【羽生善治さんに聞く】新聞を読むと、理路整然とした文章力が身につく | 新聞科学研究所

【羽生善治さんに聞く】新聞を読むと、理路整然とした文章力が身につく

羽生善治(はぶ・よしはる)さん

1970年埼玉県所沢市生まれ。15歳で四段、中学生棋士に。89年、19歳で初タイトルの竜王を獲得。96年には将棋界初の七冠となった。通算タイトル獲得数は99期。2017年、「永世竜王」の資格を得て「永世七冠」を達成した。18年2月に国民栄誉賞が授与された。


小学1年で将棋を始め、「将棋欄」を読むように

 

  将棋を始めたのは小学1年生だった。時を同じくして新聞を読むようになった。新聞には「将棋欄」があり、プロが指した次の一手を考えることが日々の楽しみだった。

 

「更迭」「玉虫色の決着」…自然に語彙が増えた

 

 最初は将棋欄だけだったが、次第に社会面の漫画、スポーツ面なども読むようになった。「更迭」とか「玉虫色の決着」とか、子どもの時にはわからなかった言葉の意味が大人になるにつれわかるようになり、新聞の活字に触れながら自然に語彙(ごい)が増えた。


 外国で対局をしたり、海外旅行をしたりするようになった二十歳ぐらいからは国際面をじっくり読んでいる。最近ではサウジアラビアにある石油施設攻撃の記事が気になった。インターネットニュースは速報性が最大の武器。それに対して新聞は、ニュースを俯瞰的にみることができて、世界でいま何が起きているのか、動向を把握しやすいという良さがある。

 

将棋の「読み」と新聞の共通点


 新聞紙面は限られたスペースや、ある程度決まった文字数で記事がまとめられているので、読んでいるうちに理路整然とした文章力が身につけられると思う。ロジックを積み上げるという意味では、将棋の「読み」と共通するところもある。小中学生は、自身が興味を持っている分野の記事から新聞に触れることで、まとまった文章を読む力がつくのではないか。

 

藤井聡太棋士の活躍で、将棋の話題が1面に


 将棋界に関する記事で言うと、ここ3年くらいで大きく様変わりした。最年少棋士の藤井聡太七段が29連勝という新記録を打ち立て、将棋の話題が1面に載るようになった。本当にありがたいことで、今後は記事を通して勝敗だけではない将棋の価値や文化的な側面を伝えることが棋士の役割だと考えている。

 

 2019年11月26日公開