おはようございます。
エントリをさぼっている内に、国内政治では”重要な”変化がありました。
石破茂自民党新総裁、そして新首相の誕生。
立民党では、党内最右翼野田佳彦新代表の選出です。
お二人とも、財政の正常化を掲げています(石破新首相は、早くも軌道修正しましたが・・・)。
市場関係者にとって、この経済政策方針は悪夢に近い。
石破新首相に軌道修正を迫ったのは、新総裁誕生と共に反応した「円高・株価下落」の洗礼でした。
本邦財政の最大の課題―――国の借金(国債発行残高)に取り組む姿勢を訴えたものであり、それ自体はまっとうな政策方針ではありましょう(野田新代表は、言うまでもなく頑強な財政正常化論者です!)。
しかし、市場関係者はそう見てくれませんでした。
ここで、過日ご紹介した著作を再度引用して考えてみたいと思います。
財政の正常化が優先課題である由縁は、改めて書くまでもなく、本邦経済の財政破綻の危険性を回避、または軽減することにあります。
本書では一章を当てて突っ込んだ議論が展開されています(第三章
一体化する財政・金融政策 3財政の維持可能性について)。
著者は、財政破綻を次のように定義して検討します。
① 借り換えや貨幣発行によって形式上は返済できたとしても意味がない状況―――例えば、国債や現金といった(統合)政府の債務が無価値になる場合(P.146~P.147)。
具体的には、ハイパーインフレが発生する経済を例示しています。
② 国際機関では、現在の政策を維持不可能になる―――税・社会保障やその他の政策を抜本的変更せざるを得なくなる状況を財政破綻と呼ぶことがある。厳密な数値による定義とはいえないが、政府債務の対GDP比(債務残高/GDP)が拡大し続けるならば、いずれかの時点で利払い費が歳入額を超えることとなり、税制やその他の経済政策は大幅な変更を余儀なくされるだろう(P.148~P.149)。
こちらが巷間噂される本邦経済の財政破綻議論の震源地でしょう。
著者は上記2点について、それぞれ回避する条件を提示してくれます。
① 【財政維持の条件:横断性条件】
政府債務の増加率が金利より低い状態が維持されるならば財政破綻しない(P.148)。
② 【財政維持の条件:ドーマー条件】
国債金利よりも経済成長率が高い(r-g<0)ならば財政破綻しない(P.150)。
「ドーマー条件」については、過日のエントリで触れました。
そして、高橋洋一氏を筆頭に異次元緩和(≒アベノミクス)を継続を主張する論者の根拠だということを突き止めました(多くの論者は、この点について明示的に語ってくれませんが)
自然利子率が“0”付近にある本邦経済において、異次元緩和、特に“ゼロ”金利政策は、財政破綻の危機を回避する切り札です。
これを放棄するのは自殺行為と言えましょう!!!
著者は言います。
日本の財政が破綻する可能性が低いこと、そのうえで財政の黒字化を達成するための「緊縮」を急ぐことは財政破綻以上のリスクを日本経済にもたらす可能性があること(P.145)。
本書で展開される議論を踏まえると、当初2年で出発した異次元緩和が11年の長きに渡ってその効果が現れなかった事実の重さ、すなわち本邦経済を停滞させている原因の根深さをつくづく実感せざるを得ません。
時、ここまで至ると相当の混乱を想定のうえで財政の正常化を実行する覚悟がないと不可能です。
そして、その混乱を諸に受けるのは国民です。
異次元緩和(≒アベノミクス)という選択は、ある時点ではやむを得なかったとしても、延々と引きずって来たことは、政策の誤りです。
そのことの説明責任を果たした後、この政策を実行に移していただきたい。
石破新首相は、経済政策にあまり興味がないと側聞します。
故のブレなのでしょうか。
就任早々、前言撤回はいただけません。
野田新代表の経済観、財政観は、1$=75円・株価7,500円時代のものでしょうか。
氏が万万が一首相になれば、本邦経済は再び大停滞、暗黒時代を迎えそうです。
<つづく>
補足
本書の第四章 需要が供給を喚起する は、云わば、著者の打開策ですが、嵐は賛同できませんでした。
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