電脳塵芥

電脳塵芥

四方山雑記

兵庫県知事選前後におけるデマ、真偽不明などの情報

【11月26日 17時】
スキーウェアについて加筆修正、および百条委員会の日当について追記
【11月27日】
稲村和美、奥谷の項目に加筆
【11月28日】
公約達成率について加筆


 兵庫県知事選前後におけるデマ、真偽不明などの情報についてメモ的に羅列しておく。

①斎藤元彦の公約達成率は98.8%
 発端は2024年7月30日における知事会見で「達成、着手した状況は171項目、98.8%」と発言したのがきっかけ。同様の発言は2023年8月1日にもしているが、これは「達成」と「着手」を合わせた数値であり、そして着手の進捗率は不明である。この「着手」の単語が抜けて「達成率(実現率)98.8%」という情報が流布した。また斎藤元彦HPの公約には公約達成・着手率「171/173」と書いてあるが、氏の公約には173項目の公約は記載されておらず、その公約は不明である。なお2021年時の選挙時には公約詳細版がHPに存在していたが、こちらの公約も173には及ばず137となる。明示されていない謎の公約が誇られている。
【11月28日追記】
 11月27日の知事会見において、公約達成率が27.7%(173項目中43項目)であることが明かされた。

②港湾利権にメスをいれた
 9月13日ごろに2023年3月21日の朝日新聞「県、外郭団体の使用料を不適切割引き 監査指摘、利益剰余金14億円」を受けて、斎藤元彦が港湾利権にメスを入れたという発想をした人物によるデマ。記事を書いた記者による否定、毎日新聞においても否定され、元投稿は削除されるに至る。早期にデマと認定されたため選挙選においてはほとんど出なかった話題だと思われるが、9月という斎藤元彦への批判が多かった時期に、その批判が「大きな権力」によるものであるという陰謀論的発想がこのころから見られたことがわかる。

兵庫県のみのアンケートでは支持が39%

 上記の円グラフ周辺を切り取った状態で、支持率は39%だとする9月26日の投稿が発端。実際には画面上を見ればわかる様に出直し選挙の判断についてのアンケートであり、斎藤県知事の支持率ではない。

パワハラはなかった
 まだ結論そのものは出ていない部分。選挙前もそうだが、選挙後にも多く見られた。8月23日に行われた百条委員会の奥谷委員長の会見動画などが都合よく一部切り取られ、パワハラがなかったという発言に編集されて誘導。会見の部分を文章化すると次の様になる。

記者:分かりました。6人のうちパワハラを受けた、または、その判断は本人ができないということで、知事から理不尽に厳しい叱責を受けたと明言された人はいらっしゃったんでしょうか。また6人のうち何人いたか、可能な範囲でお伺いできたらと思います。
委員長:私の認識では明確に知事の方からパワハラを受けたという方はいらっしゃらなかったという風に考えておりますが、それは職員さんの中でもこれがパワハラに当たるのか自分では判断できないという方もおられましたし、そこはこれから我々が聞いた事実を評価して 、パワハラに当たるのかどうか、しっかり評価をしたいと考えてます。
ファクトチェックセンター記事より抜粋

奥谷委員長の発言は「職員の認識として」パワハラを受けたという人間はいなかったという事だが、聞き取りなどから委員会がパワハラに当るのか判断するという文脈であり、「パワハラはなかった」という認定自体はされていない。兵庫県文書問題調査特別委員会における県職員アンケートの集計結果では「知事のパワーハラスメント」について「A:目撃(経験)等により実際に知っている」が140件とされる。ただし県の百条委員会は現時点ではまだ最終的な結論を出してはおらず、パワハラと「認定されるか」、「認定されない」かは不明だ。斎藤自身は「必要な指導」だったとしており、あとはこれがどう判断されるかによる。

⑤おねだりはなかった
 パワハラと同じくまだ結論そのものは出ていない部分。ただ根拠の一つとして挙げられるのはスキーウェアのおねだりがなかったというものがある。これは関西テレビが「養父市」でその様な事例があったと報じたが、やぶ市観光協会がその様な事実はなかったと声明を出している事から無かったと考えられる。ただし中間報告ではその様な事例があったという伝聞情報は複数回書かれており、8月23日の百条委員会においても証言は存在する。兵庫県議会議員の丸尾牧によれば、「養父市のスキー場の話ではない」という事だけであり、「スキーウェアを欲した」という事例は存在するとみられる。またこの件については丸尾が「スキーウェア疑惑を捏造した」という話があるようだが、本人は経緯を書き否定し、この件についてのまとめを記述している。
 以上の様にスキーウェアについては指摘された場所のみが違うだけであり、その様な事例があった可能性は高い。この事例がなかった場合においても、産経新聞兵庫知事「おねだり」贈答品を公開 ゴルフ用品、スポーツ服など25点」、「「斎藤家の食卓をにぎわしただけ」〝おねだり〟疑惑に百条委員が指摘 兵庫知事は正当性主張」などを見ればわかる様に「贈答品」をいくつももらっている。他の知事と比較してその数が多いかは不明だが、これらの記事などからは「贈答品」をそれなりにもらう知事であり、それが「おねだり」と判断されるかどうかとなる。

