パソコン法人向け販路拡大…ノジマ傘下に入る「VAIO」、飛躍できるか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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パソコン法人向け販路拡大…ノジマ傘下に入る「VAIO」、飛躍できるか

パソコン法人向け販路拡大…ノジマ傘下に入る「VAIO」、飛躍できるか

ノジマ傘下に入り、相乗効果の創出を目指す(VAIOの法人向けPC「VAIOProPK-R」)

ITX・コネクシオと連携

VAIOがノジマ傘下に入る。VAIOの主力製品である、法人向けパソコン(PC)の販路拡大などが期待される。VAIOをめぐっては、規模拡大を念頭に富士通東芝のパソコン(PC)事業との統合交渉が過去にあったものの、白紙になった経緯がある。ソニーが投資ファンドに売却しファンド傘下で活動していたため、VAIOの行く末に注目が集まっていた。PC市場の成長が鈍化する中、ノジマグループの一員となり一段の飛躍ができるかが問われる。(阿部未沙子)

11日、ノジマはVAIOを買収すると発表した。取得価額は約112億円で、2025年1月6日の子会社化を予定する。MM総研(東京都港区)の中村成希取締役研究部長は「25年にPCの売り上げがピークになる見通しがある中で、買い手に対してプレミアム(上乗せ幅)を付けて売却するのであれば、今が適切だったのではないか」と分析する。

実際に足元の状況をみると、24年度の国内のPC出荷台数は23年度比で伸びる見通しだ。MM総研によると、24年度は前年度比12・1%増の1208万台を見込む。ウィンドウズ10のサポート終了に伴う更新需要に支えられ、25年度も堅調に推移するようだ。

VAIOはソニーから独立したPCメーカー。14年にソニーが投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に事業を譲渡し、VAIOが発足した。ソニー傘下時のPCの革新性を懐かしむ声もあるが、VAIOは営業体制を強化して成長。22年5月期の当期損益は3億円の赤字だったが、24年5月期は9億円の黒字だった。

売上高の8割以上を法人向けPCが占める。ノジマとの具体的な連携内容は明らかになっていないが、法人向け事業の強化を図るようだ。ノジマ傘下で、NTTドコモの携帯端末を販売する店舗を営業するITX(横浜市西区)やコネクシオ(東京都港区)の法人事業と連携する見通し。MM総研の中村氏は「例えば、VAIOのPCと(ノジマのグループ会社で扱う)携帯電話回線をセットで販売できるのではないか」と推測する。

両社は、ノジマ傘下に入ることでVAIOの事業運営方針に変更はないとするものの、家電量販店を運営するノジマの強みを生かした販売戦略も考えられる。仮に店舗に並ぶVAIO製品が充実するとなると「脅威になるだろう」と業界関係者から声が上がった。

PC事業をめぐっては富士通やNEC、東芝が成長事業への経営資源の投入などを理由に切り離してきた。NECや富士通は中国レノボ・グループと連携する戦略を採ったほか、東芝のPCブランド「ダイナブック」はシャープ傘下に入った。

一方、海外勢が優勢な状況は続く。米調査会社のIDCによると、23年のPC世界出荷台数に占めるメーカーの占有率は、首位が中国レノボ・グループで、米HP、米デル・テクノロジーズが続いた。VAIOには、ノジマの販売網や財務基盤を生かしながら、国内外問わず自社製品の魅力を訴求することが求められそうだ。

日刊工業新聞 2024年11月19日

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