#エンタメ視聴体験記 ~中山功太 meets WOWOW~|WOWOW
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#エンタメ視聴体験記 ~中山功太 meets WOWOW~

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お笑い芸人の中山功太さんが、WOWOWの多岐にわたるジャンルの中から、今見たい作品を見て“視聴体験”を綴る、読んで楽しい新感覚のコラム連載!中山さんは、23年3月~5月にWOWO…
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大傑作サスペンス映画を観て想う、“真実”と“嘘”を分かつものとは?【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだが、真実は時として、作り話以上に嘘くさくなる事がある。  真実を信じてもらえないという事は実に辛い。  忘れられない出来事がある。  僕は新幹線で移動する際、降車駅の到着時刻3分前にスマホのアラームをセットし、余裕を持って降りる様にしている。  皆様も経験があると思うが、新幹線は台風や積雪によって到着時刻が遅れる事がしばしばある。  それは全くもって仕方がない事なので、到着が遅れた時は寝ていようが起きていよう

お笑い賞レース全盛時代に、世界最高峰の音楽アワードを初視聴して驚愕したこと【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  お笑い界は群雄割拠の賞レース戦国時代である。  「そんな事わかってるから黙っとけ」と思われそうだが、事実そうだ。  全国区の賞レースの基盤を作った、M-1グランプリの功績は非常に大きく、また、あまりにも非情だ。  元々、発起人のお一人である島田紳助師匠が若手漫才師に「10年やって駄目だったら辞める様に」と定めた、コンビ結成10年以内という出場規約(現在は15年以内)。  これがあったから若手漫才師は「M-1優勝」という明確な目標を持つ事ができたし、M-1

クリストファー・ノーラン監督のSF超大作と宇宙の真理を追究していた博士の話【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  小学校低学年の頃から、近所に博士が住んでいると聞かされていた。  聞かされていただけで、実際にお会いした事はないが、住んでいたのは確かだそうだ。  博士と言っても漫画の発明家の様な、低身長サイドパーマ白髪ではなかったと思う。  ビーカーからフラスコに薬品を入れて爆発する事故などもなかった。  グルグルメガネのあたふたノッポ助手もいなかった。  おそらく大学院で博士号を取った元大学教授か何かだったはずだ。  博士は長年に渡り、自宅に籠り宇宙の研究をしていた

関西芸人の僕にとって異色の存在、とんねるずの魅力と凄みを改めて知る【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  同世代の方ならわかっていただけると思うが、多感な時期にテレビを席巻していたのは、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるずの三組だった。  僕は昭和55年生まれで、幼少期に吉本新喜劇に触れダウンタウンに憧れて吉本に入った関西芸人だ。となると、他の芸人は好きじゃないのではないかと思われる事が多々あるが、全くそんな事はない。  当時バラエティ番組を牛耳っていた三組に共通する事といえば、冠番組でスタジオコントをしていた点だと思う。  ダウンタウンとウッチャ

人生を変えるような傑作青春映画を観て、どうにもならない過去を思い出さずにいられない【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  高校時代の恋愛は何一つ上手くいかなかった。  片思いは全て片思いで終わったし、付き合っても全部自分のせいで別れた。  初めて彼女ができたのは高一の夏休みだった。  両親と大喧嘩して家出して、実家から徒歩2分の友達の家に泊まっていた頃に出会った、他校の同学年の子だった。  少しだけ大人びていて、よく笑う、凄く可愛い人だった。  お互いに惹かれ合ってるのはわかっていたのに、彼女に何を聞かれても「ダルい」とか「眠い」とか「誰かシバきたい」とか言ってパンクスを気

初期衝動で芸人の道を歩んできた僕が、小林聡美さんのコンサートに一流の神髄を見た【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  2002年にピン芸人として初めて舞台に立ってから、20年以上の歳月が流れた。  本来コンビでコントをやりたかった自分にとっては、右も左もわからない状態で、とりあえず始めたピンネタだったが、今でも新ネタを作り続けている。  何年やってもネタの作り方の正解はわからないが、デビュー当時のネタは本当に無茶苦茶だった。  それも、ライブハウスのマスターが「あのバンドは若い頃ホント無茶苦茶だったよ」と笑みをこぼして懐かしむタイプの美談ではなく、普通に無茶苦茶だった。

わからなくても自由に感じればいい― 芸術を知らない僕の魂を揺さぶった衝撃の66分【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  一般的に十二分に大人である44歳になったが、今の今まで芸術という物に能動的に触れた事がなかった。  音楽を聴くのは大好きだが、古いパンクやロックが多い。  古いパンクやロックの人達は、きっと芸術扱いされる事が嫌いだろう。  映画は芸術だろうか? 芸術的な映画は沢山あるだろう。  しかし「これはアートだ」と大風呂敷を広げて柿ピーだけ包んで縛った様なオシャレ映画に興味はない。  今回取り扱う作品「ダムタイプ pH」は今までこのコラムの為に視聴した作品の中で