⑥自殺した元局長は10年で10名以上の女性と不同意性交罪をしていた
 立花考志が選挙ポスターなどでまき散らした怪情報。今回の一連の発端となった3月の怪文書(後に公益通報)を作成した職員が特定され、そのパソコンの中身が調べられという一件が存在。その文書の中には「クーデター」などの文言が見つかり、また私的な文書もあったとされる。クーデターはどの様な文脈で使用されていたかは不明なので触れないが、こういった文言が「斎藤元彦が嵌められた」という様な言説を生む一つの要因となったと思われる。そして私的文書だが、これには不倫について書かれたとされる。しかし「不倫」が事実だとしても「不倫=不同意性交罪」ではなく、10年で10人という数値も立花の「予想」であり立花に明確な論拠はない。また職員の自殺の理由をこの不倫にしようとしているが、不倫が事実であればそれがバレる事による希死念慮もあろうが、個人特定やPC内部の調査などに起因すると考えた方が自然であり、あくまでも要素の一つだ。遺族からは「死をもって抗議する」と記された本人のメッセージもあり、それは何も不倫のみの話ではないはずだ。そもそもで言えば、立花に何故この情報を持っていたのかが不可解であり、事実上斎藤の援護選挙活動をしている。
 立花の演説などの情報を含めればまだデマと言えるのものはあるかもしれない。その一つととして挙げられるのが各議員の名前が記述され、この機を狙って斎藤元彦を失職にまで追い込んだとされる怪文書だ。この怪文書の真偽、出所では定かではなく、また事実の可能性そのものについて肯定も否定も出来ない為にその事実性をここで検証するとは控える。しかし上記の10人と不同意性交罪や怪文書情報による斎藤知事は嵌められたというストーリーがマスメディアの報じない「真実」として受容し、そして選挙中に流布されるに至る。この立花の動きが斎藤再当選の一役を買ったと言えるだろう。

⑦稲村和美候補に対する選挙デマ
 稲村のHPでは主に次のデマに対する反論を行っている。

尼崎市長時代の退職金は、1千万以上減っています。
・いなむら和美は、県庁建て替えに1,000億円かけません。
・いなむら和美は、「緑の党」ではありません。
・いなむら和美は、外国人参政権を進めません。

リアルタイム検索で見ると「外国人参政権」などについて選挙期間中を通して関連付けられている事がわかる(「県庁」、「緑」を合わせて検索しても出てくるが、一番反応が多いのは「外国人参政権」だろう)。また「極左」というワードとも組み合わせられており、「左」の人物というレッテル張りによって票を逃そうとしている事が窺える。

緑の党に関してはこの前進団体であった「みどりの未来」の共同代表で会ったことを論拠として、この団体が外国人参政権を政策の一つとして掲げていたことが論拠なる。ちなみにこの「外国人参政権」という言説を一番精力的にSNS上で流布していたのは「うえはた のりひろ 神戸市会議員@NorihiroUehata」という自民党議員だろう。彼は清水候補を推していたが稲村へのこういった種類の批判を多く行っており、外国人参政権絡みだけで複数回行い、それなりに拡散している

上部はうえはたのりひろの動画が関連しており、おそらく今回の「外国人参政権」がらみの投稿では一番拡散している。下の「あんかけナポリ@napori_ankake」は有名なネット右派アカウントだ。これらを見ると稲村への批判はネット右派層を中心に形成されているであろうことがわかる。ただし当然ネット右派系のみではなく、例えば斎藤支持の高見ちさき市議(自民)などは県立大無償がチャラになる、県庁舎に1000億使われるだのという投稿をしている(あまり拡散していない)。ただネット右派系と斎藤支持はある程度被っているであろうから、あまりここを区分けをする必要はないかもしれない。公約に記載がなく、そしてHPにおいてこれらの情報をデマとして事実上否定しているにもかかわらず稲村はこれらの政策を実行するという情報は虚偽の情報といえるだろう。
【11月27日追記】
 稲村陣営に行われた公選法への指摘について追記しておく。まず稲村には兵庫県22の市長が支持を表明した。ただこの行為に対して公選法違反ではないかという指摘が存在したが、市長が特定の候補を支持する事はなんら公選法違反には当たらない。市長などに禁止されているのは地位利用による選挙活動であって支持表明そのものは法に触れるわけではない。市長などの首長職の支持が公選法違反になるならば例えば大阪における維新の会の選挙では知事や市長が出てくることは珍しくなく、既に何らかの指導が行われるはずだが当然ながらその様な事実はない。つまりはデマの類だ。
 次の事例は座間市議会議員の「かたおか将志」(元NHK党)による稲村の応援弁士が腕章をつけていないことに対して、「腕章がない」ことを公職法違反とする指摘だが、これは運動員は腕章をつけるべきという部分への指摘となるが実際のところ応援弁士となる人物の大半は腕章をつけないことが慣例化しており、応援として出てくる政治家などの演説は腕章は基本付けていない。厳密に判断した場合、グレーなのかもしれないが実際にこの弁士の腕章有無によって問題になった事はないと思われる。
 そして最後に挙げるのが稲村の選挙事務所の看板の大きさ問題だ。腕章と同じくかたおか将志による指摘で選挙事務所に掲げられた「いなむら」「和美」という看板が公選法に規定されている大きさを超えているというものだ。公選法では選挙事務所の看板類は最大で「3,500mm×1,000mm」と定められているが、上記の看板はその規定を超えるというものだ。しかし稲村の選挙事務所は「いなむら」「和美」と二枚の看板であるためにこの規定に触れないようにしている様も見えるが、ただし二枚の看板を合わせて一枚に見えるようにしてはダメという規定も存在する為にそれには触れる可能性がある。選挙を多く取材しているフリーライターの畠山理仁はそれぞれの看板の下に「いなむら 和美事務所」と書いてあることから独立した看板二つという解釈ではという投稿をしており、その解釈も可能ではあるがグレーな領域と言えるだろう。なおこの投稿をきっかけとして通報があったのか稲村事務所にある看板の「和美」部分は外されるに至る。ちなみに同時期に斎藤元彦事務所の二枚連続看板も外されるに至るが、斎藤事務所の場合はメッセージボードの付箋を貼るスペースがなくなったために看板を剥がしてメッセージ付箋を貼る場所にしたとの情報があるが、真実は不明だ。公選法絡みの指摘はデマとグレーな部分が混在している状態となっている。ただ看板についてはわきが甘かったとはいえそうだ。

