トレーラの迷子を未然に防ぐ。IoTによる 「物流の2024年問題」解決の糸口とは【ELTRES IoTネットワークサービス】|ソニーネットワークコミュニケーションズ公式note
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トレーラの迷子を未然に防ぐ。IoTによる 「物流の2024年問題」解決の糸口とは【ELTRES IoTネットワークサービス】

この1カ月で、あなたはいくつの段ボール箱を受け取りましたか?

コロナ禍を経て、ネットショッピングがいっそう生活に根付いたことを実感する今日この頃。便利になったものの、物流量の増加は「2024年問題」の要因の一つにもなっています。その問題に対し、「ELTRES™(エルトレス)」は「車両管理の最適化・業務効率化」でアプローチを行っています。

ELTRESは、物流DXをはじめ、スマートシティやスマート農業など、幅広い分野のIoT化を後押しするソニー独自の通信規格のこと。

あるときは「高齢化の進む農家さんに代わる、24時間体制の田んぼの見回り役」になったり、あるときは「携帯電話の電波が届かない山や海での救助活動」に用いられたりと、さまざまな業界のお困りごとを解消してきました。

ELTRESの通信モジュールは16mm。ちょうど指先に乗るサイズです。

ELTRES…長距離安定通信、高速移動体通信、低消費電力という特長を持つ、ソニー独自の低消費電力広域(LPWA)無線通信規格。見通し100㎞以上の長距離でのデータ通信や、時速100㎞以上で高速移動する電車などでも安定した無線通信を実現。GNSS(グローバル衛星測位システム)を活用した位置/時刻情報の取得も可能。

「こんな小さなモジュールで何ができるの?」と思われるかもしれません。

では、実際にどのようなことができるのか。今回はELTRESを採用し、物流業界の新サービス「docomapLongrange(ドコマップロングレンジ)」を作り上げた株式会社ドコマップジャパンの代表取締役 浦嶋一裕さんにお話を聞きました。


通信が安定したバッテリー不要のGPS。電池寿命の長さが決め手に

「ドコマップジャパン」が提供しているのは、車両の位置情報が一目でわかる車両位置情報管理システム「DoCoMAP」。追跡したい車両に端末を取り付けるだけで、「今車両がどこを走っているか」「どこを走行してきたか」が正確かつ瞬時にわかり、お客さま対応や緊急時対応に役立てられます。

「DoCoMAP」のイメージ。さまざまなGPSデバイスに対応

車両の追跡を可能にした「DoCoMAP」では、次のサービスとして「トレーラへの取り付けが可能な、電池駆動のGPS」を探していました。

一般的にトレーラ自体にはバッテリーがないため、電源を要するGPSの取り付けが難しく、GPSを取り付けるのはトラクタ(トレーラヘッド)部分となります。そのため、トレーラ部分をトラクタから切り離すと、どこに行ったのかわからなくなることが多いのです。

この「トレーラの迷子」、実は多くの運送会社さんで起きていることで、一般的に「所有しているトレーラのうち、1割は今どこに停車しているかわからない」という状況になっているそう。100台なら10台、1,000台なら100台にも上る計算です。

迷子のトレーラを見つけ出すためには、「四方八方に電話をかけ、自転車などで広大な駐車エリア一帯を探します。特に港では、船からトレーラだけが先に降ろされる場合に見失うことが多く、数時間かけて探すこともよくありました」と浦嶋さんは話します。

浦嶋さんが新たなGPS端末に求めていたのは次の条件でした。

・電源が不要であること
・通信が安定していること
・電池寿命が長いこと

しかし、一般的な端末の電池寿命は長く持っても半年と、非常に短いものばかり。取り替えの負担を考えると、なかなか採用できるものはなかったそうです。

そのような中で出会ったELTRES通信を使ったデバイスは「4時間毎の通信で電池寿命4年」。「そんなものが世の中にあるのかと非常に驚き、実物を見たその場で『契約したい』と話しました」と振り返ります。

LTEなど従来のモバイル通信に比べてELTRESの電池寿命が長い理由は、高負荷な信号処理を受信局側で行い、ユーザー送信端末側はセンサーデータを送るだけの単純動作のみとしているため。初めて触れる通信方式に、浦嶋さんの中には「正直、電波の強度は大丈夫なのだろうか、という懸念もあった」そうです。

しかし、「試験環境でのトライアルを行ってみたところ、新幹線に乗っても電波が受信できたのです。『これなら大丈夫だ』と実感し、安心して導入できました」。

出会いからトライアルを経て、実装までにかかったのは10カ月。「実装まで非常に早く、サービスの質に対して、毎月の利用コストもかなり安い。加えて、これまでは1つのデバイスに対してサーバーを1つ自社で用意しなければいけなかったところを、ソニーネットワークコミュニケーションズの場合はデバイス種類に関わらず1つのサーバーに集約できることも魅力的で、導入後も満足しています」と話します。

