料理は社員が持ち回り、社内食堂で夕食会を開く物流スタートアップの狙い|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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料理は社員が持ち回り、社内食堂で夕食会を開く物流スタートアップの狙い

料理は社員が持ち回り、社内食堂で夕食会を開く物流スタートアップの狙い

1月に移転したオフィスの食堂スペースで夕食を囲む

アセンド(東京都新宿区、日下瑞貴社長)は、社員全員が交流を深める機会を作り、社内全体の士気向上に取り組んでいる。同社は2020年設立の物流業界に特化した運送管理支援ソフトウエアを開発・運営するスタートアップ。対面で交流する機会を積極的に取り入れ、社員全員での夕食会や合宿を実施している。一方でデジタル化により効率性も補う。本音で話せる関係性を築き、心理的安全性を向上するのが目的だ。(岡紗由美)

「きょうのメニューはお好み焼きです」。ソースのにおいにつられてテーブルに人が集まる。平日19時になると本社内にある食堂スペースで社員約15人が、「“映(ば)える”料理だね。テンション上がるな」と料理を見て歓声を上げる。食事中はにぎやかで、冗談も飛び交う。上下関係はなく、社員のことはメンバーと呼ぶ。

同社には毎晩メンバーが持ち回りで料理を担当し、希望するメンバーで食卓を囲む「アセンド食堂」という企業文化がある。普段コミュニケーションを取りにくい他部署の人と食事の準備をし同じ釜の飯を食うことで、相互理解を狙う。「夕食の時間が楽しみ。出社したいと思う理由の一つになる」と、メンバーからも好評だ。家族や取引先などを招くこともある。

持ち回りで夕食を作る。2人で買い出しから調理まで担当する

人材不足などの課題の改善が急務の物流業界を支援する同社は、課題解決のための迅速な対応が求められている。スタートアップならではの機動力を追求するため、それぞれが十分に意思疎通を取ることができる機会を設けた。希望するメンバーには個人の事情も含めた悩み相談に乗り、ケアできる環境作りを徹底している。

日下社長は「仕事を通じて人生を豊かにしてほしい。本音で語り合える関係性になれば、共に過ごす時間を楽しめる。結果として、昭和の良いところを反映したようになった」と話す。

一方でデジタル化により、効率性も重視する。全員参加の定例会議はオンラインで実施。共有ツールを使い、業務に関する共有事項を全員が確認できるようにした。各制度に対して実施する狙いを文章化して、制度の形骸化を防ぐ目的もある。

日下社長は効果を「全員が同じ目線で働く意識形成につながっている。会社とメンバーの考えが一致し、現在までの離職者は0人だ」と話す。

このほか3カ月に1回、会社と個人の現在の立ち位置を確認するとともに、社内全体の士気を上げる合宿「アセンド祭り」を開催している。宿泊施設を借りて1泊2日で3カ月間を振り返るワークショップや運動会などを実施。スポーツなどを通じ、全員が一つのことで盛り上がり、結束力を高める。

1月に移転した本社オフィスは「アセンド食堂」の文化を続けるため、業務用のフルキッチンを整備し、食堂スペースを拡大した。事業拡大や人員増加を想定する中、定期的に実施方法や意義を見直すことで企業文化を継続する方針だ。

日刊工業新聞 2023年04月19日

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