ホンダ・日産・三菱自動車が協業、車の知能・電動化で巻き返せるか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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ホンダ・日産・三菱自動車が協業、車の知能・電動化で巻き返せるか

ホンダ・日産・三菱自動車が協業、車の知能・電動化で巻き返せるか

説明する内田日産社長(左)と三部ホンダ社長

ホンダ日産自動車は1日、次世代ソフトウエア定義車両(SDV)プラットフォーム領域で基礎的要素技術の共同研究契約を結んだと発表した。バッテリー領域、電動駆動装置「イーアクスル」領域などで協業を検討し、三菱自動車も枠組みに参画する。次世代自動車をめぐる競争はトヨタ自動車を中心とするグループと、ホンダ―日産を軸とする2陣営に分かれる。米テスラや中国・比亜迪汽車(BYD)などが先行する中、巻き返しを図る。(編集委員・村上毅、大原佑美子、間瀬はるか)

「知能化・電動化という技術革新により従来の構造がダイナミックに変化している。対応できない企業は淘汰(とうた)される」。1日の会見でホンダの三部敏宏社長はこう強調した。日産とホンダが協業を進める背景にあるのが市場の変化に対する危機感だ。

テスラやBYDなど新興の完成車メーカーが知能化・電動化で市場を席巻し、自動車産業を取り巻く環境が劇的に変化している。業界を主導してきた欧米・日本などの既存の完成車メーカーは変革を迫られている。「クルマの価値が変わっている。スピード感を持って対抗しないといけない」と日産の内田誠社長も指摘する。

日産とホンダが3月に協業の検討を開始して以降、協業領域を5分野に設定する中でとりわけ力を入れているのがSDVだ。「変化のスピードが加速する中、ハードウエア中心の進化では追いつけない。パーソナライズ化と短期開発を可能にするSDVへの変革が必要となる」(三部社長)。両社で共同研究契約を結び、研究をすでに開始した。今後1年をめどに基礎研究を終えることを目指し、その後は量産開発の可能性を含めて検討する。

電動化やソフト開発には膨大なコストがかかる。ホンダはSDVの開発など30年度までの10年間で電動化・ソフト領域に10兆円を投資する方針で、日産も26年までで電動化分野に2兆円の投資を計画する。

世界販売台数でホンダは約410万台、日産は約344万台、三菱自は約81万台の規模がある。知能化・電動化の検討の枠組みを3社で進めることで、投資効果の最大化などスケールメリットの発揮につながる。ナカニシ自動車産業リサーチ(東京都港区)の中西孝樹代表アナリストも「協業で投資負担の軽減が期待できる」と指摘する。

EV共通化、サプライヤーに伝播

また協業ではEVのキーコンポーネントでの共通化を進める。バッテリーは両社で仕様の共通化や相互供給のほか、ホンダと韓国LGエナジーソリューション(LGES)の合弁会社「L―H バッテリー カンパニー」(オハイオ州)から日産へ28年以降北米で供給することを検討する。

イーアクスルについても中長期で使用の共通化を目指し、第1弾として基幹となるモーター、インバーターを共用することで合意した。また中長期の視点で車両の相互補完も検討する。こうした共通化や共用の動きは従来の商品調達の変更も迫り、サプライヤーの統合などにつながる可能性も秘める。協業のインパクトは伝播していきそうだ。


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日刊工業新聞 2024年08月02日深層断面から一部抜粋

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