⑧斎藤元彦の三宮での演説画像はAIでつくられたもの

 11月10日の三宮での演説画像について反斎藤派のアカウントなどからAIだという意見が存在した。確かに画像中の人物の多くの顔が潰れて表示され、プライバシー保護のために潰したとしても不自然極まりない状態となっている事、また密集度合いなども不自然に見えてそう思われたようだ。インスタグラムの三宮センター演説の公式動画などを見ても特に不自然な点はなく、これは画像をなんかしらの加工をした結果、この様な不自然な状態となりAIだという誤った結論を招いたのだろう。しかしAI作成ではない。

⑨奥谷委員長が局長の自殺の原因を隠している悪人
 百条委員会の委員長である奥谷謙一は立花孝志に「悪人」扱いされている。


https://x.com/tachibanat/status/1851981100002013308

立花によれば百条委員会において議題に関係のない片山副知事が自殺した職員の不倫についてしゃべろうとしたことを遮った際の音声などをアップしている。奥谷側からすれば百条委員会において職員のプライバシーについては触れないことをにしているから止めているのだが、この行為が立花側のストーリーであると不倫が自殺の原因であることを隠している様子であるといった様に誘導していると思われる。この件に関しては奥谷は「奥谷委員長は悪人で、マスコミに圧力をかけ告発文書を作成した元県民局長の死亡原因を隠ぺいした」などウソの投稿をされ、名誉を毀損されたとして告訴状を出している
【11月27日追記】
 上記の百条委員会(10月25日)の音声流出などは百条委員会が公開されない故に起きたもので、百条委員会が知事選挙に不都合な事実を隠しているという「疑惑」が存在した。ただし11月25日の百条委員会の会見において、10月18日に斎藤知事側の弁護士から次回の百条委員会(10月24日、25日)について非公開のことだが正式に公開されるまでの間に報道機関やSNS等に情報を流すことが無いように申し入れられたことが明らかになった。これは個々の議員が発信した場合、ファクトチェックによる正式な反論が出来ないという論理の下に行われている。つまりは斎藤側の要請によってこの非公開の百条委員会の情報は議員側から報道などで伝えられることはなかったが、しかし何故か片岡副知事と奥谷のやり取りの音声が流出し、そして立花がその音声を下にして奥谷側への攻撃を行ったという図式や「疑惑」が生まれたこととなる。果たしてこの一連の流れが「狙った」ものであるかは不明であるが、結果としてはこの申し入れは斎藤に有利に働いたと言える。

⑩奥谷委員長の親族の会社が県庁立て直しの見直しにより倒産し怨んでいる
 上記の立花の誘導にって奥谷は今回の件で「悪人」扱いされており、それが上記の様な「私怨説」を生む。まず兵庫県庁が耐震診断で国の基準を下回るなどの問題もあり建て替え計画が存在したものの、これがコロナ禍後のインフレなどによって当初の700憶から1000億を超える費用見込みとなる。そして斎藤元彦2021年の選挙において県庁再整備構想という公約を掲げ、この新庁舎の建設がストップしているというのが現在の状態となる。そして奥谷謙一だが、彼の周辺が調べられていくうちに「神戸不燃板工業」という企業の社長が叔父である事が調べられ、11月20日にこの企業が官公庁への搬入もしている企業で、しかし倒産しているという投稿が行われる。ただこの情報は直結して立て直しとは繋げられずにそこまで拡散しなかったものの、のちに5chに転載されて700億などの情報が付加される。


※imgurがXにおける投稿画像
※「685」がいっているのは「これマジか ~ 始まってんの?」まで。その後にwikipediaなどで情報があさられて上記の投稿が完成し、コピペしていくつかのスレッドに書かれるに至る。

この情報がXに投稿されることによって情報が拡散して、「奥谷の私怨説」が完成する。しかしながらこのコピペ内容は細部でおかしい。神戸不燃板工業は木繊セメント板という木材をセメントペーストで圧縮成型した建材を扱う企業だが、これはコピペ内にあるような「木質ボード」とは異なる。隅研吾の建築物は数年たつと腐るという問題があるのは確かだが、木繊セメント板は腐敗に強いとされるから「おかわり」はおかしい。そして細部はわからないが、隅研吾の建築物の「目立った腐る」場所に木繊セメント板は使用されていないだろう。700憶は県庁の建て替えの当初の価格であるし、たとえ神戸不燃板工業が受注したとしても700億の案件ではない。などなど情報の精査が怪しいとしかいえない。そしてこの情報を受けて女性自身は奥谷に取材して「百条委員会・奥谷委員長 親族の会社が倒産→私怨で斎藤おろしに加担? Xで拡散する疑惑を「一族経営では全くない」と完全否定」という記事を書いているが見出しにある様に否定している。本人が否定すれば即それがデマになるわけではないが、奥谷は2021年の選挙時に斎藤を応援している。状況的、提示される情報の薄弱さから、これは点と点を繋げただけでまともな検証を経ていないデマだろう。

はばタンpay第四弾のチラシに斎藤元彦の顔写真が使用されている

 11月22日ごろに流布された画像。以前のはばタンpay+の告知チラシに斎藤元彦の顔写真が入っていたのだが、その顔写真が入った経緯としては斎藤のリクエストによるものだ。なので第4弾のこのチラシにも入っている事を批判する論調として使用されているのだが、この第4談の申し込み期間は選挙日である11月17日の翌日の18日からとなる。つまりこのチラシが事実ならば当選前に作成されている事になるが、これはコラ画像である。まず斎藤の画像は彼の選挙用のHPにある写真と同一の様に見えるが、選挙用の写真を使用するのは不自然極まりない。当然ながらはばタンpay+公式にもこの様な画像は存在しないし、現実に配布されているチラシにもこの様なチラシは存在しない。またはばタンの作者もフェイク画像と断じている。ちなみにこの画像だが悪意をもって作成されたものではなく、善意で作られた模様だ。それがわかるのが「西宮つーしん」による記事だ。この記事では当初この画像が使用されたのが、のちに非公式と判明したことから非掲載へと変わったのだが、その中の経緯の説明として次のように記述されている。