株式会社ドコマップジャパン代表取締役の浦嶋さん

取り付けは2本のネジ止めのみ。車検日、メンテナンス予定まで車両単位で把握

こうして誕生したのが「ELTRES™ Asset Tracker(エルトレス アセットトラッカー)」を採用した「docomapLongrange」サービス。ELTRESの特長である「長距離安定通信」「高速移動体対応」「低消費電力」を活用し、対象のトレーラに取り付けるだけで、バッテリーレスで4時間に1回の位置情報取得(※1)で4年間メンテナンスフリーの利用ができます。

(※1)通信間隔は、ご要望により2時間、3時間、6時間へ変更可能

実際に「docomapLongrange」を導入している、奈良県に本社を構えるフジトランスポート株式会社での活用事例を見てみましょう。

「切り離されたトレーラがどこに駐車されているのかを知りたい」と考えていた同社では、保有する約100台のトレーラに「ELTRES™ Asset Tracker」を設置。

赤枠にあるのが「ELTRES™ Asset Tracker」
メンテナンスや給電が不要なため、任意の位置へ取り付けできる

「ELTRES™ Asset Tracker」のGPS情報は「DoCoMAP」の管理画面上で確認できます。

車両番号や種別がGoogleマップ上に表示されます
「DoCoMAP」のクラウド上では電池の残量の表示も可能。電池残量が少なくなれば赤く表示する警告機能も備わっています

担当者さんは

「これまでは、トレーラの駐車位置の特定に多くの時間を費やしてきましたが、導入後は明確に時間が削減できています。また、車検日やメンテナンス日の日程を登録することで、期日に近づくと地図上でお知らせしてくれる機能もあるため、配車担当者以外に整備担当者も活用しています。」と話します。

浦嶋さんは「活用は今後も一層広がっていくはず」と確信します。

「日ごろのメンテナンスや給電も不要で、4年間、トレーラーがどこに停まっているかが一目瞭然となる。それがたった2本のネジ止めだけ叶うのですから、やはり画期的です」。

車検日やメンテナンス日など、車両ごとの点検日も一覧で確認可能。期日に近づくと管理画面上にアラート告知が届きます。

1,000〜2,000台の車数を保有している運送会社さんの場合、毎月約100台の車検実施が必要なケースもあります。「うっかり見落としてしまえば、道交法違反、万が一事故でも起こしたら、ドライバーの免許停止になる。それをこれまでは目視やExcelなどの手作業で管理してきたんです」。

営業先では「それもできるんだ!」と驚かれることも多いそう。「docomapLongrange」の活用は今後ますます広がりそうです。

「物流の2024年問題」の本質とIT活用で私たちができること

物流業界のIoTを推し進める理由について浦嶋さんは「お困りごとを少しでも助けたいから」と話します。

物流業界は現在、「2024年問題」に直面しています。働き方改革によりドライバーさんの労働時間を是正した結果、さまざまな問題が浮き彫りになってきました。運送業界の人手不足による倒産が半期で過去最多となるなどの問題も起きています。

この問題について浦嶋さんは「元々5年の猶予があったのに、現場の対策の遅れが混乱を招いている」と率直な意見を話します。

「重要課題である【ドライバーの待遇改善】と【人材の確保】、これが両方とも難しいんですよね。お給料を上げるための原資もないし、募集をかけても人が集まりにくい。それが端的に言う2024年問題だと考えています」。

また、その状況に対してITにできることは「ドライバーの稼働状況の見える化」だと指摘します。

「ITの力では、人も給料も増やせません。根本的な解決はできないけど、『どれだけ過重労働が生じているか』など、自社の問題点を見ることができます。現実に目が向き、具体的に必要なアクションがわかる。これこそがITの力だと思います 。

僕らにできることは限られています。日々の業務を行うのも、トレーラを探すのも、工場まで運んで車検をするのもすべてお客さま。そこをゼロにすることはできないけど、僕らのテクノロジーが日々の効率性を変える一助になることはできるはず」と語りました。

「強みを生かして、物流業界を支えたい」――ELTRESチームの想い 

「2024年問題」に直面した今、ELTRESでもっとできることがあるはず。
チームメンバーは次のように語っています。

「本質的な課題解決に向け、物流業界全体に対して、より一層のDX化を推進していきたいと考えています。」

「既存のソリューションはコストが高くて導入出来ないという課題や、消費電力、通信距離の制約で解決の難しかった課題などに、ELTRESの特長である【低消費電力】、【高速移動からの通信】、【長距離通信】、【低価格】を活かして、積極的にアプローチしていきたいですね。」

▼ELTRESの活用事例をもっとご覧になりたい方はこちらから


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