炭素繊維比率2倍…CFRPリサイクル繊維で3Dプリンター材、産総研が開発
産業技術総合研究所の杉本慶喜主任研究員と今井祐介研究グループ長は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクル繊維で3Dプリンター材料を開発した。熱可塑性樹脂と混ぜ炭素繊維比率を20%まで高めた。従来は約1割だった。炭素繊維は製造時に大量のエネルギーを投入する。リサイクルできると投入エネルギーの再利用につながる。
長さが0・1ミリメートル以下のリサイクル炭素繊維を3Dプリンターのフィラメントに再生させた。熱可塑性樹脂と混ぜる際に再生繊維の量を増やすとダマになってしまう問題があったが、適切な混練条件を見つけた。2軸混練押出機に温度や圧力などのセンサーを取り付けてプロセス条件を最適化した。
炭素繊維比率が従来の2倍に増え、リサイクル効率が向上した。炭素繊維の配向度はフィラメントの長さ方向に10度以内。炭素繊維の向きがそろっているため、造形方向によって強度を高められる。実際に市販の3Dプリンターでラティス(格子)構造などを作って造形性を確かめた。
造形物の強度はこれから検証する。積層構造の特定の層をレーザーで微細加工し、切り欠き構造で応力を集中させて破断強度を測る評価システムを構築した。再生炭素繊維は樹脂との密着度がばらつく可能性があるが詳細に評価できる。
再生材の用途として3Dプリンター材料は応用製品の幅が広く、有望なリサイクル先といえる。再生技術と評価技術をセットで提案してリサイクルを広げていく。
日刊工業新聞 2024年10月03日