内勤職の業務量30%削減へ、日本生命が挑む生成AI活用の本気度
日本生命保険は2024年度内に生成人工知能(AI)を活用した業務効率化の実証実験を10案件実施する。コーポレートや海外、資産運用など全部門からそれぞれ1案件以上のアイデアを募り、実証実験を経て年度末にも本格導入を目指す。高齢化や人口減少で労働力の確保が難しくなる中、同社は介護やヘルスケアなど中核の保険領域以外にも業容を拡大している。生成AIを用いた業務補助ツールの導入も推進し、1人当たりの生産性を高めて少ない人数で幅広い業務をこなせるようにする。
全部門に生成AIの推進役を置き、既存のDX戦略企画部と連携して実証実験を実施する。生成AIを活用することで、例えば大量の保険事業に関わる法律を読み込ませて簡単に照会できるほか、帳票の間違いを迅速に指摘することなども可能という。生成AI専門のスタートアップやシステム開発事業者とも協業し、実証実験には1案件当たり1000万―3000万円程度の予算を充てる。
11月には各部門の生成AI推進役が米シリコンバレーを訪れ、現地のAI関連技術を探索する機会も設ける。最新の活用事例に触れ、視野を広げて実証実験に生かし、効果的にAIを業務に導入できるようにする。
さらに、内勤職300人を対象に、米マイクロソフト(MS)の生成AIを用いた業務補助ツール「コパイロット」で業務量を削減する実証実験を実施中だ。同ツールはMSの対話ツール「チームズ」を使って会議の音声を自動で文書化できるほか、パワーポイントの資料を読み込ませて要点をワードにまとめたりも可能だ。会議の議事録や提案書の作成が容易に行える。
6月から試験的に導入し、利用者に実施したアンケートでは1日平均18分の業務時間の削減効果を確認。94%が継続利用を希望したという。課題や効果を検証した上で、24年度中にも内勤職2万人のうち、希望する職員数千人が利用できる環境を整える。
日本生命は生成AIを業務に活用することで、29年度までに内勤職の既存の業務量を最大30%削減する計画。浮いた時間は顧客体験価値の向上や新規事業の創出に充て、収益の底上げにつなげる。
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