“ものづくりの町”東京都大田区で始まった、デジタル基盤で共同受発注|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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“ものづくりの町”東京都大田区で始まった、デジタル基盤で共同受発注

“ものづくりの町”東京都大田区で始まった、デジタル基盤で共同受発注

受発注システム「プラッとものづくり」を展示会でPR

日本のモノづくりは、それぞれの専門分野で高い技術力を持つ中小企業が支えている。製造業の集積地では、得意分野が異なる仲間同士で協力し合い発注元の難しい要望に応える受注形態が浸透している。東京都大田区ではデジタル技術を活用した受発注体制を構築し、部品や加工の受注拡大はもとより、より高付加価値の複合部品(モジュール)や最終製品を受注する取り組みが始まっている。(編集委員・村国哲也)

取り組みの核は共同事業を目的に大田区の中小製造業経営者らで組織する合同会社のI―OTA(アイ・オータ、東京都大田区)だ。大田区、大田区産業振興協会、生産管理システムのテクノア(岐阜市)と連携し、デジタル受発注システム「プラッとものづくり」の運用を2022年8月に始めた。

同システムは、各参加企業の固有の技術や資格、対応する材質、設備をウェブサイト上に登録する。発注先を探す大手企業らがこれを閲覧。リーダー企業に抱えた課題をワンストップで相談もできる。納品後は品質、納期、コストを評価してもらい、結果や過去実績の平均値も表示する。「現場の声を形にし地に足がついたシステム」(奥田貴光テクノアプラットフォーム事業部長)だ。

参加する企業は協力工場を含めて約100社。I―OTAでは展示会などでのPRを続けている。新規開発案件は打ち合わせに時間がかかり受注はまだ1社。しかし約30社の大手企業から引き合いがあった。地銀や保険会社など10社からマッチングへの支援の申し出もある。

大田区には中小製造業間で得意分野に合わせ仕事を融通し合う「仲間まわし」という文化がある。大田区産業振興協会は担当者を置き発注の相談や仲介に対応してきた。I―OTAでは以前から新型の農耕機や保守検査ロボットなどの最終製品を開発した実績もある。

プラッとものづくりは、これら人のつながりで維持してきた仲間まわしを効率化し高度化する。「見積もりも容易。アイデアを形にできる」とI―OTAの国広愛彦代表社員(フルハートジャパン社長)は手応えを感じている。

今後は“デジタル仲間まわし”の輪を他地域にも広げる考えだ。23年度は他地域の展示会への出展なども計画する。区内の工場が減る中、「リソースを補完し合う」と国広代表社員は狙いを説く。大田区や大田区産業振興協会の担当者も「従来の広域連携の実績を生かせる」「切磋琢磨(せっさたくま)したい」と意欲的。目指すのはデジタル変革(DX)による日本の地域中小製造業の底上げだ。

日刊工業新聞2023年3月27日

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