三井化学が注力…「アルムナイ採用」とは?
三井化学は、都内で開いた環境・社会・企業統治(ESG)説明会で、2023―25年度にかけて年間150―160人規模のキャリア採用(総合職)を実施する計画を示した。キャリア採用の強化に向け内定辞退者を含めて退職した人を再雇用する「アルムナイ(卒業生)採用」に力を入れる。事業ポートフォリオの変革を進めるために多様な人材の確保の重要性が増しており、取り組みを積極化する考えだ。
安藤嘉規取締役専務執行役員は12日のESG説明会で、「アルムナイ採用のネットワークを構築し、即戦力となる(友人や知人らを紹介してもらう)『リファラル採用』に生かす。先入観を持たず、ネットワークを広げていきたい」と語った。また女性社員の採用も応募者のキャリアなどに寄り添った活動に力を入れる。
三井化学は多様な知見や価値観を持つ人材の採用や登用を含め付加価値の高い事業ポートフォリオを構築する。特に新規研究開発領域、デジタル変革(DX)に関わる人材の採用などを強化していく。
23―25年度にかけて新卒採用を含め年250人規模(総合職)の採用を計画。キャリア採用比率は6割以上を継続する。
22年度は約160人のキャリア採用を実施した。キャリア採用による15年度以降の入社者の離職率は1・9%となっている。
安藤専務は「高い定着率で、さまざまなプロジェクトのリーダーなど重要なポジションで活躍してもらっている」と手応えを語った。
銀行・保険会社でも
新卒に偏りがちな銀行や保険会社でもアルムナイ採用が進んでいる。同採用が増えているのは、外部で経験やスキルを高めた貴重な人的資本と捉えているためだ。
みずほフィナンシャルグループはネットワーク組織と専用交流サイトを開設し、採用につなげている。三井住友銀行は元社員と情報共有するためのプラットフォームを構築。三菱UFJ信託銀行はイベントを開催するなど元社員との交流を活発化させている。
三井住友海上火災保険はアルムナイネットワークを立ち上げ、実際に同ネットワークからの採用事例も出始めている。SOMPOホールディングス(HD)はHDの元社員だけでなく、傘下の損害保険ジャパンなどの元社員もアルムナイコミュニティーに取り込み交流の輪を広げている。社外で経験を積んだ元社員を即戦力として期待するほか、共同での新規事業開発や業務委託契約での事業連携を検討している。
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