【藤原正彦さんに聞く】大量のジャンクの中からどの情報を選ぶか | 新聞科学研究所

【藤原正彦さんに聞く】大量のジャンクの中からどの情報を選ぶか

(写真=本人提供)

藤原正彦(ふじわら・まさひこ)さん

1943年、旧満州新京生まれ。東京大理学部数学科大学院修士課程修了。理学博士。お茶の水女子大名誉教授。78年、米国留学記「若き数学者のアメリカ」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書は「国家の品格」など多数。


情報の洪水の中でおぼれかけている私たち

 

 近頃の若い人は新聞を読まなくなった。ではどこで情報を得ているかといえば、インターネットだという。しかし、それではいけない。

 たしかにネットには無限の情報があるが、99.999%はそのままでは何の役にも立たない情報だ。21世紀に生きるわれわれは、常に情報の洪水の中でおぼれかけており、大量のジャンクの中からどの情報を選択するかが非常に重要になっている。正しく選択してこそ、情報は生きる。

 

正しい選択の手伝いをするのが、新聞

 

 その手伝いをするのが、新聞だ。新聞は世界に無限にある情報の中で、何が本質的なものかを示し、正しく方向付けてくれる。それ自体では単なるジャンクにすぎない個々の情報もこの過程を経ることで、正しい知識として読者が摂取できるものになる。新聞で身に付けた知識を読書によって組織化して、教養にまで高める。この段階を踏むことで、初めて大局観が生まれてくる。そして大局観がなければ適切な選択はできない。

 

大局観を持つために、新聞と活字文化が必要

 

 個々人が大局観を持たなくても指導者がきちんと判断してくれればいい、と思う人もいるだろう。だが賢人の独裁が最も効率的だとしても、理想的独裁者を選ぶ方法を人類は持っていない以上、欠陥はあるが民主主義に頼るほかない。民主主義とはつまるところ国民の多数決なのだから、政治家を選ぶ国民一人一人の大局観が重要になる。新聞と活字文化は、そのために必要だ。

 コロナ禍のいま、テレビでは恐怖をあおる番組も散見される。だが新聞は冷静な統計を示し、理性的思考を促すことができるメディアだ。テレビやネットとの違いをもっと出していってほしい。

 

2020年11月4日公開