人は自分の為じゃなくても泣けると僕に教えてくれた、韓国の名作映画で過去イチ号泣【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  ご存知の方もいるかと思うが 「人は自分の為にしか泣けない」という仮説がある。  家族や友人など、大切な人が亡くなった時も「大切な人を失った自分が可哀想だから泣く」のだそうだ。  果たして本当なのだろうか?  「感情以外の涙は違うはずだ」という屁理屈で打ち破るべく検証してみたい。  あくびした時の涙。これは人体の構造上、勝手に流れる涙だ。自分の為に泣いてはいないのではないか?  しかし僕は、単独ライブのネタ作りなどであまりにも眠い時、あくび泣きの後に歯を食

数限りないタクシーの思い出と優しくて面白い極上の娯楽映画『TAXi』【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  忘れられない言葉がある。  昔、大阪で活動していた頃、先輩の麒麟田村さんが興奮気味にこう述べたのだ。 「タクシーって凄くない? 手挙げたら停まってくれて、乗せてくれるねんで? 優しすぎるやろ?」  田村さんが心優しい方だとはいえ、目から鱗すぎた。  僕には、タクシーが優しいという発想はなかった。 「高倉健さんの写真集のタイトルとは?」という大喜利お題の田村さんの回答「フォト倉健」と共に、今でも脳裏に焼き付いている。  芸人は、実に頻繁にタクシーに乗る

THE YELLOW MONKEYは永久に不滅だと、東京ドームで確信した夜【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太 <本文でライブのセットリストや具体的な内容に触れています。ご注意ください>  自分にとっての初めてのロックスターは、THE YELLOW MONKEYだった。  高1の頃にカラオケ店のロビーで流れていたライブ映像を観て、一瞬でとりこになった。 本連載の『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』の回でも書かせていただいたが、僕にとってTHE YELLOW MONKEYは特別なバンドであり、唯一無二の存在だ。  2024年4月27日、僕は東京ドームに

いつまでも少年漫画に心惹かれる中年芸人の僕が、傑作アニメを観て思い出す中二の初夏の出来事【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  幼い頃からずっと、少年漫画が大好きだ。  中年実写となった今でも、少年漫画を読んでいる時だけはあの頃の気持ちに戻れる。  4つ歳上の兄の影響もあり、特に週刊少年ジャンプが好きだった。  四半世紀以上も前のことだが僕が中学生の頃、月曜日に発売されるジャンプを土曜日に読める謎のルートを持った、S君という野球部の同級生がいた。  中学二年の初夏。  誰もが楽しみにしていた「DRAGON BALL」の最新話を読んだ彼は、街中を自転車で練り走りながら叫んだ。  「

何度でも観たくなるカッコいいシーンが満載!“最強”の韓国アクション映画を芸人の僕が全力でプレゼン!【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  断言してしまうが、男はみな最強が好きである。  幼い頃からおびただしい人数の男と会話をしてきたが、統計学的に見ても間違いない。  「○○しか勝たん」や「○○で優勝してきた」といった日本語の乱れを憂いている僕も、最強だけは大好物だ。  格闘技において「相撲立ち技最強説」という仮説がある。  最強の正しい使い方ではあるが、こんなにロマンに満ちた言葉はそうそう無い。格式高い大相撲こそがバトルにおいても最強である、なんてあまりにも格好良すぎる。  また、Y

ファッション大好きだけどダサい僕をとりこにしたデザイナーたちの華麗なる“デスゲーム”【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  僕にはファッションセンスがない。  おそらく芸人でもトップクラスのダサさだと思う。  僕の事を知って下さっている読者に「いやいや、そんな事ないですよ」と言って欲しいから書いてる訳ではなく、正式にダサい。色や柄の組み合わせもわからないし、流行にも疎い。  面倒臭いからという理由だけで、10年前からパンツの裾直しもやめた。  ではファッションに興味がないのかと言われるとそうではなく、服も靴もめちゃくちゃ好きだ。  多分、オシャレな人と同じぐらいか、それ以上に

嫌味しかない僕の心をすっかり浄化させた、本場フィンランドのサウナを満喫する磯村勇斗の爽やかさ 【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  家の風呂が嫌いだ。    家の風呂に入る意味がわからない。  家庭用バスタブ業者やシャワーヘッド業者の方には本当に申し訳ないが、僕は入りたくない。    よくバラエティ番組で、俳優やタレントが「私ホントお風呂入らないんですよ~」と言って意外性を見せて最速で売れようと張り切ってるシーンを目にするが、厳密に言うとあれは嘘だ。  湯船に浸からないだけでシャワーは浴びているはずだ。    僕は違う。    冬はシャワーも浴びない。  ウェットティッシュで要所を拭き取