夜勤続きだったり引っ越し準備だったりで出遅れましたが、113回看護師国家試験問題をようやく解き終えました。何回かに分けて味わっていきましょう。毎度最後にたどり着けないのですが、まあ、今年もそんな感じかな。まずは概観を。
なお、予想は惨敗です。
新たに作ればよいというものではない
今年も全体的に問題が作り直されている印象で、クリアカットな問題が多い傾向は続いています。正解が明確というのはこの手の試験ではとても大切なことですね。
ただ、必修問題は難度が高い印象で、ネコナースでおなじみのメディックメディアも自社サービスの合格予報のデータを用いて「明らかに113回の分布が左側に寄っており、このままだと例年に比べかなり多くの人が必修落ちとなってしまいます。」と解説しています。当blogでは扱いだした当初から、必修の不適切問題は合格率調整用であると見てきましたが、いよいよそれが明らかになるという状況とも言えます。
「今年は難しい」と感じる理由について、当blogでは必修問題における正答率との関係から検討していますが、今回はその前に触れておきたいことがあります。新しく作られた必修問題に内容がよくないものがあるんですよ。上述メディックメディアの分析から最も正答率が低い(2024年2月13日15時時点、30%)の問題を見てみましょう。
臨床研究の倫理指針で被験者の権利を優先することを提唱しているのはどれか。
1.オタワ憲章
2.リスボン宣言
3.ジュネーブ宣言
4.ヘルシンキ宣言
(第113回看護師国家試験 午前5)
それ、覚えて何の役に立つの?
被験者の権利を優先する行為はどれかと問うならわかる。それが何宣言によるものかって、免許するのに必要なのかな。不要であろうにもかかわらず、そのものを覚えていないと解けない。
こんな問題を出している免許試験って他にあるんですかね。結構受験しているつもりですが、あったかな。例えば運転免許試験の法規で、道交法の何条で定められているかを聞いているのと同じことですよね。そんな問題は出ませんし、運転を免許するのに必要でもありません。
それでも百歩譲って、これまで散々出てきたオタワ宣言のヘルスプロモーション、アルマアタ宣言のプライマリヘルスケアを問うなら、せめて過去問やってきたかの確認としてありかなとは思いますが。これでも百歩譲ってです。よい問題ではありませんから、この手のものを新たに作るべきではありませんよ。ましてや必修で。
午後5(看護師の業務従事者届提出先)もよくない。2年1回の届けを問う問題から書き換えたのでしょうが、届け先を調べずに届けることは事実上不可能ですから意味がない。
消化器外科の問題が妙な難しさ
臨床を意識した問題は、その診療科の現役看護師が難なく解ける程度ってのが適当な難度設定だと私は考えています。看護師として適格かを見るわけですから、現役看護師ですら難儀する問題を出すのはやり過ぎですよね。それがたとえ、一部の看護師にとっては当然わかることであっても。再び運転免許を例に出しますと、試験で小道路転回を求められることはありません。現役ライダーですらできない人が多いですし、できなくても公道を安全運転できるわけですから。
このような観点で見たとき、周術期看護は張り切りすぎなのではと感じました。
肝切除術後3日の患者のドレーンから黄褐色の排液が見られた。考えられる原因はどれか。
黄疸
出血
腹水
胆汁漏
(第113回看護師国家試験 午前42)
肝臓切ってるんだから4だろって言いたくなるのですが、臨床の方々はどんな感じですかって問われるとまあそうだねぇと濁したくなる内容なんですよね。正直ドレーンから何が出うるか、わかっていない人は多い。けど、実際のところ、看護師に求められるのは色の変化の検知であって、その理由の把握までは求められていない現場がほとんどでは。それではいかんって改善提案なのかも知れませんけど、それは免許試験で出すことではありませんよね。
全身麻酔下で胃全摘手術を受ける患者に対する無気肺の予防法はどれか。2つ選べ。
(第113回看護師国家試験 午前87)
インセンティブス・パイロメトリー? 初めて聞いたわ。教科書載ってる? 手元でGoogle先生に「インセンティブ・スパイロメトリー 無気肺」って聞いたら「About 30 results」だよ。ちなみに「呼吸訓練 無気肺」は「About 2,690,000 results」です。今まで通り呼吸訓練でよかったのでは。
消去法で解けるようになっているところが自覚してる感あってよくないよね。その消去法が考えさせるものならまだしも、単純に無関係なものを並べてます。よくない。
要はこういうの使って呼吸訓練することなんだよ。