車両改造・踏切、ロボット…JR西が地方私鉄などに技術とノウハウ売り込む
清掃ロボ導入支援、鉄道以外も顧客開拓
JR西日本は地方の中小私鉄など自社以外の鉄道会社向けビジネスを強化する。車両の更新や改造、踏切などの設備でJR西グループの技術・ノウハウを活用した提案を行い、中小私鉄の安価な中古品の置き換えニーズを取り込む。現在、車両の更新・譲渡関連で約10事業者と案件が進行しており、拡大を図る。さらに、新規商材の発案から納入までの担当部署を設置、清掃ロボットなどで鉄道会社以外にも顧客開拓する。(大阪・市川哲寛)
鉄道車両の転用、更新、改造では、ワンマン運転化や短編成化、観光列車化、新サービス対応の改良などに対応する。近郊型車両「117系」を長距離クルーズトレイン「ウエストエクスプレス銀河」に改造した実績などをベースに、企画段階からの提案や基本・詳細設計、コンサルティングを行う。
電動機や空調装置など車両機器・部品の保守、車両検修・工場設備の据え付けや整備でもJR西グループの資源活用で請け負う。また「社内の生きたデータでアクションできていない」(JR西日本)として車両部門が保守のために取得したデータを共有し、営業で活用する。
社会課題解決につながるソリューションも提案する。警報機も遮断機もなく事故リスクが高い第4種踏切の安全対策として、通行者を物理的に一時停止させる「踏切ゲート」や施工性を高めた「踏切ゲート・ライト」の地方導入を促進する。
駅や自治体の観光案内所など向けでは人工知能(AI)を活用した案内システムを提案する。インバウンド(訪日外国人)需要回復や2025年大阪・関西万博で案内ニーズが高まると見られる。多くの実証実験結果をベースに音声認識タイプやユーザーデバイスタイプを売り込む。
また鉄道会社以外に対しては、清掃ロボット導入支援をオフィスビルや病院、商業施設向けなどに展開する。JR西日本は洗浄ロボットと除塵ロボットをそれぞれ10台以上扱っており、ここで得たさまざまなメーカーとの関係や利用方法のノウハウなどを生かす。
施設構造や作業工程に適した機種の選定や現場での実機検証、マッピング支援で業務効率化や人手不足解消につなげる。設定変更や社員教育などのロボット導入後も支援する。
「ニーズは大きく変わり従来通りでは需要を取れない。自由にトライアルする」(同)方針で、「ソリューション営業企画部」を20人体制で設けた。車両系や施設系、電気系などの人材で構成、駅のコンコースや周辺施設など実証実験できる場を持つことを武器に売り込む。
人口減少やコロナ禍でのテレワークの浸透などにより、従来の鉄道事業だけで大きな成長は見込めない。地方の中小私鉄、さらには鉄道会社以外への事業拡大がこれまで以上に求められていく。