回す。そして、癖になるほど何度も何度も読み返したであろうノートを取り出すと、びっしり書き込まれた自身の病気についてをなぞる。
10年以上生きた人はいない。事実上の余命宣告だ。発作はいつ起きるか分からない。手術を受けたが病状の改善はみられず、朦朧とする意識の中で21歳の誕生日を迎えた。結局…体に傷痕が残っただけ。
※PAH「肺動脈性肺高血圧症」難治性呼吸器疾患。肺動脈圧「心臓から肺へ血液を送る血管の圧力」が高くなる病気。致死的な病態で、根本的な治療法は解明されていない。数十万人に1人という確率。国から難病指定されている原因不明の不治の病。
少しでも希望の光を求めて調べ尽くした。しかし呼吸困難になるか冠動脈破裂による突然死の危険性もある。正確な予後の予測はたたず、10年の生存率は低い事しか分かっていない。ノートの文字が所々滲んでいる。
3人の仲良し同級生が退院を祝ってくれた。ある日突然…「遺伝性の肺の病」を発症し入院した為、短大を中退せざるおえなかった茉莉。同じ短大に通っていた3人は無事に卒業していた。懐かしさがこみ上げる。
2人を駅で見送り親友の沙苗(奈緒)と2人なると、いきなりのカミングアウトに照れる。茉莉の書く「小説」が好きだったという。今、職場の人材不足でコラムニストを捜していると誘われたのだが、流石に考えた事も無かったジャンルに即答は控えた。
家族は適度な自由を尊重し、すべきフォローをしてくれるスタンス。程よい距離感を保ってくれている所を大いに感謝している。出来るだけ普通の日常を心掛けていた。
帰宅すると1枚のお知らせに目が止まる。中学時代の同窓会…少し悩んだが、誰も病気の事を知らない人たちに会ってみたくなり、結局父の送迎で参加に至る。最初に言葉を交わしたのは和人(坂口健太郎)22歳の春、この再会が運命の扉を開く。
地元から出た上京組(東京人)は、茉莉、和人、タケル(山田裕貴)の3人。羨望の眼差しを浴び、質問攻めになる。咄嗟に沙苗からのアプローチを利用させてもらい、その場を凌いだ。タケルの仕切りでタイムカプセルを空け、各自の手元に渡る。「未来に生きる私達へ」14歳の無邪気な言葉が心に刺さった。
同窓会は、大なり小なり個人個人に何らかの変化をもたらし、茉莉は就職の面接を受けに出かけた。だが、2年のブランクとアピールポイントの無さに、当然の塩対応。世の中は甘くはなかった。
呆然としている所にスマホが鳴り…病院でタケルと合流するが互いに情報が少なすぎてかみ合わない。自室のベランダから飛び降りたという事実だけが共有された。幸い命に別状はなく、直ぐに本人と会話が出来た。しかし、和人が語った理由を聞いた茉莉は苛立ちを覚え帰ってしまう。
和人が通院に切り替わり、偶然病院内で茉莉を見かける。月1の定期健診だ。タケルの取り成しで、行き付けの店に3人が集合。意外にも素直に「ごめんなさい」🙇を口にした和人を見て茉莉は笑ってしまう。気まずい空気は一瞬にして和んだ。
帰り道の夜桜が思い出の記録(ビデオカメラ)に加わった。「生きる事に執着しないように」「もう恋はしない」と決めていた茉莉だったが、この時にはもう心は動き出していたのかもしれない。病状を話すタイミングを失ったまま、結局沙苗からの紹介を受け、ウェブライターの仕事をスタートさせる事になる。
全てが順調に動き出し茉莉に笑顔が増える。しかし病が消えたわけではない。砂時計のように貴重な時間は、思い出が増えるたびに失っていく。割り切って生きてきたつもりなのに「もっともっと生きたい」と、いつの間にか思っていた。
やがて真実を知る時が来て、残された「限られた時間」の中で、2人は最後の選択に迫られる。制御していたリミッターが外れてしまい、色んな感情があふれ出す。
特別でなくていい…
何気ない毎日を少しでも長く
思い出が一枚でも増えますように
残された人達の為にその思い出は消去し
私があの世に持っていく。
運命は明らかに、残酷なカウントダウンを始め
私の大切な人たちが
どうか悲しまないように…
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まとめ
2017年に「映像化したい文庫部門」大賞を受賞。2022年の時点で発行部数は80万部を突破。主人公が死に向かって精一杯生きる様を描いた物語。本人も、近しい人たちも苦しみぬき、泣いて泣いて泣いて…その日を迎える。これも「乗り越えられた試練」なのだろうか?残された者の生き方が問われているのかもしれない…。
物語の後半に差し掛かる頃になって、号泣するに決まっている映画だとようやく気付いた。
死ぬのは怖い…。哀しくて…せつなくて…胸が締め付けられる。夜、瞼を閉じるのが怖い。このまま永遠に目覚めない気がして…泣いて泣いて泣いて…それでも朝はやって来る。そして脅える一日が繰り返される。入院中を思い出して共感してしまった💦
誰が一番かわいそう?
