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他社がまねする商品作る…「シャープ再生」経営陣に2つの課題

再出発 「シャープらしさ」を求めて(中)
他社がまねする商品作る…「シャープ再生」経営陣に2つの課題

シャープの沖津社長(左から2人目)と種谷CTO(同3人目)。6月の定時株主総会後に新経営陣として挨拶した

「最も成し遂げたいのはシャープらしさをとり戻すこと。他社がまねする商品を作ることで顧客に評価されてきた」。シャープの沖津雅浩社長は就任後の会見で決意を述べた。「他社がまねするような商品をつくれ」とは創業者の早川徳次氏が語った言葉だ。原点に立ち戻ることで「家電などの事業を強化し、ブランド向上に努める」(沖津社長)という。

シャープの過去を振り返ると、競合にないユニークな製品を生み出せた背景には「緊急プロジェクト(緊プロ)」と「スパイラル戦略」という二つの取り組みがあった。

緊プロは部署横断で集めた人材によって社長直轄の特別なチームを作り、迅速に開発する体制のこと。1970年代からスタートし、液晶一体型カメラ「液晶ビューカム」、情報端末「ザウルス」などを生み出した。

さらに、コア技術で部品を開発して製品に適用し、製品が技術や部品の進化を促すという相乗効果を狙うスパイラル戦略も90年代に取り入れた。

これに対し現在のシャープでは、人工知能(AI)や電気自動車(EV)の開発プロジェクト「I―Pro」を緊プロの後継と位置付けるが、5月に始めたばかりで目新しい技術や製品はまだ生まれていない。半導体や電子部品などのデバイス事業は縮小・撤退する方針で、かつてのようなスパイラル戦略を取るのも難しい。

それでも、種谷元隆最高技術責任者(CTO)は「デバイスの開発自体は継続するべきだ」と、独自の部品や技術の開発の必要性を訴える。現在の競争環境に適応しながら競争力を生み出す仕組みを再構築することが、沖津社長率いる新経営陣の課題となる。

もう一つの課題となるのが、親会社の台湾・鴻海精密工業との関係だ。鴻海傘下でシャープの経営を指揮した戴正呉前会長や呉柏勲前社長は、連結対象から外れていた大型液晶パネルの堺工場を買い戻し、再び当期赤字に転落する元凶を作り、経営を迷走させた。液晶業界関係者からは鴻海はこの間にシャープの技術を吸い上げただけとの批判もある。

これに対し、鴻海の劉揚偉董事長はシャープ経営陣の刷新に際して「23年7月以降、毎月1週間ほど日本に滞在してさまざまなアドバイスを行ってきた」とコメントし、シャープの経営に積極的に関与する姿勢を打ち出した。シャープ側も「劉董事長とメールなどで直接やりとりできるルートができた」(沖津社長)、「顧客の声を生かし設計するのはシャープの方が上手だと劉董事長も言っている」(種谷CTO)とコミュニケーションの緊密さを強調する。

今後、シャープが成長に向けた新規投資などを実行していく上では、鴻海の理解や支援を得ることが不可欠になる。社内で競争力を生み出す仕組みを再構築し、それを後押ししてもらう関係を鴻海との間に作る。その両輪を回すことがシャープの再出発の成否を決めることになる。


【関連技術】 パナソニックも注目する元白熱電球メーカーの変身ぶり
日刊工業新聞 2024年09月11日

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再出発 「シャープらしさ」を求めて
再出発 「シャープらしさ」を求めて
液晶事業の構造改革や新規事業への継続的な投資など課題が山積するシャープ―。同社の技術展示会「シャープTech―Day(テックデー)’24」を17日に開幕する。数年後に参入するという電気自動車(EV)事業をはじめ、技術や製品をアピールしてビジネスチャンスにつなげる狙いだ。厳しい環境下で、経営の主体性を取り戻せるか、展望する。

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