日産が2030年めど欧州で全新型車をEVに、規制に先んじて推進する意図
日産自動車は欧州で電気自動車(EV)戦略を加速する。今後、欧州で投入する新型車をすべてEVとし、2030年までに新車販売もすべてEVに転換していく方針だ。厳しい環境規制を導入する欧州市場だが、内燃機関車の販売禁止の規制を一部、見直す動きもある。これに対し、日産の内田誠社長はこのほど開いた英国のデザインセンターの記念式典で「EVの普及は、当社の長期ビジョンの中核であるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成するためのカギとなる」とし、欧州の規制に先んじてEV化を進める方針を表明した。(編集委員・錦織承平)
欧州では欧州連合(EU)が35年に内燃機関車を販売禁止する方針だが、3月には合成燃料(eフューエル)や水素を燃料とする場合は35年以降も販売できると方針を変更した。英国政府も20日にガソリン車とディーゼル車の新車販売の禁止時期を従来の30年から35年に先送りすると発表しており、欧州の脱炭素に向けた環境規制には見直しの動きが出てきている。
日産は30年までに19車種のEVを含む27車種の電動車を市場投入する計画を掲げている。欧州では英国のサンダーランド工場で、EV「リーフ」や独自のハイブリッド技術「eパワー」を搭載する「キャシュカイ」などを生産するほか、日本で生産したEV「アリア」なども販売し、26年までに新車販売の98%をハイブリッド車(HV)を含む電動車とする目標を掲げてきた。
欧州市場は各国の優遇政策もあって電動化が進んでおり、日産も電動車の販売が好調。22年度販売台数に占めるEVとHVの割合は前年度の12%から23%まで高まった。ただ、中長期では内燃機関車への規制が強まる可能性が高いため、HVの新型車は投入せず、EVのみに特化する戦略を取ることに決めた。
日産は25日、英国のデザインセンターの設立20年を記念して、都会的でスポーティーなコンパクトEVのコンセプトカー「コンセプト20―23」も発表した。今後、同デザインセンターでは設備やデザインツールなどを更新してスタッフも増員し、欧州のEVへの転換を推進していく。同じく英国の車両設計・開発拠点「日産テクニカルセンター・ヨーロッパ」でも住宅地や地方の道路に合わせた「evolvAD」と呼ぶ自動運転技術の実証を進めており、両拠点の投資額は4000万ユーロ(約62億円)を超えるとしている。
また、7月に出資関係を対等に見直す最終契約を交わした仏ルノーとの間でも、ルノーが計画するEVとソフトウエアの新会社に最大6億ユーロ(約940億円)を出資し、EVやソフトウエア定義車両(SDV)の戦略で協力することを決めている。
中長期の市場拡大を見据えて、各国の規制よりも先んじてEV化を進め、欧州市場における存在感を高めたい考えだ。
【関連記事】 日産も注目、熱源を操り省エネを実現する愛知の実力企業