この画像は、西宮つーしんと仲良くさせてもらってる知人が善意で作成し、自らの目的で使用していたもので、公式資料ではございませんでした。しかし、その完成度の高さから公式と誤認してしまい、知人への確認を怠るという確認ミスが発生しました。

⑪斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%
 

 11月19日の投稿がきっかけ。日本ファクトチェックセンターの記事をそのまま引用するが、”全国の知事が集まる会議には、斎藤知事が今回出席する政府主催の「全国都道府県知事会議」と、全国知事会が主催する「全国知事会議」があり、拡散した表は全国知事会主催の出欠です。斎藤知事1期目の全国都道府県知事会議への出席率は約7割”

【26日 17時30分 追記】
⑫百条委員会の日当は1日5万円
 11月25日に「百条委員会は1日1人5万が支援」という投稿が拡散するが、その様な事実はない。


https://x.com/mikimikihappy2/status/1861053744122937504

この話自体は11月20日【ゆっくり解説】で存在するし、また投稿が削除されたが「サキガケ@nihonpatriot」というネット右派系アカウントの投稿に対して「委員会出席で1日の日当5万らしい」という投稿が存在する。どうにも11月20日に流布し始めたものだが、拡散したのは上記投稿となる。いずれも何をソースとして語っているのかは不明。投稿削除されたサキガケの投稿内容は「百条委員会の委員長奥谷さん 斎藤元彦さんがパワハラしてなかったと発言」というもので、これも別に5万円という数字は出ていない。当然ながら百条委員会にその様な手当ては存在しない。


 デマにはまだ抜けがあると思われるが、とりあえずはここで筆をおく。特に立花やその影響下における発信はまだあるだろう。ところでこの選挙はSNSやネットの影響が強かった選挙と言われるが、youtubeにおける視聴回数などを含めると立花の圧倒的影響が垣間見える。


https://netcommu.jp/Report/hyogochijisen2024

斎藤元彦批判への相次ぐマスコミを介した批判報道から生まれたであろう「不信感」に立花がこれらの批判が仕組まれたものであるかのように喧伝した効果は大きく、また見聞きする者に幾人かの「悪人」を作った物語も不信感を抱くものの隙間に入っていきやすかったのだろう。立花の情報は真偽不明且つ確かめることは困難であり、プライバシー情報である事から公開そのものが難しかったことも「陰謀」にはプラスに働いている様に見える。その様な情報が立花に渡っていることも「陰謀」を生むが、ここら辺の情報は後に出てくることを期待したい。
 また斎藤元彦に関しては、選挙中にSNS運用を頼んだmerchuの代表 折田楓がおそらく無自覚に内情をnoteに書いたことにより公選法違反などが疑われている。この話は登場人物も多く、その関係者間でも情報の行き違いが発生している為に事実がなんであるか、どのような帰結になるのかは不明だ。なのでここではその内情には触れないが、一つだけ書いておく。どうやら「斎藤元彦は折田楓に嵌められた」という陰謀論的な「説」が一部で生まれている。


https://x.com/May_Roma/status/1860020588418683107

折田のnote記事が「おかしい」のはその通りだが、それは彼女の迂闊さ、無知、自己主張の強さなどによるものが大きいだろう。そもそも誰が何のために「嵌める」のか。斎藤知事が当選した時の為のもしもの爆弾を仕込んでいたとでもいうのだろうか。いずれにせよこの件がどこまで明らかになるかは不明だが、それでも折田に嵌められた、はないだろう。
 選挙の広報という意味では9月26日に斎藤元彦は「組織もなく、自分一人からの挑戦になります。厳しい道のりですが、しっかり歩んでいきたいです。」と書いていた。


https://x.com/motohikosaitoH/status/1839264142412362074

恐らくこの時点で折田側へは接触はしていた可能性はあり、「自分一人からの挑戦」は暴露された今となっては白々しい。またこれらの投稿以後、表面上の「クリーン」さを斎藤自身は帯びさせていた選挙である気はするが、選挙の前後も含めた全体を通してみると一つの知事選ではあり得ないくらいにデマも多く「ダーティー」な選挙だったように思える。

投げ銭用ページ
note.com

福原愛と一緒に映っている男性はクルド人じゃなくてイラク人だし、騙されてインプレッション養分にされてるよ


https://x.com/Parsonalsecret/status/1860031296124445020

 コミュニティノートも付いている通り、これはクルド人の「マヒル」という人物ではなくイラク出身の人物であり「伊拉克老王」という人物で、元動画は福原愛がビリビリ動画に挙げた「与两位国际友人交流中文古诗词 我尽力了」となる。端的にいって上記投稿自体はデマ以外の何物でもない。ところで、この動画は「投稿者: 零敲牛皮糖597.9」とある様にソースが明示されており、そちらの投稿では次のような内容だ。


https://x.com/liuguangchui/status/1859263759765930094

つまりソースとなる投稿では当然「マヒル」などとは言っていない。では何故「髙橋𝕏羚@闇を暴く人。@Parsonalsecret」はこの「伊拉克老王」を「マヒル」という人物であると推定したのだろうか。それは次のような経緯であることがわかる。


https://x.com/kawaguchi_safe/status/1859930548019531955

11月22日に今回と同じ動画を「髙橋𝕏羚@闇を暴く人」は福原愛が中国語をしゃべっている事などから(?)イコールスパイという認識を示す投稿をする。そこに対して「【公式】川口自警団@kawaguchi_safe」が伊拉克老王の容貌がマヒルに似ている事から伊拉克老王のことを「マヒル」であるという認識が示されるに至り、それを受けて髙橋𝕏羚は川口自警団の認識を採用して再度投稿してバズった、という流れとなるだろう。川口自警団はわかってやっているのか、勘違いしているのかは不明だが(少なくともワンクリックで確かめられるソースを見る能力が欠如している)、髙橋𝕏羚に関しては元投稿を見ている為に動画の人物が「マヒル」であると認識していたとは到底思えず、しかし川口自警団の「勘違い」をインプレッション数稼ぎに有利と判断して「クルド人」という単語を使用している可能性が高い。要は自分の客層(反移民、反外国人、ネット右派)の釣られやすさを意図して嘘をついている可能性が高く、そして案の定多くの人が釣られてインプレッション稼ぎの養分となっている。

