開発構想から約8年…いすゞが投入、普通免許で運転できるトラック「エルフミオ」の全容|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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開発構想から約8年…いすゞが投入、普通免許で運転できるトラック「エルフミオ」の全容

開発構想から約8年…いすゞが投入、普通免許で運転できるトラック「エルフミオ」の全容

運転手の裾野拡大を目指す(南いすゞ自動車社長(右)とCMに出演する本田翼さん)

“誰でも運転できるトラック”で運転手不足解消へ―。いすゞ自動車は24日、車両総重量(GVW)を3・5トン未満に抑え、普通自動車運転免許で運転可能な小型ディーゼルトラックを30日に発売すると発表した。運転手の裾野拡大が狙い。現状、同等のクラスは他社製のガソリン車か電気自動車(EV)しかない。経済合理性の高いディーゼルエンジン搭載車で顧客の需要を喚起する。「トラックのイメージを変えたい」(南真介社長)と広告塔にあえて商用車を想起させないイメージの俳優を起用するなど売り方の革新にも挑戦する。(大原佑美子)

24日、都内で新型車「エルフミオ」を披露した、いすゞの南真介社長は「トラックをより身近にし、新しい顧客に接し、新たなビジネスエリアを創造したい」と期待を込めた。開発構想から約8年。満を持しての投入となる。

エルフミオは燃費性能に優れた排気量1898ccのディーゼルエンジンを搭載。ピックアップトラックに搭載するエンジンで、最適な出力が出せるようにチューニングした。軽量なエンジンの採用で最大積載量1・35トンを確保した。トラック特有のタイヤ切れ角の大きさや前後輪の間隔を短くするなどして、最小回転半径を4・4メートルと小型乗用車並みとし、取り回しのしやすさを追求した。

経済合理性の高いディーゼルエンジン搭載車で顧客の需要を喚起する(右は軽量ドライバン)

約20車型をそろえる。代表車型の東京地区の消費税抜きの価格は365万5000円。1月に先行発売したエルフミオのEVモデルと合わせ、初年度5000台、2030年度に1万2000台の販売を目指す。

国内商用車メーカーとして初めて、オンラインで見積もりから商談申し込み、車両契約まで完結できる「エルフミオストア」を30日に開設する。物流業界に加えて建設業、自営業の需要を見込むほか、キャンピングカー仕様も提案し一般の利用も見据える。

いすゞが掲げる「だれでもトラック」のコンセプトを踏まえ、俳優の本田翼さんをコマーシャルに起用した。エルフミオストアで購入体験した本田さんは「服を買うようにトラックを選べる。エルフミオを実際に見て、私の中のトラックの概念がひっくり返った」と語った。

運転手不足の背景には、少子高齢化や時間外労働の上限規制適用などに加え、免許制度の変遷も関係する。07年6月1日以前の普通免許取得者はGVW8トン・最大積載量5トンの車まで運転可能だ。しかし中型免許制度が始まった同年6月2日から17年3月11日までの取得者はGVW5トン・最大積載量3トンまで。準中型免許制度が始まった17年3月12日以降の取得者はGVW3・5トン・最大積載量2トンまでとなった。

免許制度の移り変わり

最新の免許制度の下、普通免許で運転可能な最大積載量1トンクラスのトラック市場では、トヨタ自動車のガソリンエンジン搭載小型トラック「ダイナ」が普及。EVトラックは日野自動車が「デュトロZ EV」を投入済みだ。いすゞもエルフミオEVを発売しているが、パワーや燃費性能、価格で競争力のあるディーゼルエンジン搭載車の投入で勝負をかける。

東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは、ディーゼルエンジン搭載のエルフミオについて「燃費の良さやパワーで勝る点からして、運送業者などからの引き合いは強いのではないか」と指摘する一方、「顧客は車両の置き換えで導入する可能性が高く、国内トラック需要自体が大きく伸びるわけではない」と冷静にみる。

日刊工業新聞 2024年7月25日

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