看護師国家試験「問題」の難易度はBeaujolais nouveauの如く「今年は難しかった」と例年語られるわけですが、本当に難しかったのか、定量的な分析を試みたいと思います。合格発表時に示される合格基準における一般問題状況設定問題の点数がそれだろうという話もありますが、他の見方があってもよかろうと。約90%の合格率で合格点の調整がなされている試験で難易度を語るんはナンセンスと韻を踏んじゃうぐらいなんですが、まあ、味わいはよいかも知れませんよね。
看護師国家試験は午前午後それぞれ120問ずつの240問、うち各先頭25問ずつの50問は必修問題で80%の正答率が合格には要され、残り190問は合格率約90%に合わせて要される正答率が変わる仕組みです。残り190問の必要正答率は大体60から65%。国家試験であることを考えると60%を狙っているんでしょうね。様々な意見はあるかと思いますが、私は看護師国家試験の難関は必修問題であると考えています。理由は簡単で、要求される正答率が非常に高いから。私の知る限り正答率80%を求める国家試験なんてありませんよ。尤も看護師国家試験だって均せば65%ぐらいですけど。それはさておき。故にこのエキサイティングな必修問題について、しばらくは難易度を分析してみたいと思います。今年はその初回。
問題ごとの正答率から考えてみる
必修問題50問について、各問題での正答率を並べて計算してみました。上の段落で触れている「正答率」と意味が変わるので要注意。データソースはメディックメディア「ネコナースの合格予報」。なお、2021年の第110回が欠けているのは手元にデータがなかったためです。残念。
- | 正答率 平均% | 最低% | 標準偏差 | < 90% 問題数 | < 85% | < 50% |
---|---|---|---|---|---|---|
108回*1 | 90.42 | 48 | 11.36 | 16 | 10 | 1 *2 |
109回*3 | 89.62 | 34 | 13.18 | 14 | 9 | 2 *4 |
111回*5 | 91.50 | 41 | 11.57 | 13 | 8 | 2 *6 |
112回*7 | 90.94 | 43 | 11.37 | 12 | 9 | 1 |
んー、どう? そんなに変わらないように見えますけどね。正答率85%以上の問題を落とさなければ必修問題は基準を満たすというのがわかります。90%の合格率から見るとやや低めですが、合格者がどの低正答率の問題を正答するかはばらつくってことですかね。
もう少し細かい区切りでグラフにしてみましょう。
なるほど。意外とおもしろい。正答率85から70%の問題数に差があり、この辺が「難しい」という感覚を生みそうにも見えます。111回の問題作りは非常にうまく、穏やかな感覚も与えそうですが、どうでしょうか。
ちなみに112回はちょっとした異変があって、108回、109回、111回と正答率50%以下の問題を採点除外等にしていたのですが、112回では採点除外等とされませんでした。あくまで合格率を見ての調整なのかなとは思いますが、分析の観点としてはおもしろそうです。
実は今年、保健師国家試験の問題集を買ったのですが、医学書院を選んでしまいました。だってメディックメディアは電子版がないんだもの。