投げ銭用ページ
note.com

川口市の「日本人不可(外国人のみ入居可能)賃貸」はコラ画像だよ


https://x.com/AmiHeartGlitter/status/1856265450327576709

 コミュニティノートにも書いてあるが、各画像に対して画像検索を行えばこの画像は二つの物件画像を使用したコラ画像であることがわかる。


千葉県習志野市実籾本郷


千葉県市川市大野町

以上の様に千葉県市川市習志野市の物件の画像を使用したものであり、埼玉県の物件ですらない。また条件欄の話をすると、当然の様に今現在このような条件を満たす不動産は貸し出されていないし、そもそも「外国人のみ入居可能」という単語で検索してもこの様な賃貸条件を満たす物件は存在しない。ちなみに日本における拡散元は上記の「ami@AmiHeartGlitter」だろうが、元々は5chで「【悲報】川口市、ついに日本人お断りになるwwwww」が日本での出典となるだろうし、さらにいうならば5chの投稿はredditの次の投稿が元だろう。

下に書いてある文章を自動翻訳に変えると「誰が知っていますか、私たちはいつも外国人が空いているかどうかを尋ねるために電話します、そして私の同僚が今日のジョークを共有しました〜ハハハハ」となる。どうにも中国人の間でごく最近で流布したジョークと思われる。ここでいう「同僚」が何処でこの画像を得たかまでは不明だが、ただ千葉県の物件画像を使用している事、その様な条件が出てこないことからジョーク(?)の為の作成されたデマ画像だろう。

投げ銭用ページ
note.com

イマネ・ケリフ氏に睾丸があるという「報告書流出」は現状では胡散臭い

https://x.com/Reika8833/status/1853456600729792845

 匿名アカウントだけならともかくとして日刊スポーツでも「「睾丸が埋もれている」「生物学的に男」パリ五輪で性別騒動の女子ボクサーのヘリフ、報告書流出」として記事が出てこの件が広がっている。とはいえpoligrafoOPENDWがファクトチェック記事を出している様に現状では胡散臭いとしか言いようがない。
 まずこの「問題」は「報告書の一部のスクショ」が流出したことによるものだが、報告書の著者であるソウマヤ・フェダラ(Soumaya Fedala)とジャック・ヤング(Jacques Young)のうちジャック・ヤングはpoligrafoやDWに対してこの報告書へのかかわりを否定し、イマネ・ケリフについて何かしらのことを書いたことはないとしている*1。もう一人のソウマヤ・フェダラは連絡が取れていないとのことであるが、共著者の一人とされる人物が否定しているだけあって報告書の信用性は疑わしい。またこれを報じたアイト・アウディアによればこの報告書自体がジャック・ヤングがパリの学生に明かしたものだとしているが、それが真ならばジャック・ヤングに倫理上の問題が生じることとなり、その流出過程は疑わしい(なのでその問題を隠す為に否定している、という論理は成り立つが)。それと当然ではあるがDWの報道においては病院側は医療上の守秘義務に関する情報は一切提供していないとしている。
 そしてこの報告書について報じた記事だが、時系列的には表に出るまでに紆余曲折を経ている。


8月30日
アイト・アウディアがイマネの医療記録を調べた記事を数時間以内に公開すると投稿
9月8日
記事を投稿するが削除
9月11日
再度記事を投稿するが、これも削除
10月25日
現在の記事が投稿され、拡散


都度、タイトルなどを変えながら公開という不思議な流れを経ており、これが何故なのかは不明だ。また不可思議な点で言えば9月8日の記事においては医師の名前は「Soumaya Fedad」と「David Joung」とあり、前者はつづりの間違いとしても後者は現在の記事で「Jacques Young」になるのは奇妙な部分だ。とくに「Jacques Young」はアイト・アウディアによれば言いふらした本人となるために名前を間違えるのはおかしい。おかしいといえば、記事中にはジャック・ヤングが学生に明かしたという部分は存在しないことも奇妙な点であるともいえる。ただこれらの奇妙な空白期間や人物名の間違いなどがあるものの、最終的に投稿された10月25日の記事が反トランスジェンダーを隠さないReduxxなどを経由して拡散する事によって今に至る。
 実際のところ、この診断書の真偽は不明だ。それっぽい形式や内容は保っている様に見える。診断書の全体像は出ていないが、それはプライバシーのためにと言えば正当化も可能である(ただそもそも事実ならばこの流出自体が重大な問題だ)。とはいえ診断書に沿ったとしても、発端の記事の診断書のスクリーンショットには診断対象となっている「イマネ」という人物(この「イマネ」がイマネ・ケリフであることは立証されていはいない)が「臨床歴を考慮すると、女性の方が常に好ましい」というような事が書いてある。ルモンドによればイマネ・ケリフ側は今回の件で法的措置を検討している様で、この件はもしかしたらのちに明らかになる可能性もある。ただ少なくとも現状ではこの診断書は胡散臭さが抜けないし、乗ったとしても診断書は「女性」だと判断しているようだ。

