【齋藤孝さん×吉本実憂さん対談】選挙権を持つ君へ 新聞で考える未来 | 新聞科学研究所

【齋藤孝さん×吉本実憂さん対談】選挙権を持つ君へ 新聞で考える未来

2016年から、選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられました。
18、19歳の約240万人が、新たに投票できる権利を手にします。
齋藤孝先生が「選挙」について吉本実憂さんの質問に答えてくれました。

世界の9割の国では、18歳になると選挙権を持つ

私もいよいよ選挙に行けるようになるんですね。

2016年から18歳以上の人なら誰でも、選挙で投票できるようになりました。

でも、まだピンと来ません。私が投票してもいいのかな?という感じです。

日本では18歳なんてまだ早いと言う人が多いんです。でも、世界の約9割の国では、18歳になると選挙権を持つんですよ。

そうなんですね。いつまでに18歳になっていれば投票できるのですか?

投票日の翌日までに18歳になる人で選挙人名簿に登録されていれば、投票できます。投票所入場券が事前に送られてきますよ。期日前投票もできます。

初めて受け取るときは緊張しそうです。

投票できることは、大人と認められること

どうして選挙権が拡大したのですか?

より若い人に政治参加してもらいたいからだよ。日本はすごい高齢化社会だから、投票できる若者を増やさないと、国会や地方議会が高齢者のための意見ばかりになってしまう。

中高年の方は選挙にも熱心なイメージです。

確かにそう。だから選挙権を拡大することによって、若い世代に政治に関心を持ってもらい、その声を生かそうという意図があるんです。18歳からとなると意識も高まるよね。

選挙に行くことをどう考えたらいいのか、私だけでなく、多くの若者が分からないと思うんです。

まずは投票することに、わくわくしてほしいなあ。投票できるって、大人と認められたってことなんだよ。

一足早く大人と認めていただけるのは、すごくうれしいです。

選挙の結果で政策が変わることも

政治に興味を持つ、投票に行く、これを繰り返して、民主主義が少しずつ形づくられていくんだよね。

みんなが投票に行って、将来について真剣に考えないといけないですね。

そうそう。ほんとうに投票で未来は変わるんだよ。実際に、選挙の結果で政策が変わることもある。

私たちの投じる一票は重要なんですね。

みんな「日本」という同じ船に乗っているんだけど、向かう先は、ぼくたちが決めるんだってことが実感できるよ。

私たちが世の中を、より良い方向に変えられるんですね。

そう。だから選挙権を持つことにわくわくして、投票を楽しみにしてほしいんだ。

世の中に興味を持つことが第一歩

先生は、候補者や政党といった投票先を、どうやって決めているんですか?

ぼくは、まわりの人たちと政治について話しますよ。そうしているうちに自分の考えがまとまってくる。

そうなんですね。でも最初は何を話していいのか、分かりません。

ぼくはまず、いろいろと情報を集めます。新聞を読んで、テレビを見て、インターネットで調べます。世の中に興味を持つことが第一歩ですから。

そうすると、疑問もたくさんわいてきそうですね。

そうそう。そうしたら、もっと調べてもいいし、人に聞いてもいい。そのうちに自分の意見が自然と出てくるんだよ。女優の仕事でも自分の意見を言うでしょ?

そうですね。やっぱり作品が良くなるためには、自分の意見が必要ですね。監督さんや共演者の方々にも、自分の意見を言わせていただくことがあります。

政治も同じことなんだ。もっといい社会になってほしいと思うと、自然と自分の意見が出てくるんだよ。意見を言う勇気だって自然とわいてくるんだ。

ネットニュースと新聞記事はどう違う?

気になることがあると、よくスマートフォンで調べるのですが、ネットのニュースと新聞に載っている記事はどう違うのですか?

ネットのニュースは、もともと新聞社が発信した記事を短くして掲載しているものが多いんだ。

そうなんですね。じゃあ、選挙のために読むならやっぱり新聞の方がいいですね。

新聞の方がより詳しいし、分かりやすいよ。ネットの情報は速報性があるけれど、新聞記事はニュースの背景などを多角的に分析しています。ネット情報にはあやしいものもあるけど、取材のプロである新聞記者が書いた記事には基本的な信頼性があります。

新聞ってすごいんですね。

みんなが新聞から正確で多様な情報を得て、納得して選挙で投票する。民主主義がきちんと機能するためには、質の高い情報を得られるようにしておかないといけないね。

新聞の特徴は「一覧性」|どんどん興味が広がる

新聞のいちばんの特徴ってなんでしょうか。

一覧性だね。広い紙面に記事がバーっと展開され、大事な記事が一目で分かる。記事と記事が関連付けられている。読みやすいし、どんどん興味が広がる。

でもなんだか難しそうで……。

とにかく新聞を身近に置いておくことだよ。身近にあれば必ず読むようになるし、「新聞がある暮らし」を送ることがとても大事なんです。

おすすめは「記事の切り抜き」

おすすめの読み方ってありますか?

まずは新聞をめくって、興味のある記事や見出しを読んでみればいい。あと学生に教えているのは、切り抜きだよ。気になった記事を切り抜き、ノートの左ページに貼り、右ページに自分のコメントを書く。その記事への理解が深まるようになる。

記事の切り抜きは、私もやりました。実は、私の家では2紙とっています。もっと読んでみますね。

ぼくも家にも仕事場にも必ずそばに新聞を置いているよ。休刊日は仕事もはかどらない……なんてね(笑)。

PROFILE

齋藤 孝(さいとう たかし)

1960年、静岡市生まれ。東京大学法学部卒。明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。 著書『声に出して読みたい日本語』(草思社、2001年)がベストセラーになり日本語ブームをつくった。

吉本実憂(よしもと みゆ)

1996年、北九州市生まれ。「第13回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを獲得。「アイムホーム」「表参道高校合唱部!」「5→9~私に恋したお坊さん~」など話題のドラマに出演。映画「罪の余白」でヒロインをつとめた。NHK・Eテレ「東北発☆未来塾」でナレーションを担当している。

2018年7月24日公開