子どもの環境教育を支援する、日の丸リムジンの狙い|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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子どもの環境教育を支援する、日の丸リムジンの狙い

子どもの環境教育を支援する、日の丸リムジンの狙い

植林活動では協力して50本の苗木を植えた

子どもの環境教育を支援する企業が増えている。自社商品を教材とした出前授業や工場見学など、方法もさまざまだ。日の丸リムジン(東京都文京区)は全国組織「こどもエコクラブ」の活動を支える。共同で植林活動を実施し、電気自動車(EV)のハイヤーの利用回数に応じた寄付もしている。子どもの支援にとどまらず、自社の人材教育、さらに企業としての成長にもつなげる狙いもある。(編集委員・松木喬)

体験しながら学ぶ/「EVハイヤー寄付」活用

日の丸リムジンはハイヤーのほか、タクシー事業も展開する。こどもエコクラブは、自然体験などを通じて環境問題解決に自ら行動する人材育成を目的とした組織。全国で2308クラブ、9万7037人が活動中だ。

植林は6月末、山梨県で実施した。当日は同社とグループ会社の従業員39人、埼玉県三芳町の「竹の子エコクラブ」の13人が参加。下草を刈って50本の苗を植え、シカに食べられないように唐辛子入りのスプレーを散布した。また、森の管理者から針葉樹と広葉樹の違いや防災面での森林の役割を学習し、木製の写真フレームづくりも体験した。

こどもエコクラブとの植林は23年の実施に続いて2年目。富田和宏社長は「子どもと作業するとフレッシュな気持ちになる」と晴れやかな表情で語る。子どもの姿を見て、社員も、もっと頑張ろうと触発されるようだ。

日の丸リムジン社員とこどもエコクラブ植林活動。社員はフレッシュな気持ちになれる

こどもエコクラブとの活動のきっかけとなったEVハイヤー利用の寄付は21年、日本環境協会(東京都千代田区)と協定を結んで始まった。顧客がEVハイヤーを利用すると1回につき500円を同協会が事務局を務めるこどもエコクラブに寄付する。将来を担う子どもたちの環境教育を支援する狙いだ。

また、EV普及の後押しも期待している。同社のEV導入は10年の歴史があり、14年に米テスラ製EV5台を導入し、ハイヤーでの活用を始めた。

現在、EVは16台になったが、保有するハイヤー252台からすると少数。車種が限られるなどの理由があって進まない。ハイヤーでのEV利用を希望する企業が増えると、自動車メーカーが車種を増やす動機付けとなる。

寄付を始めた1年目(21年7月―22年6月)は、ハイヤーでのEV利用は927件あり、寄付額は46万円。3年目(23年7月―24年6月)は1744件、87万円となり2倍近く増えた。

社会貢献に評価/従業員の意識高まる

ハイヤー会社の選定で環境配慮を評価する企業や官公庁が増えると寄付額がさらに拡大しそうだ。特に大企業ほど、自社拠点以外での温室効果ガス排出量を算定する「スコープ3基準」での開示が求められている。役員を含めた従業員の出勤・出張に伴う排出もスコープ3に含まれる。調達先の排出削減は他力頼りだが、役員の送迎の排出量は自力で減らせるためEVハイヤーへの切り替えに期待がかかる。

日の丸リムジンが顧客にEVハイヤーを提案する上でも、植林活動が生きてくる。環境団体に寄付して森林整備に貢献する方法もあるが、「自分で体験したことは話しやすい」(富田社長)と、提案への説得力が増す。

また、植林体験は社員教育にもなる。今回、未経験の従業員に声をかけ14人の新入社員が参加した。総合職で入社した人も多く「未来に向けて何にでもチャンレジしてほしい。車を動かすだけでなく、社会課題を解決する事業をする人材になってほしい」(同)と語る。

交通の課題は環境問題だけに限らない。交通インフラの衰退が進む地方では、日常の移動が不自由となった“交通弱者”が問題化している。そうした課題に目を向けると、ハイヤー・タクシー事業の社会的な役割が高まる。自身の仕事に意欲を持て、新規事業も創造しやすくなる。

企業の社会貢献として、子どもの教育支援は意義がある。自社にもプラスになれば、継続的に貢献ができる活動となるはずだ。

日刊工業新聞 2024年09月06日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
タクシーに乗る機会はないですが、電車やバスも再生エネや環境配慮で選べるようになれば良いと思いました。

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