投げ銭用ページ
note.com

*1:探し当てられなかったのだがヤングに対してアウディアが診断書を見せようかというやり取りが存在。画像の出所がわからないので脚注に画像リンクを貼っておく。

シンガポールは土葬も可能だよ


https://x.com/Southern_X777/status/1852655947501769084


https://x.com/Parsonalsecret/status/1852678856458818017

 シンガポールでの土葬(埋葬)は可能です。

シンガポール環境庁
With effect from 1 November 1998, the burial period for all graves will be limited to 15 years. At the end of 15 years, the graves will be exhumed. For those whose religions permit cremation, the exhumed remains will be cremated and stored in columbaria niches. Where burial is mandated by religion, the exhumed remains will be re-buried in smaller individual plots.
(1998年11月1日より、すべての墓の埋葬期間は15年に制限される。 15年経過後、墓は掘り起こされる。 宗教上火葬が許可されている場合、掘り出された遺骨は火葬され、コロンバリア・ニッチに保管される。 宗教により埋葬が義務付けられている場合、掘り出された遺骨は小さな個別の区画に再び埋葬されます。)
※自動翻訳

死後には遺体埋葬許可申請を選ぶか、火葬許可申請という選択が用意されており、どちらかを選ぶかは個人の選択だろう。シンガポールでは15年間後に掘り起こされるが、そこでも宗教上の扱いにとって火葬するのか、そのまま小さな区画へと再び埋葬されるのかが選択可能であり、可能な限りの配慮はされている。またsilverstreakというシルバー世代向けのシンガポールのHPによれば、シンガポールでは5人に4人が島内にある火葬場で火葬されるとある。「島内にある火葬場」という表現から残りの1人が必ず埋葬というわけではないだろうが、しかし残りの多数は埋葬を選択してはいるだろう。ちなみにだが、シンガポールのムスリム人口は15%ほどだとされている。「SouthernCross@Southern_X777」は別の投稿で、近年は火葬を選ぶムスリムも増えているというが、ソースも示されず、またそれっぽいキーワードでもその様な統計的事実は特に見当たらない。そもそも国の制度上いずれも選択可能な状態であるので、個々人のムスリムで火葬を選択している人間がいたとしてもシンガポールの埋葬制のシステムがある事は事実であり、日本におけるムスリムの土葬へ反対する根拠としては到底機能しえない。

投げ銭用ページ
note.com

「男女共同参画9兆円の内訳」とされているイベント一覧の表は不適切

【11月5日】一部表現を修正。



https://x.com/nihonpatriot/status/1852297187364941851

 メモがてら。「男女共同参画9兆円(10兆円)」というネタは古くって、2006年時点で「「男女共同参画予算10兆円」のカラクリ」というブログ記事が書かれているくらいに古いデマの類。要は男女共同参画事業における関係予算(男女共同参画社会の形成に効果を及ぼす施策・事業)すべてをひっくるめた予算となる(ちなみに今年度は10兆円*1。ただこれが「男女共同参画社会の形成を目的とする施策・事業」となると2000億円*2、内閣男女共同参画予算となると15億円となり*3、事程左様にこの9、10兆円という数字はある意味で言えば盛られている数字ともいえる。この予算10兆円の話そのものについては上記ブログ記事や2020年のバズフィード記事でも再三指摘されている事なのでここでは割愛する。
 さて、冒頭の画像では謎の表をもってして「男女共同参画9兆円の内訳」としている。この表を見て「9兆円」の内訳と本当に信じているかは不明だが、それはとにもかくにもこの表は何なのかと言えばネット保守のインフルエンサーであった「海乱鬼@nipponkairagi」が2022年12月に投稿した次の投稿がおそらくの出所と思われる。


https://archive.md/YZl9J

海乱鬼は現在アカウント削除済みであり、何に反応して調べるに至り、そしてどのようにして調べてこの表を作成したのかは不明だが、この表にある「男女共同参画事業イベント一覧」とは「男女共同参画センター」という全国に356ある施設で行われた「イベント」となる*4。またこの「イベント」だが「公的主体」が主催するイベントと、施設内にある貸しスペースを「私的な団体」が借りて行ったイベントが混在していると思われる。後者の例としてわかりやすいのが「TWICEのサビだけ踊る会」だ。これは2022年12月に札幌市男女共同参画センターで開催予定だったイベントと類推できるが、このイベントの事務局は「TWICEのサビだけ踊ろう in 札幌事務局」というもので男女共同参画センターが行うものでもないし、会場は「健康スタジオ1」と書かれており、貸しスタジオであることがわかる。あくまでこの「TWICE」のイベントは男女共同参画センターの施設を利用しただけであって、それを「男女共同参画事業イベント」というのは無理筋だろう。
 ただし表に多く見受けられる○○講座/教室というのは実際に男女共同参画センターが行っているものが多数と思われる。とはいえこれらの講座系は有料のものが多い。それがわかりやすいのが公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会による事業報告書(2023年度)だが、多くの講座は参加費が設定されている(勿論、無料も存在する)。

この参加費による収支は不明だが、多くの税金支出を伴うのか、というよりも少なくとも「男女共同参画9兆円の内訳」的な語りをするにはあまりにも不適切な例示だろう。またセンターによりけりだと思われるが、札幌市の男女共同参画センターは利用料金収益や自主事業収益によって黒字の模様だ*5

これはおそらくうまくいっている部類なのだろうと思えるが、政令市などの施設として充実している男女共同参画センターは貸しスペースや講座などである程度の収益も見込めるのかもしれない。
 以上、見てきたように「男女共同参画9兆円の内訳」として男女共同参画センターにおける「イベント」を持ってくるのは不適切だ。表の中には検索してももはや出てこないイベントが複数存在しており、発端となった海乱鬼がどの様にしてこれを作成したのかは謎だ。「こくちーず」というサイトでは「男女共同参画イベント特集」があり、そこからさまざまな事務局が主体となっているイベントが告知されているのでそういったもの中から「耳目を引く」ものを選んだ、などとも考えるがそこには強い恣意性が見受けられる。これは表にある「イベント」にカルチャースクール的な講座を偏って多そうなことからも窺える。実際、「燃やす」ことを念頭に置いて作られた表なのだろうから恣意性が高いのは当然なのだが。

