BIMで社会課題解決、ゼネコン技術連合が描く展望
「参加する各社をつなぎ、商流を構築していく。ユニークな活動ができている」。鹿島建築管理本部BIMソリューション部の遠藤賢グループ長は、主査を務める建設RXコンソーシアム生産BIM分科会の活動にこう手応えを示す。建築の3次元(3D)モデリング技術「BIM」によるデータを設計・施工の効率化だけでなく、建物の維持管理や街づくり、メタバース(仮想空間)にも活用。社会課題の解決に役立てることを志向する。
この青写真に向け、分科会には主要なゼネコンだけでなく、専門工事会社やBIM関連のソフトウエア会社など協力会員数十社も名を連ねる。メンバーは100人超に達し、分科会としては同コンソーシアム最大の陣容を誇るという。遠藤グループ長は「設計・施工とは異なる領域の“感覚”が加わり、BIMデータが持つ多様な価値が見えてきた。ゼネコンだけでは想定できなかった切り口だ」と目を細める。
分科会の運営方針は大きく三つ。まず発注者と設計者、施工者、専門工事会社がBIMのデータ連携で互いにメリットを享受するための下地を整備。その上でBIMデータを効率的に連携する手法を検討し、標準化と建設業界全体への展開を進める。最後に、参加各社全体で新たな商流を生み出す。先行する日本建設業連合会のBIM分科会や、標準化を進める「ビルディングスマートジャパン」との協調も重視する。
専門工事会社サイドの動きも活発だ。2023年には、同分科会傘下に設備BIM小分科会を発足。空調や衛生、電気設備などの搬入・工事にBIMデータを生かす道筋づくりを急ぐ。小分科会主査で新菱冷熱工業(東京都新宿区)デジタル推進企画部の谷内秀敬専任課長は「スペースリザベーション(空間調整)をキーワードに現場を効率化していきたい」と意気込む。
生産BIM分科会・設備BIM小分科会とも、足元で掲げる計画はBIMの活用によるサプライチェーン(供給網)と建設ロジスティクス(建設資材や設備機器の搬入)の効率化、さらに工事中の二酸化炭素(CO2)排出量を把握する仕組みの確立だ。このため、建設・建設関連業界全体における共通コード体系を構築する動きにも弾みを付ける。
建設RXコンソーシアムでは新たに、従来の10分科会に加え「AIによる安全帯不使用検知システム分科会」と「ICT技術による配筋検査の効率化分科会」も始動した。担い手不足や働き方改革などを受け、建設現場では生産性・安全性の向上やコスト削減が急務となっている。ゼネコン各社は一体で“協調領域”の技術開発に挑み続ける。