その答えはきっと…誰にも分からない。
今作は映画で演じられた映像だけど、患者は実在します。
原作者(小坂流加氏)は才能を持ちながら、命を燃やして全力で作品に向き合った。きっと想像の中で観たかったモノを観たに違いないと思います。本人が選んだ道を応援するつもりでも、見送る側にも勇気が要求されますよね。
余談ですが…私の祖母は明け方病院で息を引き取り、その時間私の夢に登場しました。「やっと〇〇ちゃんの部屋を見にこれた」と言い笑っていた。それからは、病の邪魔がなくなり行きたかった所へ行くのだろうと考えるようになりました。(※ちなみに私に霊感は全くありません)
ご家族からの言葉(手紙)を頂き、大事にしていくと言った小松菜奈さんに感動しました。壮絶なプロ根性を見せてくれています。多少の化粧効果もあると思いますが、本当にやつれた顔が印象に残ります。新婚早々な時期に役作りの為の減量をしたのでは?余計なお世話だけど気になってしまいました。
原日出子さんが出演されていたドラマが最終回を迎えました。関係者ではありませんが、2022年を乗り越えて元気な姿が見れて良かったな~と思います。(今作は、訃報の前に撮影された作品だと思います)
最後にどうしても言いたい事で、〆たいと思います。女優の黒木華さんと、Snow Manの渡辺翔太さんが似ていると思いませんか?いつか姉弟役でドラマが実現しないかな~なんて考えてしまいました😆
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おまけ・エピソード
公開翌日の「公開記念舞台挨拶」の際。原作者の小坂氏の家族から手紙が届くサプライズがあった。小松菜奈さんは涙をこらえきれず…「その手紙コピーしてくださいね、家宝にします」と述べた。というエピソード記事を目にしました。
藤井監督は原作を読んで…(抜粋)
今作は、まるで小坂さんが生前描いていた「夢」だったのでは?と感じ「直感的に映画として残したい!」と強く思った。また「彼女の10年を映像にしたい」と思い、「彼女が感じた気持ちを四季を通して表現したい」から、1年がかりの撮影となった。※桜や雪や夏の海はVFXではなく実際の撮影を使い、小坂氏の生まれ故郷(静岡県・三島市)で撮影した。
小松さんのコメントから抜粋…
約1年の撮影を振り返り、命は軽いものではないからこそ、中途半端な気持ちで挑むつもりはなかった。どうすればこの気持ちを伝える事がことができるのか?と自分なりに模索した。最後を見るのではなく、茉莉の生きている証をどう刻むのかを考え、彼女の人生を生きようと覚悟を決めたとしている。
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病名について…資料から抜粋
「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」は、心臓から肺に血液を送るための血管である「肺動脈」の血圧が、異常に上昇するために心臓に多大な負担がかかり、全身への酸素供給が充分にできなくなる病気で、国の指定難病となっている。この病気がある程度進行すると、体を動かす時に息苦しく感じる、すぐに疲れる、体がだるい、意識がなくなる(失神)などの症状が現れる。2009年に名称変更されるまでは「原発性肺高血圧症(PPH)」という名称。
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原作から変更(抜粋)
①原作では…
真部和人は茶道の家元の長男。大き過ぎた親からの期待に耐え切れず、家元を継ぐ葛藤や悩みを抱えていた。(生きる意味を見失ってはいない)
映画では…
父親が経営する会社を継がず、両親とは絶縁状態。同窓会で衝撃を受け、命を投げ出した…設定。
②原作では…
茉莉はコスプレ好きの沙苗に誘われてアニメイベントに行ったり、漫画の同人誌などを執筆している。和人を主人公にし漫画家デビューを果たす(単行本も刊行)
映画では…
茉莉は小説を執筆。原作者の人生に沿うような形で「余命10年」を執筆。沙苗の勤務する文芸社から刊行。
③原作では…
同窓会は群馬の小学校の時のもの
映画では…
④原作では…
沙苗は中学からの親友で、大学の同級生ではなく、美弥やサオリとは茉莉の葬儀で出会うまで面識がない
映画では…
沙苗・美弥・サオリと、茉莉は大学の同級生で友人となっている。
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最後まで読んで頂きまして
ありがとうございました。
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