投げ銭用ページ
note.com

『それでもボクはやってない』のモデルが再犯していたというデマについて

【追加(22日0時)】
記事のタイトルを「話について」から「デマについて」に修正しました
【追記(22日10時】
長崎満及び映画パンフレットなどの情報から取材などの時系列を一部修正、加筆しました。


 冤罪事件を扱った映画『それでもボクはやってない』(ワードとしては『それでも僕はやってない』と漢字表記が多いが、「ボク」が正しい模様なのでそれに準じる)のモデルが後に再犯していた、という投稿がここ1,2年ほどよく見るようになって消える気配があまりなく、その様な事実は少なくとも現時点では存在しないのでここに記しておく。まずこの件に関しては2024年に「しお@sodium」によって拡散され、当時にデマである事がまとめられている。『それでもボクはやってない』という映画は実際の複数の事件をモデルとしている。その一つである2000年12月の西武新宿線高田馬場駅における矢田部孝司が容疑者となった事件で一審は有罪だが、二審で無罪となる。矢田部は後に娘と『お父さんはやってない』という書籍を出し、また「冤罪犠牲者の会」という会にも入っているが、当然ながら再犯の報道は一切ない。そして二つ目のモデルが2000年5月の京浜急行電車内で女子高生のスカートの中に手を入れたとして逮捕された小泉知樹となる。小泉は冤罪を訴えるも懲役1年6月の刑を受け服役、2004年に出所し、その後に『彼女は嘘をついている』という本で冤罪を訴えている。そして小泉は2015年に再審請求をするのだが、この再審請求がどうなったかの続報もないし、当然再犯の報道もない。また映画公開時に紹介された記事では2003年の西武鉄道新宿線における事件も扱われており、それもモデルの人であろう。こちらは2004年に無罪判決となっており、前二者の様に活動などをしておらず無罪判決のために名前を伏せられた形だが、該当人物による再犯報道と思われるものはない。当然、痴漢犯罪がすべて報道されるわけではないが、とはいえ現状のところ「報道ベース」で「モデルが再犯した」という情報は存在しない。
 そしてこのモデル再犯説の初出だが、これ自体はいつ生まれたのかは不明だ。ただ少なくとも2019年の5chの書き込みで類似の言説の存在を確認出来る。


出典:【朗報】JKに1カ月痴漢をした痴漢犯(30代デブ)、逝く 足かけおじさん大勝利へ!!!

ただ上記は「再犯」とまでは言っていないことから今の「モデル再犯説」とはやや異なる。また小泉が懲役刑を受けたことそのものは事実なのでそれを受けての書き込みの可能性は存在する。そして明確な「モデル再犯説」がでているのが、2020年の以下の書き込みだ。


出典:正義マンの嫁が悲痛ツイート「世の中いいことをしても報われない。涙が止まらない」

この再犯説が何をソースとしているのかは全く不明だが、2020年時点のTwitter上では類似言説を検索してもヒットせず、今現在は消えただけの可能性もあるがまだ言説そのものは流布していないことがわかる。2021年には再犯説ではないが5chで「痴漢冤罪映画「それでも僕はやってない」、主人公のモデルが実際に痴漢して懲役食らっていた※リンクはまとめサイト」というスレッドが建っており、しかしソースは2015年の小泉による再審請求の記事であり「実際に痴漢した」という記事ではない。ただこういったスレッドなどから「それでもボクはやってない」の「モデルが実際には痴漢をしていた」という言説の流布が強まっている事がわかる。そしてこの認識が5chを飛び出て広がったと思えるのが2023年1月の次のTwitter上での投稿となる。

ソースを求めるリプライに対しても無反応なのものあって「お肉ちゃん@NIKU_no_aburami」が何をソースとしてこの発言をしているかは不明となる。事件内容そのものは小泉の事件と同一だが小泉は無罪判決は受けておらず、繰り返すが矢田部もそのような再犯報道はない。ただ書きぶりからして2015年の再審請求を受けての発言なように思える。この投稿がなされた2023年1月以降に類似の投稿が複数見られ*1、また2023年9月には5chに「【悲報】痴漢冤罪映画「それでも僕はやってない」→後にモデルの男性が痴漢で服役」というスレッドまで立っている。しかしこのスレッドの1は次の様に2015年における再審請求をソースとしており、これは「再犯」ではない。

それがそのまま流布して今年4月の「しお@sodium」へと繋がっていくのだろう。つまり、この「モデル再犯説」の形成過程として考えられるのは、2015年における小泉の再審請求報道をその数年後に質の悪い情報源から見聞きする事によって、「再審請求」ではなく「再犯」報道だと誤認した/させた人間によって生まれたデマだと考えられる。
 ただしまたこれとは別にもう一つの「モデル再犯説」が存在し、「無罪(冤罪)後に再犯」はこちらからの由来も強いと思われる。


https://x.com/yuijack/status/1847417559064465425

この「🍎@yuijack」の言説は今までとは別の「モデル再犯説」を述べている。それが2024年8月に「月島さくら✿@sakuratsukisima」によって示された長崎満の事件だ。この月島の投稿以前にも2019年に人物名は出さずとも同内容と言える投稿が一つ確認できるが、当時は全く拡散されておらず、「拡散」という意味では月島の投稿がきっかけの可能性は高い。

この長崎満だが1997年に痴漢で逮捕され冤罪を主張、しかし2000年の判決で有罪となるものの、その後に無罪を勝ち取ったようで(追記:2002年に最高裁への上告が棄却され一審、二審における5万円の罰金の判決が確定(読売朝刊 2003.7.16))岩波新書の『裁判官はなぜ誤るのか』においても扱われた「冤罪」事件の当事者だ。そして彼は「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」の代表者となっており文字通り痴漢冤罪に関する団体だったが、2003年7月その運動の帰り中に盗撮をし、そして記事がネット上にないので5chの過去の書き込みに頼るが、それを見る限り2004年2月に東京地裁によって懲役6月執行猶予4年の有罪判決を受けた(読売朝刊 2004.2.4)、というものだ。長崎がその後控訴したのか不明だが続報がない事を見るとしなかったのだろう。ただ、この長崎満が『それでもボクはやってない』の「モデルの一人」とまで言えるかというと甚だ微妙だ。例えば周防正行は2021年のインタビューでは次の様に応えている。

何人ぐらいの法曹を取材されたのでしょうか。
分からないですね。最初は痴漢冤罪事件の取材から始まって、「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」に関わっていた法学者や全国痴漢冤罪弁護団会議に出席して話を聞きました。
不快な思いで映画館を出てもらう必要があった 周防正行監督インタビュー 完全版Vol.1  

周防が行ったのは「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」に関わっていた法学者への取材だ。ただそこには長崎満事件に関しての取材も含んではいただろうし、その中に本人への取材があった可能性そのものは否定できない。ただそれをもってして「モデル」とするのは性急だろう。時系列的に言うならば『それでもボクはやってない』(2007年公開)の製作きっかけは「東京高裁での痴漢事件の逆転無罪判決の記事」と書かれており、また映画パンフレットにおいては直接的に矢田部の事件であると記述されている。そしてその日付は2002年12月、取材を開始したのが2002年末ごろとして3年の取材期間中に長崎の事件が発生が有罪判決に至るまで含まれており*2、この最中に「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」は取材したであろうことは間違いない。故にそれらを考えれば長崎満の事件が何らかの形で作品にフィードバックされてはいるで可能性はあろうが、それがイコール「長崎満が『それでもボクはやってない』のモデルの一人」といって良いかは、取材の最中で有罪判決を受けているだけに微妙といえる。実際のところ周防正行が長崎満事件に関してどの様な考えを持って作品に反映させたのか、させていないのかは不明だ。
 以上のことから事実としていえることは「映画の明確なモデルとされている人物に「再犯」の事実はない」、と「取材対象となった団体の人間が盗撮をして有罪判決を受けた。そしてそれは冤罪ではないであろう」という事になるだろう。「モデル再犯説」そのものは長崎満という「取材対象者(団体)」の「冤罪主張→再犯」という事実と、小泉の再審請求情報が幾度かネット上に出ることによって長崎満の情報と合わさって再浮上して拡散した「説」だと考えられる。

投げ銭用ページ
note.com

*1:例えばhttps://x.com/mtmoymr/status/1658748733117575171https://x.com/0k0m3_/status/1668900096455630848など

*2:周防正行それでもボクはやってない 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』においては3年半、200回を超える膨張とあり、これが「3年間」の取材なのだと思われる。

有田芳生のコラ画像についての出所

 この画像については日本ファクトチェックセンターが「有田芳生氏が小学生への性的行為を認める発言? 投稿画像は捏造【ファクトチェック】」という記事を挙げており、ファクトチェックの内容自体にはデマであることの説明そのものには問題ないと考えるが、詳細がかゆいところに手が届いていない感があるので補足的に記述しておく。
 まずそもそも有田芳生のアイコンがズレていたりとコラ画像としては質が低い。ただそれは置いとくとして、このコラ画像の文面は2017年に5chで「松本人志「女子小学生でも乳さえ出てればもうご賞味あれ!の合図」」(※リンクはまとめサイト)というスレッドが立ったことによって広まったもので、スレッドタイトルからわかる様に松本人志の発言である。これはラジオ番組『放送室』の2003年7月17日放送の第94回における松本人志での発言の様で、音源も確認できる投稿が存在する。
 そしてコラ画像の出所だが日本ファクトチェックセンターは画像検索では1月末ごろまでは確認できたとしているが、それ以上は遡れなかった旨の記述がある。画像検索はこの手の事実確認においての常道ではあるものの当然ながら削除されたものは出てこない。しかしながらもう少し遡ることは可能で、拡散した投稿は「湯豆腐@yudofu385」による1月17日の次の投稿だ。

現在この投稿は削除されているが幸いなことにスクショが残っていた。なぜこの画像に行きつけるかだが画像検索ではなく文章検索で突き止めることができる。例えば「もちろん同意が必要だけど」というワードで検索すると1月17日に投稿の形跡が発見できるし、「有田芳生 ロリコン」で検索しても反応を探すことができる。画像検索は最もわかりやすい手段ではあるが、こういった関連しそうな文章による検索によって探し出すことも可能だ。また当時の「湯豆腐」の投稿に対する反応も現在残っている引用投稿の残骸を見ても数十件を超える引用がついていることからも拡散元はこの投稿である事が類推できる。ちなみにこの「湯豆腐」はよく他の画像をパクってくるアカウントな模様であり、コラ画像がこのアカウントのオリジナルではないであろうことがわかり、そして自身が次の様に出所の投稿を提示している。


https://x.com/yudofu385/status/1747455046055542787

そしてリンクされた投稿が1月16日の次のものとなる。


https://archive.md/eTfBY

「れいわ新選組勝手連@立憲共産党はゴミ@rzkvlu」は現在アカウントが凍結されているためにどのようなアカウントであるか、「湯豆腐」が言っている様に有田のコラ画像が「たんまり」あるかは不明だ。ただ現存するこのアカウントの画像から悪意をもったアカウントであろう事は推測できるし、その振る舞いかられいわ新選組の支持者であるかも疑わしい。

この他にもこういった投稿のスクショは多く存在しており、一部で有名なアカウントだったのだろう。こういったアカウントが作成したコラ画像を受けてバクツイした投稿が拡散し、その画像だけが残りまた今回コラだと気づかずに投稿して再拡散したというのが今回の流れとなる。

投げ銭用ページ
note.com